第2話 新しい部屋とカフェ
部屋の奥に移動をすると、茶色い木製のドアを開ける。そのドアの先には二階に上がる階段があった。その階段を上ると更に茶色い扉があり、その扉を開けると広々としたリビングが現れた。
「凄い……下のカフェの広さがそのままリビングになった感じだ!」
伊織はリビングに入り周囲を見渡した。すると奥の壁にテレビはあり、その前には四人掛けのソファーが置かれている。手前には食卓と水回りの台所が設置されていた。
「もうすぐ孫娘が帰ってくるから、今はお前の部屋に案内をするからそこで整理をしているといい」
「ありがとうございます。 改めて、これからよろしくお願いします」
「ああ。 期限は決めてないから、いつまでもいるといいさ」
「あ、ありがとうございます!」
伊織はいつまでもいていいと言われて、涙を流しそうになった。しかし伊織は涙を我慢して、三階に用意をされていた自室に移動をした。
「さ、この部屋がお前の部屋だ。 好きに使ってくれて構わないからな」
「ありがとうございます!」
伊織は頭を下げて言うと、哲雄はそのまま下に降りていく。伊織は哲雄の姿が見えなくなると、自室と言われた白い扉を開けて部屋の中に入る。
自室に入ると伊織の目にはベットと机の他にテレビとタンスが一つずつ置かれている十畳程の大きさがある一人部屋であった。
「思ったより広い! これはいい部屋だ!」
伊織は部屋を見渡して、どのような部屋にしようと考え始めようとした。しかし、今はバックに入れている私物の整理をしなければと思い出した。伊織は自身の胸まである大きさの木目模様が印象的なタンスに、バックに入れてあるシャツや下着を詰めていく。
「ここでの生活が始まったか。 楽しいことばかりだといいな……」
伊織は高校生活のことや、アルバイトなどもしてみたいと思いながら荷物の整理をしていく。タンスに衣類を詰め終わると、ベットの奥にある窓を開けた。
「窓を開けると、近場の住宅街の景色がよく見えるな。 それにカフェの入り口側だから、下を見るとカフェに入る人が見える」
伊織はカフェにちらほら人が入店していることや、中調布の住宅街が見えることに喜んでいた。
「都会って凄いな、前までいたところとは違いすぎる」
伊織は神奈川の奥地に今まで住んでいたので、都会との風景の違いに心躍っていた。近場に何でも揃っていることや、駅まですぐ到着することが嬉しかった。
「この場所で心機一転楽しく過ごしていくぞ!」
伊織がそう決心すると、鞄の中に入れていたあの時にもらった白い箱が淡い光を放っていた。そのことを伊織は見ていないので光ったことには気が付いていなかった。
伊織はこれから運命が動き出すことにはまだ気が付いておらず、自身の運命を切り開くために多くの人と協力をしていく。人を助け、人に助けられる大切さを感じていくこととなる。
外を眺めるのを止めた伊織は、リビングに降りた。そこには既に哲雄の姿はなく、カフェに入った人たちの接客をしていると考えた。伊織は一階に降りると、そこには店の半分に客が入っており、哲雄は注文を聞いて急いで料理を作っていた。
「結構大忙しみたいだ……俺も手伝うか!」
伊織は手伝うと決め、料理を作っている哲雄に話しかける。
「おじさん! 俺も手伝うよ! 何すればいい?」
「な、何でお前がここに!? 手伝わなくていいから、上に行ってろ!」
「これからお世話になるんですから、これくらいさせてください!」
「お前……」
伊織のその言葉を聞いた哲雄は、負けたよと伊織に言う。そして、作り終えたオムライスを三番テーブルの人に渡してくれと言ってきた。
「分かりました!」
伊織はそう言い、オムライスを持って三番テーブルのテーブルに置いた。伊織は料理を置く際に、お待ちしましたと言い、置いた。
「ありがとう。 おじさんをあまり困らせるなよ」
そう言って料理置いたテーブルに座っていた、スーツを着ているサラリーマンの男が伊織に言う。
「ここのマスターの料理は美味しいからな。 君も後で食べてみるといいよ」
「あ、はい。 ありがとうございます」
「こっちも持って行ってくれー!」
「今行きまーす!」
伊織はそう言い、炒飯を指定されたテーブルに置いた。それから二時間手伝っていると、外が夕暮れになってきていた。
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