新しい仲間6

「ただいまから第二試合のユウ選手VSアルバート選手の試合を開始します!」


 場内アナウンスが流れ、試合が始まる。今更なのだが、侑の登録名はカタカナ表記だ。


「5、4、3、2、1始め!」


 この合図のの直後、アルバートが盾を前に出しながら突っ込んできた。相手が魔法使いなので、魔法を撃たれる前に距離を詰めるのは正解だろう。


 しかし、侑にはそんな戦い方は意味がなかった。何故なら……


「『アイス・ウォール』! からの、『ヘイルラッシュ』」


 アルバートの動きは『アイス・ウォール』で止まり、止まったところに、直径2㎝以上の大量の雹が勢いよく飛んでいく。アルバートは、いきなり自分の体が止まったことに驚きつつも、最初の方は盾で捌ききれていた。しかし、


「『アイシクル・バレット』」


 氷柱状の氷の弾丸が、アルバートを襲う。弾丸なのでそこまで大きくはない(約3㎝)のだが、氷なので通常よりも見えにくい。威力も、雹とは全く違い、数発で、鎧を貫通するほどだ。


 その後は、アルバートが『アイシクル・バレット』を捌くことが出来ずに、このまま戦闘不能になって侑がトーナメント初戦を突破し、さらに、準々決勝と準決勝も勝利し、決勝まで上がった。


 一方のシャルクも、三試合とも圧勝し、決勝まで上がった。そして、これから決勝戦が行われる。


「手加減なんてしてたら普通に負けそうだ。それに僕は実力のある槍使いと戦ったことがない。どうやって戦うかな」


 侑の有利な所は射程と行動の多彩さだ。それに対して不利な所は、スピードと対応力だ。射程で勝っていたとしても、相手に近付かれると意味がない。さらに、『アイス・ウォール』もシャルク相手だと、気付かれて、槍で貫かれかねない。


 そんなことを考えているうちに、時間が来てしまった。


「さて、ただいまから決勝戦を始めたいと思います! 決勝に残ったのは意外ながら、圧倒的な力で勝ち上がってきたこの2人! ユウ選手とシャルク選手です」


 場内アナウンスが入り、紹介される。このアナウンスで2人は戦場へ向かう。そして、何度も聞いたアナウンスで試合が始まる。


「それでは、決勝戦ユウ選手VSシャルク選手の試合を開始いたします! 5、4、3、2、1 始め!」


 アルバートとの試合とは違い、始まった瞬間距離を取る2人。そして距離を取ったところで侑が魔法を放つ。


「『アイシクル・バレット』」


 氷柱状の氷の弾丸がシャルクに向かって飛んでいくが、


「《連続突き》」


 槍の専用の連続攻撃スキルで全て落とされる。


「うわ、マジか……」


 これで倒せるとは侑も思ってはいなかったが、自分に当たらない弾丸まで落としていたので、それなりにショックを受ける。しかし、すぐに立ち直り、さらに魔法を放つ。


「『イグニート・キャノン』」


 直径3mオーバーの火の玉がシャルクに向かって放たれる。これが当たっても、威力は抑えているので死ぬ事はないだろうが、大怪我は間違いない。そんな魔法だ。しかし、


「《水流一閃突き》」


 水属性のスキルで玉を掻き消される。


「やっぱこれも駄目か。しかも属性付きスキルまで使えるって、めっちゃ強いじゃん」


「次はこちらからいくぞ! 《嵐の槍ストームスピア》」


 強力な風と共に、もの凄い勢いで槍が突き出される。


「『ファイア・フォートレス』」


「ちっ……」


 自分の周りに炎の要塞を作り出し、シャルクのスキルをキャンセルさせる。


「あぶね~ この調子だとこっちの魔力が切れて、先に動けなくなりそうだな。ここで決める! 『ウォーター・ボール』」


「《連続突き》」


 案の定全てスキルで落とされる。だが、しかし、


「かかったな! これで終わりだ『ナムトニトルス』!」


「しまった…… ぐふっ」


 侑から雷がシャルクに向かって放たれる。この魔法単体なら、他の魔法と同じように撃ち落とされていただろう。しかし、その前に『ウォーター・ボール』を放っていた。それにより、感電してダメージがはいったのだ。


「最後だ『バーストバブル』」


 直径90㎝程の泡がシャルクの方へ飛び、近くではじける。その時の風圧によってシャルクの体が場外に飛ばされた。


「ここで決着がついた! 激しい魔法とスキルの攻防の結果はユウ選手の勝利。ということで今回の大会優勝はユウ選手です!」


 


 この激しい戦いのあと、表彰式で賞金をもらい、チームのメンバーと合流していた。


「侑さん凄かったですね! 1対1が苦手な魔法使いが大会で優勝してるの初めて見ました」


「やっぱ流石だな! よく最後の槍使い倒せたな」


「結構ギリギリだったよ。最後の雷が決まらなかったらやばかった」


「そういえば新しい仲間はどうするんだ?」


「ああ、それについては今回は諦めようと思う」


「えっ、何でですか!?」


 この大会に出場した最大の理由は新しく仲間を増やすのが目的だったので、レイナが驚きの声をあげる。


「理由は、単純にいい人がいなかった。1人いい人がいたけど、そっちも諦めた」


「その1人って決勝の槍使いか?」


「そう」


「こっちから見ても良さそうではあったけど何で諦めるんだ?」


「出場者リストを見たら14歳だったんだ。冒険はかなり危険なこともある。だからいくら強くても厳しいと思ったんだ」


 この世界の成人年齢は15歳。未成年でも冒険者登録はできる。しかしかなり危険なこともある冒険に連れて行きたくないのは全員共通だろう。


「っていう事で今回は諦めようと思うけどリーダーはいいですか?」


「いいぞ。無理に増やして、足手まといをつくりたくはないからな。よし! それじゃあ大会も終わったことだし、早速明後日この町を出て冒険を始めよう」


 こうして、侑、エレン、レイナの冒険が始まるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る