第5話

しばらく走ると、小さな塔が見えた。

「あれかな。」

足を止めずに急いで駆ける。

「っ花奈!速いよ。俺そんなに速く走れない。」

ショウはもうヘトヘトになっていた。

「あ、ごめん。」

(はやく、助けを求めないと。)


小さな塔は近くで見ると家だった。

コンコン

花奈がドアを叩いてみる。

ガチャンッ

「おー、これは、これは珍しいお客様だこと。」

赤茶色のクルクルした長い髪、長い手足、どことなく魔女を連想させるような独特な服装をした女性だった。歳は30代半ばといったところだろうか。

「あの!れ、蓮じゃなくて‥レオンが変な人たちに襲われて、えっと、その、早く来て下さい。」

「お嬢ちゃん落ちついて、レオンって騎士団のレオンのことかな?」

花奈はほっとした顔をしながら

「はい!あの‥助けて下さい!!変な人に襲われて。」

ショウも必死に頭を下げている。

「お願いします。」

魔女のような女、いやマコトさんはびっくりしたような顔をしたあと、高らかに笑いながら答えた

「レオンなら大丈夫だよ。なんて言ったって騎士団ナンバー1の男だからねっ!」

そう言ってウインクをした。

「「え!?」」


太陽が西の空に沈みかけた頃、蓮たちはマコトさんの家にやってきた。

「いやーただいま〜」

「蓮、じゃない、レオン!お帰り!!大丈夫?」

「うん、余裕余裕!!」

「レオン聞いたよ騎士団ナンバー1なんだって?」

蓮は気まずそうに頭をポリポリと搔いた。

「うん‥。まぁ弟子とかいないし自分に集中出来るから‥。」

「でも、すごいよ!」

「ありがとう。あ、マコトさんお願いがあるんですが。」

マコトは振り返った

「なんだい?」

蓮は頭を下げた。

「花奈とショウをしばらくこの家に置かせて下さい。あと、花奈達は違う国から来たんです。帰る手がかりを一緒に探して下さい。お願いします。」

花奈も深々と頭を下げ

「お願いします。協力してください!」

と言った。

マコトさんは小さなため息をついて

「いいよ、私は協力する。なんて言ったって断る理由がないからね!久しぶりに宿としようじゃないか!」

「「ありがとうございます!」」

(なんとかなりそう‥。)

花奈はほっと息をついた。




マコトさんが大きな声で

「みんな晩ご飯できたよー!」

と言った。

(マコトさんは昔、宿屋をやっていたらしいからご飯美味しいんだろうな!楽しみ!!)

テーブルには沢山の料理が並んでいるけど‥‥

見たことのない動物の毛がついた煮物、魚のひれの唐揚げ、毒々しい果物。

「えーとこれ食べ物だよね?」

ショウが目をパチクリとしながら言った。

「僕も最初はビックリしたんだけど‥まぁ慣れたら美味しいよ。」

蓮はさっさと席に着きショウと花奈にも席を促した。

マコトさんはみんなが席に着いたのを確認して

「じゃあ、今日の食事に感謝して!いただきまーす!」

『いただきます。』

花奈は恐る恐る近くにあったスープを手に取り、口に運んだ。

野菜の香りが口いっぱいに広がり見た目とは裏腹に様々な味がして美味しかった

「うんうん、美味しい!!」

マコトさんはとびっきりの笑顔で

「だろう?ほらショウ、あんた一口も食べてないじゃないか、ほら食べて!」

そう言うと、ショウの口に変な動物の唐揚げを突っ込んだ

「!!!‥‥‥ッ?あ、おいしい。」

マコトさんの料理は見た目はまぁ怖いが、いろいろなハーブの香りや肉汁や旨味が合わさって美味しくて花奈とショウはあっという間に食べきってしまった。

もちろん、あの黒髪のきれいな女も顔色ひとつ変えずに上品に食べ終えていた。

するとマコトさんはニコッとしながら

「私の宿に泊りたいものは、働いてもらうのが条件だから!」

と言った。

花奈とショウは顔を見合わせた。




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