頭なでなで

 ホワイトデーで、沙耶は耳が弱点だと発覚して以降、沙耶の許可が出るまで耳を触ったり、甘噛みしたりするのは禁止となってしまった。

 沙耶曰く、身体の力が抜けてしまうらしい。


 そのかわりと言ってはなんだが、頭なでなでにはハマったらしい。


『頭なでなで』


 一般的には、大人が幼い子を褒めたり、慰める時や兄が弟や妹に対して行われる行為であるが、近年では、イケメン男がヒロインに対しても行うことが増えている。

 ヒロインは頭を撫でられるイコール子供扱いされていると思い、最初は嫌がる傾向にあるが、仲が深まるにつれて、自分から頭なでなでを所望するようになるのがよくある一連の流れである。

 もちろん女性の頭を撫でるという難易度激高な行為ができるのは一部の限られた猛者だけであり、仲が深まってないのにしてしまうと、本当に気持ち悪がられるので注意したいところである。


 僕は沙耶をひざまくらした時に、ふと沙耶の髪が綺麗で触りたくなって、撫でたが、沙耶は頭を撫でられるのがとても気持ちよかったらしい。


 だからそれ以降、何かあるたびに僕は沙耶の頭を撫でることになった。

 照れ屋の沙耶が甘えてくれるのは良きことである。


 今も沙耶は僕の膝の上に座り、頭を撫でられている。


「えへへへへ。」


 沙耶は気持ち良さそうに笑っている。


 沙耶と出会った頃の僕が思った怖いギャルっぽい印象なんて消え去っている。

 ただの最高にかわいい女の子である。


 付き合う前と立場が完全に逆転してるみたいだ。

 まあでも沙耶がこんなに攻められるのが弱いなんて付き合ってから知ったしね!

 そこがまためちゃくちゃかわいいんだけど!!


 意外とウブでかわいい沙耶が発覚してからは、僕から攻めることも多くなったなぁ〜。

 沙耶が照れて顔が赤くなるのは最高にかわいいから攻めたくなるしね!

 でも沙耶はやっぱり自分がからかいたいほうなのかなぁ〜?


「沙耶はやっぱり僕のことからかいたい?」


「う〜ん、貴志の反応はおもしろいから〜、からかいたいけど〜、最近は貴志がすごく男らしくなっちゃったし〜!貴志からいじわるしてくるし〜!……まあ、嫌じゃないけど。」


「僕も沙耶のイタズラは好きだよ〜!かわいいし!ちょっとエッチだし!でも僕は沙耶にいじわるしてるんじゃなくて、かわいい沙耶を愛でてるだけだよ!」


 僕はそう言いながら、沙耶の頭を優しく撫でる。


「むぅ〜!!そういうとこ!そうやってさらっと言ってくるのがずるいの!!」


 沙耶は顔を赤くしながら、なぜかプンスカと怒る。


 でもかわいいからもっと撫でちゃおっと!


 小森貴志と姫川沙耶は、知らず知らずのうちにバカップルへの道を全速力で進んでいるのであった。


 もちろんバカップルであることを彼らは自覚などしていないだろう。




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