消えない傷

消えない傷を

君は後生大事に守っている


痛い痛いと呟いて

はらはらと涙をこぼし

かさぶたを剥がしては

溢れ出す血に目を細める


絆創膏も貼らず

薬も塗らず

傷の辛さを訴えては

生を諦めたいと言葉を接いだ


君が求めるのは

悲劇の似合う主人公で

君が胸に抱くのは

他人を求めるための傷


だから消えない じゃなく

だから消さない だけなんだ


このまま君が傷を消さないなら

君が自己憐憫に酔い続けるなら

いっそ僕が消してしまおうか


半身の君ごと

半身の僕ごと

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