おはなし ひとひら:5 小麦袋抱いて

両手で抱えた大きな袋

開いた穴から小麦が落ちる

だから振り返れば点々

小麦が道を示すだろう


袋の小麦がどれほどか

いつ無くなってしまうのか

道はどこに続くのか

いつまで歩けばいいのか


分からないまま僕は歩く

小麦袋を抱きしめて


振り返った先の小麦は

もう小鳥が食べてしまったかな

帰り道なんて知らない

ねえヘンゼルにグレーテル?

道の向こう お菓子なんて期待しないけれど


袋を投げ捨て座ってしまえば

重さなんて気にならなくなるのにね

心がどこかで囁くけれど


穴から小麦が落ち続けて

道に落ちて弾かれ跳ねて

そして僕を急かすから

そして僕を見ているから


僕は歩き続けるしかないんだ

小麦袋を抱えて




―― ぽろぽろ



「vertige」様(現在は閉鎖)の「擬音・擬態語で5つのお題」を元に。

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