水辺のいつつうた

染まった息はただ、ただ、空へと溶ける。

葉表に乗ったその色も、

足元で弾けるその音も。

息と同じく溶けて消えてゆくのだ。

冬はそう、こんなにも肌を刺すというのに、

いつもいつも、さよならすら言わずに消えてゆく。


――  霜



 * * * * *



雨粒は白線を描く、描く。

はたはたと窓硝子にぶつかっては、

悲しい、悲しいと。流れ滑り落ちる。

涙に濡れた透明は微かに白く濁りながら、

それでも優しく、世界の輪郭を描き出している。


――  露



 * * * * *



飲み込んでしまいたい。

唇でかみ締めた言葉は胸奥にひやりと落ちた。

その思いがけないほどの冷たさを

持て余して、いつしか溶けて。

瞳から溢れそうになってしまう。

けれどそれすら飲み込んだ心は、

急な熱さに悲鳴を上げている。

私にすら気付かれないまま。


――  雫



 * * * * *



煙った白の内側に世界が落ちて。

草葉は眠り、風だけが切り裂こうと暴れ回る。

このまま隠してくれれば良いのに。

そんな言葉すら今は白に落ちて聞こえはしない。

ほらその証拠、

吹く風は咎めもせずに通り過ぎているでしょう?


――  霧



 * * * * *



響かせた声は、跳ねて跳ねて。

木霊となっては辺りへと広がってゆく。

けれど周囲を漂う白はゆるゆると、

深緑を包んでは空へと流れ消えた。

私の歌なんて聞いていないかのごとく。


――  霞



 * * * * *



「和白-washiro-」様(現在は閉鎖)の「漢字一文字 五の御題07」を元に。

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