その後


 糞精が消えてから数ヶ月が経った。


 わたしはといえば、以前と同じ不運のど真ん中といえる日々を過ごしていた。

 道を歩けば毎日のように転んだり、自転車にぶつかったり、ドブにはまったりしている。なにも変わらぬ毎日だ。


 とはいえ、変わったこともいくつかある。

 ひとつは不運であることを嘆いたり、諦めたりしなくなったということだ。同じ不運を繰り返さないために、毎日起こった不運をノートに書き留めて注意するようになっていた。


 そしてもうひとつ。不運を書き留めるようになって気づいたのだが、相変わらず色々な不運を受けているのにも関わらず犬の糞だけは踏まなくなっていたのだ。

 なんでなのか明確な理由はわからない。だが、わたしは糞精のおかげのような気がしていた。


 そのため、道ばたに落ちている犬の糞を見ると思い出してしまう。


 糞精と過ごした数日間を。


 想いを伝えることの大切さ。


 フられることの苦しさ。


 さらには、不運を逃げ道にしていた自分自身。


 糞精と出会ったからこそ、それらを知ることができたのだ。わたしの中で、あの日々は一生忘れることのできないものとなっていた。


 それから、犬の糞を見てこんなことも思う。

 飼い主は責任を持って処理しろよ、と。

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うん!この精霊! 笛希 真 @takesou

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