おはなし ひとひら:4 盛夏の太陽

かつて彼は蝋の翼を背負って

太陽へと飛んだらしい

結果天に弾かれ落ちた彼が

熱に焦がされそれでも

欲したのは何だったのか


アスファルトの陽炎に包まれ

滴る汗と詰まる吐息に塗れ

溶ける頭で彼を思う


木陰に隠れたところで

葉ずれと共に白光が貫くから

思考は常に空回り

彼への思いは纏まらない


盛夏の太陽は私の全てを奪って

楽しげに笑ってばかり


求めたのは何だったのか

彼の答えは聞けないけれど

もし蝋翼があったならきっと

私も空へ飛ぶだろう


全てを奪っていった太陽に

少しでも近づくために

地歩く人を嘲笑う太陽を

少しでも見返すために




―― じりじり



「vertige」様(現在は閉鎖)の「擬音・擬態語で5つのお題」を元に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る