第4話 不思議な空間の再来
食事を終えた伊織は、部屋に戻ると言って愛奈と哲雄に頭を下げて三階に上がっていく。伊織は部屋に戻るとベットに寝転がって、天井を見上げた。
「ここから新たな生活が始まるんだ……愛奈に哲雄さんがいて……四月から入学する高校で友達を作って楽しい毎日を……」
伊織は涙を流しながらそのまま寝てしまった。哲雄と愛奈が伊織の部屋を覗いて微笑していた。
「伊織君を引き取って大丈夫なの? お金とか」
「大丈夫だ。 お前を引き取った時と同じだよ。 ここでゆっくり暮らすといいさ」
「ふーん……そうだね。 伊織君もここでゆっくり暮らせば幸せになれるよ」
愛奈がそう呟くと、哲雄が愛奈の頭を撫でた。
「あの時のことはもう忘れろ。 俺が終わらせたから、もうお前に危害が加えられることはないさ」
哲雄の言葉を聞いた愛奈は、ありがとうと哲雄に涙目で言う。
「ほら、お前も部屋に戻ってゆっくりするんだ。 俺は明日の仕込みとかするから下にいるぞ」
哲雄が愛奈に手を軽く振って下に降りると、愛奈は伊織の部屋を見てこれからよろしくねお兄ちゃんと小さな声で呟いていた。翌日。伊織は目が覚めると、風呂に入っていないことを思い出した。側に置いていたスマートフォンを確認すると、時刻は八時を過ぎていた。
現在は日曜日であり、明日が高校の入学式である。高校の制服などは既に哲雄が準備をしてくれているので、特にすることはなかったのである。伊織はベットから出ると、二階のリビングに移動をした。
「おはようございまーす……」
「おはよう!」
「結構寝てたな。 もう朝ごはんは出来ているぞ」
伊織が愛奈と哲雄に話しかけられると、朝ごはん楽しみですと笑顔で返した。伊織は食卓に座ると、哲雄が目の前に目玉焼きと焼きベーコンに白米を置いた。
「おお! 美味しそうです! いただきます!」
「うむ! たんとお食べ!」
愛奈が哲雄の代わりに言うと、哲雄が愛奈の頭部を軽くチョップした。
「あいた!? 急に叩かないでよ!」
「お前が作ったわけじゃないだろうに。 ちゃんとご飯を炊けるようになってから言うんだな」
「ぶーぶー! 私だっていつかできるもん!」
愛奈が朝食を頬張りながら哲雄に文句を言っていると、伊織は朝食を食べ終えていた。伊織は美味しかったと二人に感想を言うと、周囲を散策してきますと二人に言った。
「この辺りは閑静な住宅街だから、少し駅側に行くとお店が沢山あるよ!」
「俺は駅前にある古着屋が好きだな」
愛奈と哲雄がおすすめの店を教えてくれると、伊織はありがとうと言った。
「色々見てきます!」
伊織はそう言うと、部屋に戻って準備をすることにした。
「さて、風呂に入って散策を……」
伊織が部屋に入って風呂に入ろうと準備をした瞬間、心臓が高鳴り頭痛がし始めた。
「な、なんだ!? ぐぅ……」
伊織はそのままベットに倒れこんでしまう。伊織は意識を失ってしまい、夢を見ていた。その夢は中学生の時に見た不思議な夢であった。
「ここは……あの不思議な空間だ……中学生ぶりに見たな。 ということはあの二人組もいるのかな?」
伊織が黒い空間の地面か空中か分からない場所に足を付けて歩いて行くと、昔見たような二人組が黒い空間には目立つ白いある椅子と丸い机が見えてきた。
「ここにまた来たんですね。 運命が動く時が来ましたか?」
伊織に当時あった高校生に見える女性が話しかける。今ははっきりと自身と同い年くらいの年齢だと確信をした。その女性は白銀の髪色をし、すぐ横にある椅子に、小学生くらいの男の子が座っていた。
「あの時はハッキリ見えなかったけど、今なら小学生くらいってわかる。 俺はまたこの不思議な空間に来たんだな」
「そうだよ。 君はまた来たんだ」
伊織が言葉を発し終えると、男の子がまた来たんだと笑顔で言う。そして、そのまま机の上に置いてあったコーヒーを飲み始めた。
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