第4話

タタタタタタタタガタッタタタタ

花奈とショウはとんでもなく広い馬車に乗っていた。

(えーーーっと。蓮ってお金持ちになったのかな‥?)

ショウは珍しいものを見るように動き回っている。

「見て、花奈、王冠だよ!えっへんっ!」

また偉そうにし始めた‥。

本当にこの馬車にはいろいろな物がある。

花奈は窓のそうを見てみると蓮が馬に乗っていた。‥‥ん?その側にはとても美しい黒髪の女性が蓮と楽しそうに話している。

(もしかして、蓮あの女の人と恋仲なんじゃ‥‥あの人もお金持ちそう‥うわっ笑ってる、楽しそう‥)

花奈はぼんやりと空を眺めた。

(そっか、そういうことか。)

しばらくボーッとしていると馬車が止まり蓮が馬車に入ってきた。

「ここから先は歩きじゃないといけないんだ、いくよ!」

「うん。」

 5人の護衛たちの後ろを花奈と蓮とショウは歩き、森の中をズンズンと進んでいた。

(黒髪の女の人も一緒だ‥‥。)

「あらためて、花奈元気だった?」

蓮がいつものきらきらした笑顔でそう言った。

「うん。元気だったよ。蓮は?何をしていたの。」

「僕はこの国で騎士として働いているんだ。」

「えぇっ!あの弱々しい蓮が!!」

「笑えるよなー。こっちで一生懸命、身体を鍛えて強くなったんだ。」

「そうなんだ。」

「そう!これでも今では騎士団トップ3に入るんだよ。」

そう誇らしげに言う蓮はひとまわり大きく見えた。

「え!すごい!!」

「へへっ、花奈は何をしてたの?」

花奈は目を斜め上の方にしながら答えた。

「私は普通に学生。あっ、でも中学で陸上部に入って、そこから走るのすごく頑張ったんだ‥親に褒めてもらいたくて。」

「花奈の親ドライだったもんなー。」

「そうなの、私が頑張っても、頑張っても親は仕事優先だし‥なんで陸上頑張っているのか分からなくなっちゃって。」

「うん。」

「最後の大会、体が固まってしまって最悪の結果で終わっちゃった。」

「そうだったんだね。」

蓮は悲しそうに答えた。

「親に結果を報告したら、ほら仕事人間は結果にこだわるじゃない?最後の大会にこんなミスを犯すなんて今までのお金と時間が無駄だったって言われて‥。」

「それは酷いな‥。」

蓮は一生懸命聞いてくれていた。

「私だって、こんな結果でもちろん悔しい、でもね得た物もたくさんあったんだよ、いい仲間とか。」

花奈は涙が後からあとから流れ落ちるのを感じた。

「そうだよね。」

「無駄じゃなかった。だから高校は勉強でいける所を頑張ろうと思ったの。そしたら、お母さん私を悲劇のヒロインとしてSNSで晒し者にした。同情してくれた進学校が助けてくれるはずだって、もう私、恥ずかしくて、逃げるようにおばあちゃんの家に行ったの。」

「そっか。花奈も大変だったんだな。」

蓮の手が花奈の頭を優しく撫でた。

「うん。」

蓮はひとつひとつ確認するように話し始めた。

「お母さんがした事はいけない事だと思うし、酷いと思う。でも花奈のお母さんは花奈に幸せになって欲しいだよ、きっと。」

「え?」

「お母さんときちんと話した?これからも続いていく人生、少しでも幸せに過ごして欲しいっていう強すぎる思いが花奈のお母さんをそうさせてしまったんだよ。」

「‥‥そうかな。」

「うん、きっとそうだよ。」

「う‥ん、そうか、そう信じてみるよ。蓮ありがとう。蓮に話しを聞いてもらって少し楽になった。」

蓮はとびきりな笑顔で

「それならよかった」

と言った。




ガサッ

「ん?」

護衛が一斉に茂みの方を向いた。

「誰だ。」

草の茂みから怪しい頭巾を巻いた2人組が現れた。

「名乗るつもりはない。その女をこっちによこせ。」

(え!私?)

花奈の前に蓮がスッと現れた。

「そういうわけにはいかないんでね。」

いつの間にか蓮は剣を振りかざしていた。

ショウが花奈の手をギュッと強く握るのを感じた。

蓮が花奈の耳もとで呟いた。

「僕はこの人達の相手をする。花奈はショウを連れてこのまま真っ直ぐ進んで、小さな家があるそこにマコトさんがいるから。」

頭巾を被った男が蓮に切り掛かってくる、蓮はそれを片手で受け止め、攻撃に入った。

「はやく!いけ!ここは危険だ。」

花奈はおもむろに走り始めた。

心臓がドックンドックンとうるさい。

(どうしよう、蓮たちに何かあったら‥‥。)


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