冒険の始まり
大会の日の夜。侑は宿の部屋で1人考え事をしていた。
─これからどうするのか─
こっちに飛ばされてからからいろいろありすぎて全然考えてなかったけど、絶対に帰らないといけない。仲間はできたけど僕の居るべき場所は日本だ。
そもそも、なんでこっちに飛ばされたのかすら分かってない。これが夢ではないことも分かる。あまりに長すぎる上に、感覚系統が全てリアル過ぎる。奇跡でも起きてこうなったのか、それとも、誰かがこうしたのか。誰かがやったなら何のためだ? 何かしらの事故で飛ばされるのか僕だったのか、指定されていたのか。
何も分からない。だから絶対に自分の居るべき世界に帰らないといけない。
─帰るにしてもどうやって帰るのか─
帰る方法は思いつく限りで一つしかない。その一つも成功する可能性は低い。その方法は空間魔法だ。それも、普通じゃ習得できない『異次元転移』。これは「LAST・BRAVE」がサービス開始してからすぐに公式から発表された魔法。習得方法は【魔王討伐】。3年間まだどのプレイヤー達成できていない超難関クエスト。
そもそも、この世界はゲームであり、現実だ。ゲームのように敵は行動し、こちらは魔法やスキルを使える。しかし、感覚は現実と変わりはない。だから、この世界で死んだら本物の死になるかもしれない。まだこの先、どんな場所があり、どんな敵が居るか分からない。だから迂闊には動けない。
─レイナやエレンには言うのか─
まだ言えないな。おそらく信じてもらえないだろうし、信じられても、なんか変な感じになりそうだし。けど、一緒に行動する間でクエスト進めるのも難しい。まあその辺は上手く誘導していくか。
これからの行動は決めた。後は生活していく中でこっちに飛ばされた理由、【魔王討伐】以外の帰る方法が見つかれば御の字かな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、侑達は大会の賞金で装備を一新するために街へ来ていた。
「とりあえずお金はたくさんあるから自分に合う装備を買おう」
「侑さんが大会で勝ち取った賞金なのにありがとうございます」
「正直俺たち2人の所持金じゃ今の装備がギリギリだったから助かったぜ」
「いやいや。2人がいなかったらキングコボルトの時にやばかったらからその時のお礼だと思って」
「「分かった」」
その後、3人で計6Gを使って侑の杖以外の装備を一新(全てR)した。
「さあ、明日から冒険開始ですね! 最初は何処目指していきますか?」
「ここの近くだとトップレベルの戦力を持つ、軍事国家スピンテールか世界3番目の大きさの都市国家メノエイデス、国全体が二重の壁で囲われている要塞国家カルワリアの3つかな」
「その前に最終的な目標を決めよう。なんとなくで動くのも時間を無駄にしてる感じがするからな」
最終的な目標とエレンが言ったとき、侑はドキッと驚いていたが誰も気付くことはなかった。
「チームとしての目標は全員の目標を達成することにしようと思うんだが、それでいいか?」
「全員の目標を達成することを目標にするのはいいとは思うけど、個人的には難しいと思う。多分みんなバラバラだと思うし」
「まあ、とりあえず言っていきませんか。バラバラになるかどうかも分からないですし」
「それもそうだね。ということでリーダーから!」
「いきなりだなぁ。ちょっと待てよ…… よし、俺の目標は全てのダンジョンを踏破することだ。まだダンジョンには謎な部分がたくさんある。だからそんなダンジョンを全て踏破したら、そんな謎な部分の事を全て知れそうだし、全てを知れたらモンスターに怯えずに生活できるようになる。そう思ってるからこの目標にした」
この話が終わったとき侑は「エレンをリーダーにして良かった」と思った。このリーダーなら人のために動けて信頼できると。
「じゃあ次はレイナだ」
「はい、私の目標は魔法を使えるようになることです」
「あれ? 魔法って練習すれば使えるようにならないっけ?」
魔法は、プレイヤーの場合は練習しなくても杖があればすぐに使えるようになる。モブキャラでも練習すれば魔法を使えるようになるとゲームのストーリーで言っていた。
「確かに
侑はこれまで、この2人が「楽しそうだから」や「やってみたいから」などの理由で冒険しようとしているのかと思っていた。しかし、目標を聞いているとそうではなかった。しっかり目標を持っていた。そんな2人の仲間に自分はなった。尚更、責任を持って行動しなければならない。この時、侑はそう、決意した。
「最後は侑さんです」
「ああ、僕の目標は世界の神器を全て集める事だ」
「神器ですか? 前に本で見たことはありますけど、詳しくは知らないです」
「神器は剣、盾、弓、杖、槍の5つあって、性能はURよりも何倍も上。そして伝説では、この5つの神器を全て集めた時、見たことのない世界が開けると言われているんだ。だから僕は、その世界を見てみたい。これが僕の目標だ」
「これで全員の目標は分かりましたね」
「全員バラバラな目標だったけど、1つ共通の事はあるな」
「冒険しないといけないという事ですよね」
「そうだな。それにしてもどこから行く? リーダー」
「最初はメノエイデスにしようと思う」
「南西の方だったっけ。理由は?」
「やっぱり大きいのはまだレベルが低いからだな。メノエイデスなら、そんなにレベルが高いモンスターも出ないはずだし、南西の方は他の街にも行きやすくなる」
「確かにそうですね。じゃあ明日の早朝出発で」
この後、方位磁針や食料、テントなどを買って、3人は明日に備えるのだった。
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