4人いる。
「ここがリビングね。後で部屋に案内するけど、とりあえず、今はここにいてね」
「あ、ありがとうございます……」
そう言って、サヤさんはドタドタと階段を使い、二階へと上がっていった。
おれはひとまず、荷物を床に下ろし、近くにあったテーブルイスに座った。
まさか、話が通っていたとはな……
じいちゃんがちゃんと事前に説明してくれていたみたいでよかった。
先ほどの女性、名前は
おかげで、おれはこうして、家の中に入ることができたわけである。
「それにしても……」
おれは家の中をぐるっと見渡す。
どこか、おれの住んでいた家と似ている気がする。壁紙の種類だったり、部屋の造りが。おそらくだが、じいちゃんがおれと住んでいた家とこの家、二つともに注文を出したのだろう。だから、こうして似ているのだと思う。
「お待たせ、荷物持ってこっちに上がってきて」
おれがそんなことを思っていると、サヤさんが階段の途中から顔を出し、声をかけてきた。
おれはその言葉に従い、荷物を持って階段を上っていく。
「物置に使ってたから、ちょっと汚いけど、ごめんね」
「いえ、そんな。こっちが押しかけてきたわけですから、住めるだけでありがたいです」
「なんかものすごく堅苦しいわね……今日からもう一緒に住む家族なんだから、もっと気楽にいきましょ」
「は、はぁ……」
そうは言っても、つい10分前まで赤の他人だったんだぞ。そんなすんなり打ち解けるなんて無理だろ……と、つい思ってしまう。
「ちなみに隣が私の部屋ね。向かいが
「え、え、まさかの4人姉妹ですか……?」
「そうよ?聞いてなかったの?」
「初耳です……」
そういうことは伝えておいてくれ、じいちゃん……
おれはそう思わざるを得なかった。
まぁでも、名前を聞く限り、葵って人はおそらく男だろうな。とりあえず、同性がおれだけじゃなくて一安心だ。
「ま、とりあえず荷物置いてゆっくりしてて。私は夕飯の買い物に行ってくるから」
「あ、その前に聞きたいことがあって。さっき、携帯を取り出して何が操作してたみたいですけど、何してたんですか……?」
「さっき?ああ、あれは君が不審者だってなった時用に110番にすぐにかけられるようにしてたのよ。そうならなくてよかったわ」
そう言って、サヤさんは軽く笑みを浮かべながら、部屋から出ていき、階段を降りていった。
「通報されなくてよかったよ……」
というか、今時の女性は見知らぬ男が家の前にいたら、そこまで警戒するもんなのか……?
それか、おれがめちゃくちゃ怪しく見えたとか……
それはそれでショックだな……
「はぁ……」
静かに溜息を吐きながら、おれは部屋に置いてあった一人用のイスに座った。
荷ほどきは荷物がほとんど衣類なので、必要はなかった。おれは暇つぶしになればと携帯をポケットから取り出す。
画面を付けると、そこには高校の友達から沢山のお別れのメッセージの通知が来ていた。
というもの、家が無くなったため、おれは高校を卒業後、すぐにここにきたわけである。
大学には行かず、適当にフリーターでもやろうかなと思っていた矢先にこうなったので、地元の友達にはきちんと挨拶する暇もなかった。
突然のことで、みんな、びっくりしていたな。落ち着いたら、また会いに行こう。
そう思い、おれはメッセージをくれた友達に返事のメッセージを打ち始めるのだった。
♦︎
夕方の5時過ぎ。
おれは特にやることもなく、相変わらず部屋に篭り、ソファに座りながら、携帯のアプリでゲームをしていた。
すると、玄関の開く音がした。
そして、すぐさま階段を駆け上がってくる音がする。どうやら、4人のうち、誰かが帰ってきたらしい。
やっぱり、ちゃんと挨拶した方がいいよな……
もちろん、帰ってきたのがサヤさんって可能性もあるけど、買い物に行っていて、帰ってきて早々、部屋に上がるのもおかしいと思うし、やっぱりここは他の3人の誰かだよな。
おれは携帯を閉じ、ソファから立ち上がるとドアの方へと向かった。そして、ドアノブに手をかけようとした瞬間、ドアが先に開いた。
「うお……?!」
いきなり、掴もうとしていたものが消えたのでおれは、危うくバランスを崩しかけた。
「あ、ごめんなさい……タイミング悪かったですね」
ドアを開けた人物はわるかったとばかりに、ぺこりと頭を下げた。
「いや、大丈夫です……」
おれはそう言って、ドアを開けた人物の顔を見た瞬間、固まってしまった。
しばし、そのまま無言の時が流れる。
「あの、何か……?」
やや経ってから、おれに顔をじっと見られていたので、不思議そうに顔を傾げる女性。
「あ、いえ……」
おれは慌てて顔を背けた。
か、かわいい……ものすごく。
顔立ちは幼く見えるが、返ってそれがものすごく、髪型に合っている。
こんなにポニーテールが似合う女の子、初めてみた。まぁ近くにポニーテールの髪型の女の子いなかったけど。
そして、おまけに服の上からでも分かるくらい、スタイルがめちゃくちゃ良い……
出るところは出てて、締まってるところはすごく細い。
これはモテるだろうな……
サヤさんもかなりの美人だったし、これはあれだな、お母様がものすごく美人だったに違いない。
って、こんなこと思ってる場合じゃない。
「あ、あの……」
「サヤ姉さんから話は聞いてます。おじいちゃんのお孫さんなんですよね?」
「あ、はい……」
しかし、おれが説明する前に彼女は知っていたようだった。
サヤさん、さすがだな……
これはものすごく助かる。
「私、
そう言って、美咲さんは小さく微笑んだ。その笑みがかわいすぎて、おれは何故かとても恥ずかしくなってしまい、再び顔を背けてしまった。
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……
は、反則だろ、このかわいさ……
しかも、このかわいさが毎日見れるなんて……
じいちゃん、グッジョブ!
愛人がいたって書いてあるのを見たときは、ちょっと……って思ってたけど、これなら許す!
思わず、心の中でサムズアップしてしまう。
「サヤ姉さんが買い物から戻ってきたら、ご飯の支度するから待っててくださいね」
おれが無粋なことを思っていると、美咲さんはさらに魅力的なことを言ってから、去っていった。
「え、あ、はい……」
え、こんなかわいい子の手料理食べれんの?おれ。
あー、もう今死んでも悔い無しだわ。
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