第6話

ピヨピヨ‥

小鳥の鳴き声が朝を知らせてくれる。

マコトさんの家に来て1日目。

(人様の家に居候してるんだから頑張って働かなくちゃ!)

急いで支度を済まし階段を降りると、なんと朝ご飯が出来ていた。

「マコトさん、おはようございます。」

「あぁ、おはよう、ちょっとみんなを起こしてくれる?」

「はい!」

花奈が階段を登ろうとすると、慌ててマコトさんが言った。

「そこにあるレバーを引くとみんな起きるから」

ニヤっと笑うマコトさんを確認し、恐る恐る花奈がレバーを引くと、


ガチャン!リーン!!リーン!!リーン!!


この塔が爆発したんじゃないかって思うほどの大音量が響き渡った。

(これは、私でも起きるわ‥)

ある意味マコトさんの恐ろしさを感じた。

「おはよう。」

「おはよう!」

「「「「おはようございます。」」」」

「よっ!」

起きてきたみんなをマコトさんは見渡し、にかっとした笑顔をむけ花奈にウインクをした。

あの黒髪の女もすました顔をして起きてきた。

「それじゃ、今日も感謝をして、いただきまーす!」

『いただきます。』

朝ご飯もとっても美味しかった。とくに卵のトロトロ具合がたまらなくて、幸せな気持ちになった。

(まぁ、何の卵なのか怖くて聞けなかったけど!)

「一応、今日の予定を聞いておくか、花奈とショウは私の手伝いね!」

「「はいっ!」」

「僕たちは今日は王都で護衛の仕事がある。だよな、ミツキ?」

「はい、レオン様。」

あの黒髪の女が答えた。

(レオン様、様付けで呼ばれているの?)

護衛達は頷いた。やる気満々と言う感じだ。

「了解!じゃあ、働くぞー!!」



朝ご飯を食べ終わって片付けをしたら、マコトさんに買い物に行くと言われた。

「よし、じゃあ、行こうか!」

花奈とショウがドアに向かおうとすると。

「あぁ、そっちより馬がない私達はこっちのほうが早いよ。」

マコトさんは上を指した。


マコトさんに連れられて上にいくと、塔の天辺にきていた。そこにはなんと、トロッコのような物があった。

ショウは不思議そうに見ている。花奈はしびれを切らし聞いてみた

「これは何ですか?」

マコトさんは得意そうな顔をして

「これは、私が計算し尽くして作ったトロッコだ。位置エネルギーを利用して動くから、王都まで何もしなくていい。」

ショウは目をギラギラに輝やかしている。

「すごーい!はやく乗ろう、はやく乗ろうよー!」

私達はいそいそと乗った。いざ乗ると、かなり怖い。

「じゃあいくよ」

マコトさんが、ブレーキの部分をガシャンと外した。トロッコは急降下し始め、あっという間に周りの物が見えないくらいスピードが出た。

「うわーーー!楽しいねー!花奈!」

少し怖いがそれよりも、なんとも言えない快感が花奈の心を奪った。


一瞬で王都に着いた。

王都というだけあっていろいろな物が売っている。

花奈はマコトさんがテキパキと買っていくものを運ぶので精一杯だった。

「肉、魚、野菜、果物‥うん!全部買った。よし、少し休憩するか。」

近くのお茶屋さんのテラスで一息ついた。

このお茶は少し甘くて力がみなぎってくるのを感じた。花奈は庭に目をやると不思議な枝を見つけた。

「あれ、何だろう。」

近くに行ってみて見ると、丸くなった葉の中がキラキラと光っていた。

「うわーきれい。」

その枝の美しさに心を奪われでいると

「気に入ったかい?」

急にヨボヨボのおばあちゃんが現れた。花奈は目をパチクリとしたが

「はい、とってもきれいですね。」

と答えた。

「お前さんは見る目があるのぅ。その葉は今お前さんが飲んでる茶だよ。よし、一房やろう、ほれ。」

そういっておばあちゃんは枝をポキッと折って花奈の前に差し出した。

「ありがとう。」

「その葉で好きな人に茶でもいれてあげなさい。」

花奈は顔が赤くなるのを感じた。

「はっはっはっ、初心でかわいいのぅ、じゃあな。」


マコトさんとショウは何やら話しで盛り上がっていた。

「マコトさん、これもらっちゃった。」

「うわっ、こんな高級な茶葉、誰からもらったんだい?」

「えーと、そこにいっぱいなってるよ、そこでおばあちゃんが‥」

花奈が後ろを振り向くとおばあちゃんの姿はおろか庭もただのお花畑になっていた。花奈がびっくりしているとマコトは落ち着いた声で言った。

「花奈はこの店の先祖にでも会ったのかな。ここのお茶屋が1番美味しくて、いいんだよな。」

「はい‥」

「それ、もらったんなら、帰ってみんなで美味しくいただこうか。」

花奈はうんと頷いた。



「えーーー!帰りは歩いて帰るの!!」

ショウは駄々をこね始めた。

「トロッコで帰りたーいー!!!」

「だから、エネルギーがないから使えないんだってば!」

「もう、楽しみにしてたのに!!」

そう言うとショウはスタスタと歩き始めた。

「私だって、昔だったら‥‥ひとっ飛びだったのに‥。」

マコトさんはそう呟いて悲しそうな顔をしていた。

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