第3話
心地よい草原の香りをふんだんに含んだ風が花奈の髪を優しく触れた。
(‥‥ん?草の匂い‥‥‥?)
ガバッ
花奈はそれはもう広い広い草むらの上に座っていた。
(はっ!ショウは‥‥‥)
チラッと横を見ると小さな体は寝息をたてながら眠っていた。
池にいたはずの花奈たちはいつの間にか広大な草原にやってきていた。すると
ドカドカドカッ
大量の何かが近づいてくる音がしていた。
ショウがおもむろに体を起こし
「花奈、あれ‥‥」
と言いながら指を向けた方向に顔をやると
馬、たくさんの馬がこちらに近づいてきていた。馬の上には仮面を被った男達が乗っていた。
すると一頭の真っ茶色の馬がものすごいスピードでこっちに向かってきた。
若い男の人が乗っている。
(怪しい‥‥私がショウを守らないと。)
ショウと手を取り合いながら、鋭い目つきで見ていると、男が降りてきた。
「久しぶりだね、花奈」
きれいな、とってもきれいな声。
花奈のずっとずっと会いたかった人の声。
大好きだった人の声。
今、見ている世界がなんだか鮮やかに色づき、胸が高鳴った。
「れ、れ‥‥ん?」
若い男が仮面をはずした。
「うん!覚えていてくれたんだ!うれしいなぁ!」
(蓮だ‥‥。ずっとずーーと会いたかった。蓮。)
花奈の頬に涙がこぼれ落ちた。
「ごめんなさい。蓮。本当にごめん。あの時、私がちゃんと約束を守って、私が蓮の家にちゃんと行っていたら、あなたは死なずにすんだのに‥‥。」
「え‥!そんな、気にしなくていいよ。」
「でも‥蓮は死んじゃったから。」
蓮は俯いている花奈の顔を覗きながら微笑んだ。
「なんで謝るの?それに僕が花奈にはやく会いたかったんだよ。」
「私は蓮に許してもらう資格なんかない‥」
「そんな悲しいこと言わないでよー。あ、あとこの国での僕の名前はレオンだから。」
ショウがそんな2人を見て戸惑っている。
「花奈この人友達なのかー?」
「う゛、うん、私の家族みたいな人。」
「そっかー会えてよかったな。っていうかここどこなんだ?蓮‥?レオン‥?」
「こっちの国ではレオンって読んでくれ。そうだなこの国は‥‥‥‥“あの世”だ。」
「「え!?」」
(もしかして‥私たち死んじゃったのー!?)
花奈は青ざめた顔をしてしまった。
「花奈、そんな怖い顔しなくても大丈夫。たまに時空が歪んでいろんな人たちがやってくるんだ。まぁ本当にたまーーーーーーにだけど。」
「じゃあ俺らはどうしたらいいんだ?」
「そうだな‥。ちょっとあの人の所に行ってみるか‥‥。」
花奈は体を前のめりにして、
「あの人っ?」
「うん、マコトさんって言う人なんだけど、僕の親がわり、その人どこから来たと思う?」
花奈もショウもしばらく首を傾けていた。花奈がひらめいた顔をした
「もしかして、私たちの世界!!!?」
蓮がニコッとした。
「惜しい!!正解は‥‥。」
蓮は真っ直ぐ上をさして
「天、つまり空から落ちてきたんだ!!」
「「空から!?」」
「そう!何か知ってるかも、行ってみよう!!」
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