第11話 パンチラ

 人間とは隠されたものにこそ興奮する生き物である。

 それが周知の事実になった瞬間に興味を失うものである。

 知らないこと、見たことがないもの、何かで隠されているもの、何かが隔てているもの、それら未知のものへの探究心こそが人間の動力となっているのである。

 人間とは、「知りたい」生き物なのである。


 最近、僕にはとてつもなく知りたいことがある。

 このことを考えていると夜も眠れないのである。

 知りたくて知りたくて、気になって気になって、最近はずっとその思考に支配されていて、なにも手につかない。


 その知りたいこととは、


 姫川さんがどのようなパンツを履いているのか?ということである。


 僕は以前、偶然だが、雨のおかげで、姫川さんのブラジャーを拝見したことがある。

 だがしかし!!まだ1度も姫川さんのパンツのご尊顔を拝見したことがないのである!!


 もちろんパンツとは隠されたものであり、容易に見れるものではない。

 「見せて」と言うようなものなら、そのネタだけで一生姫川さんに完全なる変態というレッテルを貼られ、学校全体で吊し上げにされ、からかわれることだろう。

 いや、さすがの姫川さんにも引かれてしまうであろう!!

 だからその案はまったくもって却下である!!

 ではどうすればいいのか?

 僕は諦めきれない。絶対に姫川さんのパンツが見たい!!

 僕はどうすれば姫川さんのパンツをお目にかかれるのか??

 方法は、たったひとつ。


 そう!パンチラである!!!!


『パンチラ』


 ラッキースケベの代名詞であり、少年時代は誰もがジャンプのお色気枠でその興奮を味わったことだろう。

 その興奮はいつまでも冷め止むことはなく、男は誰でも平然とした顔を保ちながらも、何の変哲もない毎日を鮮やかに彩ってくれるパンチラというイベントがないか願っているものである。

 しかし、このパンチラで重要となるのは、自分から見に行ってはならないという点である。

 あくまでも偶然であり、目に入ってしまった状態にならなければならないというのが難易な点であるが、だからこそ、パンチラは素晴らしく、いつまでも男たちの灰色の心に彩りを与えてくれるのだろう。


 だがどうする??

 偶然の産物であるパンチラをどうやって狙う??

 パンチラは結局、奇跡に頼る部分が大きいため、僕にできることは限られている。

 それは、姫川さんからできる限り目を離さないことである!!

 いつどこでパンチラが起きてもいいように姫川さんを観察しておくのである!

 いや、観察だとあの勘の鋭い姫川さんに気づかれるし、何よりとても気持ちが悪い。

 だからバレないようにチラチラと見ておくことにしよう!

 そして、登下校も意外と一緒になることが多いから今まで姫川さんと会ったような時間帯を狙うことにしよう!!


 僕にできるのはこれくらいだが、もちろん勝算はある!

 だって姫川さんはめちゃくちゃスカートが短いのである!!

 いつも正直、見えそうだったのだ!!

 だから、気になってしまったということでもあるが。

 多分、あれだけ短かったら絶対にチャンスはあるはずだ!!

 あとは僕が見逃さないようにするだけである。

 よし!!じゃあ、明日から、オペレーションPT開始だ!!



 1週間後



 ど、どうしてだ。

 何が起こってるんだ??

 まっっっっっっっっっったく見えない!!!!!

 どうなってるんだ!!!!

 どうしてあんなに短いのに、全くみえないんだ!!!!

 絶対あのスカート、鉄でも入ってるよ!!

 くそうくそう!!!!


 まあ待つんだ貴志。落ち着こう。落ち着くんだ。大丈夫だ。落ち着こう。

 僕は知ってるじゃないか、パンチラとは偶然の産物である。

 その偶然が起きなかっただけだ!!

 そうだよ!!

 しかも、姫川さんは他の人よりも絶対パンチラする確率は高いんだ!!

 大丈夫だ!!忍耐しろ!!

 これくらいで弱音を吐いちゃ、パンチラなんて一生見れないぞ!!

 よし!!明日からまたがんばるぞ!!

 忍耐だ!!忍耐!!

 オペレーションPT開始!!



 1週間後



 なんでーーーーーーーーーー!!!!

 どうしてーーーーーーーーー!!!!

 どうなってんのーーーーーー!!!!

 全く見えない。

 見える気配すらなくなってきた。

 最後の方なんて、わざとスカートをフリフリしてたような気がするけど、まあ、それは気のせいだよな?

 それなのに全く見えなかったよ!!

 なにが忍耐だ!!!!

 忍耐しても見えないじゃないか!!

 もう、どうすればいいんだ?

 とりあえず神社にでも行って、お賽銭、千円払って、お祈りでもしてくるか。

 明日はきっと見える、そう信じよう。



 次の日、僕は正直、諦めながらもお賽銭の効果、一筋の希望を願って、姫川さんのパンチラを狙っていた。


 しかし、結局、今日もダメ。


 放課後になり、僕は肩を落として俯きながら、帰っていた。

 もう諦めようかな。

 パンチラが見たすぎて正気を失ってたけど、今思えば、パンチラ狙って必死にチラチラ様子を伺うってめちゃくちゃ気持ち悪いしね。


 もうこんなことやめよう。


 そう思ったときだった。


「た〜かし!そんな落ち込んでどうしたの〜?笑笑」


 姫川さんが目の前にいた。


 そういえば、姫川さんとちゃんと話すのは結構久しぶりである。

 あいさつなど普通の会話はするが、最近、パンチラを見ることに熱中しすぎてあまり話せていなかった。

 姫川さんから見ても落ち込んで見えるのか。理由を知られたら困るし、ごまかさないと。


「い、いや、別に落ち込んでなんかないよ??」


 よし、普通に話せた!これでもう大丈夫だろ!!


「え〜ほんとに〜??あたしのパンツ見れなくて落ち込んでると思ったのに〜!笑笑」


 な、ななな、なにーーーーーー!!!!

 な、なんて言った??

 パンツ見れなくてって言った??

 も、もしかしてバレてた??

 い、いや、まだ確定したわけではない!!

 カマをかけてきている可能性もある!!

 そして僕のチラ見がバレるわけないのだ!!!


「な、ななななんの話〜??別に姫川さんのパンツとか見ようと思ってないけど。」


 よ、よし!グッジョブ僕!!

 いい感じにごまかせてるぞ!!


「あはは〜!!正直言うけど、ずっとバレバレだったよ〜!!笑笑 頑張ってチラ見しようとしてたけど、もう余裕でバレバレ〜!!笑笑」


 ヲワタ。ヲワタ。ヲワタ。


 僕の完璧だと思っていた隠密行動は、姫川さんに通用しなかったのだ。

 僕はやはりこの女には勝てないのだろうか。

 仕方ない。ここは誠心誠意謝ろう。


「も、申し訳ありませんでした。」


 僕はもちろん土下座をする。


「なにが〜?笑笑 なんの理由で謝ってんの〜??笑笑 あたしに何をしようとしたから謝ってんの〜??笑笑 それ言わなきゃ〜!!笑笑」


 く、くそう!!こ、この女!!

 やはり悪魔だ!!

 だが、ここは言うしかない。


「ぼ、僕は、ひ、姫川さんの、ぱ、パンツを見ようとしていました。ほ、本当に申し訳ありませんでした。」


 僕はしっかりと土下座する。

 く、悔しい。屈辱的すぎる!!


「まあ別に怒ってなんかないけどね〜!!笑笑 なんならそんなに見たいなら、見せてあげよっかな〜??笑笑」


 な、ななな、なんですとーーーーーーーー!!!!

 見せていただけるのですか!!

 でもそれはプライドが。

 と思ったけど、そんなプライドなんかあるかい!!!

 ここまで屈辱を味わったんだ!!

 もうここまで来たら見るしかない!!


「見させてください!お願いします!!」


 僕はそのまままた土下座をする。


「正直になったね〜!!笑笑 でもこのまま見せてもおもしろくないから、ゲームにする!!」


「ど、どういうこと??」


「明日、貴志が一日中、あたしを観察して、放課後にあたしのパンツの色を当てれたら、見せてあげる〜!!笑笑 もちろん、質問とかもしてもいいよ〜!!」


 なんだそのゲームは!!!!

 む、難しいが、するに値するゲームだ!!それだけリターンが大きすぎる!!

 む、だが、僕が外した時のリスクがないぞ??

 危ない、やばいゲームに足を突っ込むところだった。

 ちゃんと聞いておかなければ。


「も、もし、僕が外したら、どうなるの??」


「ん〜、どうしよっかな〜??そうだ!貴志の1日をあたしが自由に使える権利で!!」


 な、なるほど。

 恐怖の1日になりそうだ。

 だが、それ以上にリターンがでかすぎる!!

 これは受けるしかない!!


「わ、わかった!!そのゲーム、やるよ!!」


「まあ、そうだと思った〜!!笑笑 じゃあ、また明日ね〜!!笑笑 頑張って〜!笑笑」


 姫川さんの手のひらの上でコロコロされている感が否めないが、これで合法的に姫川さんのパンツを見れる状況が整ったんだ!!

 まずはそれを喜ぼう!!


 よし、決戦は明日だ!!


 僕は絶対に絶対に絶対、姫川さんのパンツの色を当てて、姫川さんのパンツを見てみせる!!!!


 どうして、姫川さんのパンツをそんなに見たいのか全くわかっていない小森貴志であった。後編へ続く。




ーーーーーーーーーー


今回も読んでくださってありがとうございます!!そしてフォローや評価をしてくださって本当にありがとうございます!!!もしおもしろいと思ってくだされば、フォローと評価していただけると泣いて喜びます!!

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