第32話 剣の慟哭(2)

(1)

 もう使わないと思っていた引き出しを開けてみる。

 聞こえてきたのは罵声で、感じているのは痛みと恐怖とやり切れなさである。鎖を引きずる音と重たい鉄の扉が開く音に続いて聞こえてきたのは、皮膚を裂く革鞭の風を切る音である。何やらやたらと生々しく、思わず眉を顰めて引き出しを閉めた。

 ――寄生して、20年と74日目。未だにこの男とは相容れない。

「リノロイド様に、感謝することだ」

引きずって歩くには重たすぎる過去だったろう。この際、消えてしまえば良い。

 もう楽になってしまえば良い。

 刹那、頭を殴られた。その拍子に少しだけ開いた、かの引き出しから、亜麻色の髪の盟友がこちらを睨み付けていた。

 魔王軍に所属していた20年と74日は、この男にとっては束の間の幸せだったのかもしれない。例えば、その亜麻色の髪の盟友のお陰だろう。例えば、部下や戦友達のお陰だろう。例えば、愛娘のお陰だろう。


“私にもできる事だって、あると思うの”


もどかしそうにそんな事を言ってくれた、あの優しい人の辛そうな表情が脳裏を過った。皆には済まないが、もう二度と引き返すことはできない。その点については、この男とも一致しているのだが。

 槍を引き抜いた。血が吹き出して大地を赤く染め上げた。

「フフ……何をそんなに傷付いている?」

穢れた血だと“お前”を散々罵倒したニンゲン様が、またその短い生涯を終えようとしているだけではないか。


 ディストは倒れている人間から水と食料を奪う。主から抹殺命令の出ている双子達とそう遠くないところに来ている筈だ、と風天馬(ウィンディペガサス)を急がせた。

(2)

 何だか見覚えのある森の中だった――リョウはその森に立ち尽くしていたのだった。

「ん?」

視界に飛び込んできた二つの人影――リョウは隠れることも話し掛けることもせずに、ぼんやりと2人のやり取りを見守っていた。一人はマオだが、もう一人の顔は木陰になっていてよく分からない。

「では、マオ、この子達を頼んだぞ。」

暗く静かな声の男が、マオに子供を託している。

「はい、承知しました」

垣間見えるマオの表情はリョウの知っている、明るくて朗らかな彼女ものではなかった。伏し目がちでうつむき加減で、声を掛けていいものか、ためらってしまうほどである。

 どうやら、話し相手は父・セレスで、場面は、父がこれから戦いに赴こうとしていたところであるようだ。

「この子達は、必ず、私が立派な術者にして……」

だとすると、託された子供達は自分とセイなのだろうか。

「相済まない」

そう言った父の顔立ちや表情はぼんやりとしか見えない。

「本当なら、私が、貴方のお供をしなければならないのに……」

「気持ちは嬉しいのだが、お前には、この子を育てる義務があろう?」

「……はい」

それにしても――マオとセレスのやり取りを見ていたリョウは思った。早く逃げなければ、刺客が来てしまう。そして、彼に殺されてしまう!

 そう思っていると間も無く、彼はやってきた。そう、“四天王”の一人、ディストだ。

「探したぞ、ランダの末裔」

父が二本の剣を構えた。戦ってはいけない! 逃げて!――リョウは叫んだ。しかし、彼等には何も届かない。

「無意味な事を。ランダの血縁を断ったところで、光の民は滅びはせんぞ」

「光の民が滅びるのは時間の問題だ。我々はその実現を最短で果たすまで」

ジリジリと間合いを詰める音だけが聞こえてくる。戦ってはならない! 

「生憎、オレは、嬲り殺すのは趣味じゃない。一瞬で決めてやる」

ダメだ! 逃げて! 早く――


「だあぁっ!」

「黙れ低能!」

「え……っ!?」

馴染みの罵声に突如現実に引き戻され、自分が何処にいるのかが分からなくなったリョウは辺りを見回した。

 明かりといえば薪についた炎くらいだが、やや呆れた色をした無表情でこちらを覗き込んでいるセイと目を合わせたリョウは、漸く落ち着いたのか、ホッと息をついた。

 ベルシオラスを出て、15日目の朝方である。

「ヤな夢でも見たのか?」

「あぁ、……まぁな」

リョウは冷や汗を拭う。「寝起きが悪い」と、よくセイからは御叱りを食うのだが、流石に今日はもうすっかり目が覚めてしまった。

「日頃の行いだな」

セイは淡々と剣の手入れを進める。気の利いた言葉くらいかけろ、とリョウはドライな弟を睨む。飛び起きたリョウとは対照的に、まだセイはどことなく眠たそうだ。リョウは舌打ちして朝食の準備に取り掛かる。弟に任せても良いのだが、この準備の手際に関しては自分の方が勝ると自負しているということもある。

「お前の嫌いな奴の夢を見てたんだよ」

リョウはまだ脳裏に焼きついている夢の残像を確かめるように寝癖頭を掻いた。

「オレの嫌いな奴?……見当もつかねえな」

どうやらセイの嫌いな人間とやらは、相当数に上るようだ。

「……だろうな」

あまりにもリアルな弟の回答に、リョウも苦笑するしかなかった。

 水属性魔法分子が充填している。今日は雨が降るようだ。地中にいるバクテリア達が騒ぎ始めたので、そこらじゅう土の匂いがする。それだけで気が滅入ってきた。

「ペースを上げねえか?」

不意に、眠そうだった弟がそんな提案をしてきた。セイにはあえて詳しく伝えてはいないのだが、刺客としてこの辺りに駐留しているだろうディストを避けるため、あえて見通しの悪い森を選んで進んでいることもあって、思ったよりも時間をロスしているのだ。

 だが、迂回しているという程大げさに遠回りをしたワケではない。怪訝な顔をして地図を広げたリョウに、

「そろそろ食料が尽きる」

と、衝撃の報告がなされた。時に、リョウ達が向かっているのはネプスヘレジアという町である。そこで一度、食料等を補給する予定だ。

「セイ! 今から出発するぞ!」

リョウは地図を畳み、朝食の準備さえも中断した。

「あぁ? まだ真っ暗じゃねぇか」

まだ眠いセイはすぐには動きたくないようだった。

「メシが尽きたらヤバイんだよ! オレはメシがないと生きていけないんだ!」

「メシが食えなきゃ生きていけないのは誰も同じだと思うが……」

「んな事ぁ知ってる! 早く準備しろ!」

リョウは欠乏恐怖症(自称)だと言う。

「ったく……」

セイは不服そうに溜息をついた。

(3)

 二人が出発して、どのくらい経っただろうか。周りの木々が疎らとなり、いつの間にか荒野になっていた。曇ゆきも怪しく、今にも雨が降りそうな空である。

 ――嫌な予感がして、リョウは足を止めた。ここから半日も歩けばネプスヘレジアの町だが、明らかに、こちらに接近してくる闇魔法分子があるのだ。

「刺客は、アイツだな」

目標を追っていたセイの目が険しくなった。

 ネプスヘレジアの町で戦闘開始するわけにも行かず、かといって近くに森も藪も無く、リョウは気配を絶ってやり過ごす提案をしてみたが、もう、手遅れなのだと分かった――弟からは、確かな殺気を感じる。

 幼少から人づてに聞いて知っていた父親の仇は、魔王軍第二部隊隊長ディスト。

 長い金髪のジェネラルウィザードだ。段々鮮明となってきた輪郭に、その特徴はしっかり捉える事ができた。

「やっと、お出ましか」

セイは剣の鞘を左手に持ちかえる。彼は本気だ。

「セイ……」

リョウは小さく俯いた。

(4)

 “剣術というよりは、殺人術である”

 数年前に、とある剣豪が弟の剣を指してこのように評したことがある。

 それを聞いていたリョウは、正直、自分の弟には違いない彼に恐怖すら感じた。セイはセイで、甘んじてその虚像を受け容れているようにも見えた。丁度、今のセイは、昔のあの時の瞳をしている、とリョウは思った。

「リョウ、手出しは無用だ」

不意のセイからの申し出に、更にリョウは戸惑う。

 リョウだって、父親が殺されたことは何度も聞かされてきた。それがどうも弟ほど憤りに感じられないのは、義父のこともあった所為か、「父親」と言う言葉に漠然とした恐怖心の方を抱いてしまうからだろう。

「(オレだって、親父(セレス)を殺されたのは悲しいけど)」

殺気立つセイとは対照的に、リョウは不安に駆られていた。セイは多分、誤解しているのだ。いや、剣先が迷わぬように、自分で自分を洗脳しているのだろう――殺せば憂さも恨みも晴れるだろう、と。

 「(でも、)」

この戦いに決着が付く頃、一体何が残っているだろう。

「(それなら、オレは……)」

戦いの果てなどリョウに見えたものではないのだが、教えてくれた人ならいた。

“報われるどころか、何も変わりはしなかったわ”

リョウは小さく決意を固めた。“甘チャン”などと大罵倒されて全て丸く収まるなら、それに徹するのみだ。


 時を置いて刺客の容姿ははっきりしてきた。腰まではある長い金髪、鋭く深い二重瞼、芸術性さえ感じるほどの整った端正な容貌である。

 対峙してみて判った透明感のある碧色の澄んだ眼などはまるで宝石である。敵という立場ながら、性別さえ忘れて思わず見惚れてしまうほどの奇麗な人だった――それが父親を殺した男の顔だった。

「ランダの末裔だな?」

その男は、冷たく鋭い目を二人に向けた。

「良いな、リョウ。手出しは無用だからな」

セイはもう一度念を押す。

「え? ああ」

リョウはその場限りの返事でお茶を濁した。それが正解なのかは分からないが、当面状況を見守ることにしたのには理由がある。即ち、リョウは、少しだけ、弟に期待をしているのだ。


 これは誰も救われない戦いであると、彼自ら気付いてくれるのではないか、と。


(6)

 ディストの声や口調は穏やかだったが、何処を取っても人間味は無かった。

「お前達は、我が誰で何の為ここへきたのか、最早解っているのだろうな」

ディストは風天馬(ウィンディペガサス)の背から飛び降りた。同時に天馬は消える。

「勿論だ」

セイは剣を鞘から抜いた。ディストも槍を召喚した――ジェネラルウィザードというのは、恐らく、武器にも精通しているウィザード(魔法使い)のことだろう。分からないなりに、リョウはそのように解釈することにした。

「(でも、接近戦ならまだセイに分があるかな)」

リョウはひとまず安心した。

「剣か。まぁ良い。すぐに親父の顔を見せてやろう」

ディストは、一般的な闇の民のようには接近戦を苦にしていないようだ。言動の端々に幾らかの余裕を感じた。

「上等だ」

セイは笑った。どうしてだろう――喜んでいるように、リョウには見えた。

(7)

 仕掛けたのは同時。

 力量は互角――少なくとも、現段階ではリョウにはそう見えた。刃と刃の強くぶつかる音が、静かな荒野にやけに響く。

 セイから繰り出される剣撃を躱わし、あるいは槍の柄でセイの刃を受け止めるディストは、そのスピードに乗った槍の刃の慣性を利用してセイの胸元を突くために死角からスペースに入ろうとする。が、勿論、セイはそれを許さない。

 一方、間合いを広げようと後ろに飛ぶセイに合わせてディストが槍を突けば、セイはそれを躱わしながら反撃を試みる。しかし、その不規則な刃先の軌道も槍の柄で見事に防がれていて、もう一度セイは間合いを広げざるを得なくなる。

 こんなことの繰り返しが、かれこれ半刻は続いていた。

「(これじゃあ、埒があかないんじゃないか?)」

見守るリョウは打開の機を伺っていたが、そこに水を差すかのように、鋭い金属音が耳に飛び込んできた。

「あ!」

ディストの槍の先端が折れて地面に突き刺さっていた。形勢はセイに有利に働いたようだ。ただ、リョウの予想が正しければ、これでは解決しない。

「(とどめは刺さないだろうな)」

根拠はともかく、そう感じたリョウの予想通り、セイは一度間合いを取っただけだった。

「流石、一筋縄ではいかないようだ」

そう言って笑ったところを見ると、ディストは、武器を失ったことを全く苦としていない。

「(攻撃呪文が来る!)」

セイは簡易の結界呪文を詠唱した。この判断は正しいようだ。交差させたディストの両腕は風魔法分子を集めていた。それだけで辺りの風はピタリと止んでしまった。空を覆っている雲でさえも、その動きを止めるほどである。

『風属性魔法球(ゲイルウインド)』

リョウには聞こえない程小声だったが、ディストが交差させた腕を横に広げた瞬間、一気に、数えきれない量の風属性魔法分子の刃が、セイを取り囲んだ。

「セイ!」

“手出し無用”と言われたものの、回復呪文(ヒール)の準備はしておくべきかと身構えたリョウだったが、すぐにセイの怒号が飛んできてこれを制した。深手は負っていないらしいし、どうやら虚勢でもなさそうだった。

「二人でかかってきても別に構わない」

ディストの提案に、リョウは首を横に振った。

「アイツがそれを望まない」

眼前の親の仇よりも、弟の機嫌の方が厄介そうだとリョウは分析している。

「……そのうち、そうも言っていられなくなる」

ディストはリョウからセイへと視線を移した――


 段々と風が元の静けさを取り戻す。やや間合いはあるが、リョウは土埃の中から姿を現した弟の状態を確認する。


 雨が降ってきた。


(8)

 決戦の舞台は雨。

 その荒野の土に、血を含んだ雫がしみ込む。

「思った程、大した傷にはならなかったようだな」

どうやら感心はしているらしいディストが、薄く笑った。

「舐めるんじゃねえよ」

セイはディストを睨みつけた。彼の身体には浅い切り傷が無数に付いていた。

「(あの魔法分子結晶に触れただけで皮膚が裂け切れてしまうのか)」

何とか冷静にリョウは分析できた。セイを手助けしたいけど、したくない気持ちも何処かにある。

「リョウ、下がっていろ」

唾と一緒にそう吐き捨てたセイは剣をも投げ捨てた――そんな戦い方をする弟を知らないリョウは、一層複雑な気持ちになってしまう。


 雨は、更に強くなった。


 セイは一歩前に足を出した。赤い飛沫が散った。そのまま、弟が更に一歩前に足を進めた時に、リョウはハッとした。

「(また接近戦?!)」

セイは傷をものともせず、そのまま、ディストに向かって走り出した。虚を突かれたディストは少し眉をひそめたように見えた。

「(不意は打ってる! チャンスか?)」

しかしこれはもう見ていられず、リョウは視線を落とす。セイの拳が先か、ディストの攻撃呪文が先か――しかし、

「――くッ!?」

やおらディストの体制が崩れた。どういうわけだろう、彼は突然呪文をためらったようにも見えた。とにかく、攻撃チャンスはセイに移った。

『死神の微笑(デスクレスト)!』

接近戦に持ち込んだと思っていたが、セイはいつの間にやら攻撃呪文の詠唱を開始していたらしい。セイの右の拳が大地に振り下ろされた刹那に、負のチカラを帯びた闇属性魔法分子が大地に紋を刻みつけて強く発光した。

「仕留めた!」

リョウの声と同時に、セイが大地に描いた紋から充溢した負のチカラを纏った砂礫がディストの全身に打ち付ける。

「ぐっ!」

ディストは片膝を地に付けた。額か瞼を切ったらしく、彼の美貌は血に塗(まみ)れていた。

「(効いたか?)」

セイの放ったあの呪文は、通常使用で魔物を絶命させるほどの威力はあることをリョウは知っている。期待しているのか、心配しているのか分からないまま、リョウはディストの状態も確認した。しかし、

「流石、ランダの子孫、といったところか」

意外にも、ディストは少し笑っただけだった。魔王軍の隊長ともなると中位呪文でさえも大したダメージは期待できないようだ。

「何故、呪文をためらった?」

先ほどの攻撃機会にできたディストの不自然な隙は、セイも気付いていたようだ。気に入らねえ、と今にも聞こえてきそうである。

「(ん?)」

何故だろう、リョウには、ディストが答えに窮しているように見えたのだ。しかし、やっと彼の口から出てきたのは、

「お互い様だろう?」

という挑発だった。セイの表情がより険しくなった。

 一瞬、というほどの短い間である。それなのに、立ち尽くしているリョウまでも皮膚にヒリヒリする痛みを感じるほど濃い負のチカラが荒野に集まっていた。呼び寄せたのは、セイである。いや、既にディストもそれに応じていた。辺りの闇魔法分子が二人の世界的術者の名の下に、次から次へと帰属しているのだ。

「(最強呪文!)」

リョウは息を呑む――勝者は二人に一人。

 セイか、それとも、ディストか。

(9)

 「雨か」

クヌギの木の上で軍務をサボタージュしていた亜麻色の髪の青年は、灰色の重たい空を見上げた。


“貴方が言う程、リノロイド様、悪い方には見えませんでしたよ?”

ディストはそう言っていた。

“あの女は――”

だから彼は言い返したのだ。

“あの女は、オレ達を野望のコマにしているだけさ!”

感情的な彼を目の前にしても、ディストは冷静に、確かコーヒーなんかを飲んでいた。

“妹さんと、同じように?”

ディストは彼の事をよく知っていた。彼が誰なのかも、どうしてここに居るのかも含めて。

“そうだ”

そう吐き捨てた彼にさえ、ディストは笑みを返してくれた。そして尚も、

“オレは、やっぱり、リノロイド様を信じますよ。

重ねてそう宣言したのだ。その確固たる意思の拠り所は、しかし、何とも頼りないものだった。曰く。

“混血のオレでも拾ってくれた、たった一人の存在ですから”

 

 先ほどから鳴り止まなかった刃物がぶつかり合う音が、ぴたりと止んだ。亜麻色の髪の青年は落ち着かず、黒い外套を頭から被った。それに合わせた訳ではないが、先ほどから鳴りっぱなしの通信機器の電源を、彼は強引に切った。その甲斐あって、代わりに聞こえてきたのは、雲と魔法分子が流れる音である。

 折しも風向きが変わった。この戦いは結末が読めない。風でも吹けば動きそうな運命の歯車――そんな脆弱なものに委ねられている戦いだ。


 “お願いがあるんです”

ディストが前の第二部隊副隊長を期せずして暗殺してしまった日、ディストは彼に依頼してきたのだった。

“オレの中に……もう一人オレがいる。そいつを――”

「殺してくれ」と彼は言うのだ。


 結局、ディストは魔王に利用されていたのだった。彼の優しすぎる性格は魔王軍には不釣り合いだったのだが、魔王はどんな手段を使ってでも、ディストの魔法キャパシティーと格闘センスを手に入れたかったのだ。だから、魔王は「副脳」というツールでディストを支配したのだ。


“召喚命令が下りました”

しかし、それさえもディストは許した。

“近いうちに、ランダの子孫と戦うことになりそうです”

“行くな!”

自分がリノロイドに何をされたのか分かってるんだろ? と、彼は引き止めたのだ。それなのに、ディストは名残惜しそうに笑って見せただけだった。

“行くなよ! これじゃあ死にに行くようなものじゃないか!”

 

遠雷の音。――亜麻色の髪の青年はじっと聞き耳を立てていた。


 「どうする?」

雨に呟いてみても、答えは見えない。

「ランダの子孫なら、どうする?」

これでは、雨は降り止みそうも無かった。

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