新しい仲間4

 大会当日。開始は10時からなのだが、侑達は、8時には会場に着いていた。


「結構早く来たと思ったけど、もう50人近くいるな。まだまだ来てるから結構な人数出るんだな」


「侑は、武道大会を知らないのか?」


「あまり知らないけど、何で?」


「開始2時間前に50人なんて普通にあることだからな。大抵、武道大会はこれ位の街だと400人以上は出場するんだ。予選は、全員でバトルロワイヤル。そのうち、上の16人がトーナメントにいけるんだ」


「今回は特に賞金が良いからもっと多いと思いますよ」


 2人から武道大会の説明を受ける。ゲームの時でも、武道大会はあったのだが、侑は大会には出ないで、ずっとダンジョンに潜っていたので、大会についてはなにも知らない。


「まあ、とりあえず全員倒せばいいんでしょ」


「倒せばいいけど、殺さないようにな。相手を殺した地点で失格だから」


「分かってる。威力を出しすぎないために特訓までしたからな」


「それなら頼んだぞ。こっちも全力で探してくるから」


「おう!」


「侑さんがトーナメントで試合するときは見に行きますから」


 そうしてここで分かれた3人はそれぞれ、自分の役目を果たすために動き出した。


○大会開始!

 侑は大会が始まる前に出場者について確認していた。


「結構集まったな。400人位とか言ってたけど、少なくとも550人はいそうだ。けど、魔法使いがめっちゃ少ない。まあ強そうなやつはそこまでいないかな。とりあえず予選は逃げまくって、良さそうなやつを援護しとくか」


 結局、出場者は600人にまで増え、予選は150人ずつ行うらしい。全部で4試合やり、リーグごとに上位4人がトーナメントに進出する。そこで、勝ち続ければ優勝だ。


 こうして確認していた20分後に第一試合が始まった。侑は、第三試合に出る。第一試合では、剣士1人と槍使いが1人、斧使いのが2人残った。流石に後衛は皆無だった。第二試合でも後衛は残らず、剣士2人(片方は盾も使っている)と、ナイフ使いが1人、斧使いが1人残った。そして次は侑の番だ。


 特に緊張することもなく、バトルロワイヤルの会場へ歩いて行く侑。会場に着き、予選の戦い方の確認をする。


「できるだけ逃げ回って、仲間に良さそうな人がいたら助けて、トーナメントで最終確認する。やばそうな人がいたら早めに潰す。これで良し!」


 確認が終わり、会場の上に行く。形は縦長の楕円形。そこから出たら失格だ。


 第三試合に出場する人が全員揃い、そろそろ試合が始まる。開始まであと3分のアナウンスが鳴った時、侑は気になる人を見つけた。


「珍しい。こんな大会に女子がいる。下手したら死ぬかもしれないのに」


 周りもそう思っていたようで、「こんな女子がいて大丈夫なのか?」という目で見ていた。

 

「まあ、危険ってことは分かって来てるだろうし、気にしても仕方が無いか。でも、死なないように気は配っとこ」


 気にしても仕方が無いと割り切り、始まる試合に意識を向ける。そして、試合開始までのカウントダウンが始まる。


「皆様お待たせしました! ただいまから第三試合を開始します! スタートまで、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1スタート!」


 スタートの合図と共に、全員一斉に動き出す。基本的に魔法使いは浮きやすいので、侑は真っ先に5人から狙われ、囲まれていた。剣士が3人、斧使いが1人、ナイフ使いが1人。


「うわー、やっぱり来た。面倒くさいな。『アイス・ウォール』」


 自分の周りに氷を出し、全ての攻撃を防ぐ。たじろいだ5人は決定的な隙ができてしまう。そこを侑が追撃する。


「『ウォーター・ボール』」


 殺さないように威力を30%まで下げた水の球を5人に対して放つ。


「「「「「グはぁ!」」」」」


 5人とも雑魚キャラっぽい声を出しながら場外へ飛ばされる。

実は、侑の『アイス・ウォール』は氷の純度が高く、人では確認できない位透明だ。そんなに透明だとなにが起きるか。そう、壁に気付かないのだ。なので、この5人は、見えないものに攻撃を遮られ、訳の分からないうちに魔法で飛ばされたのだ。


 その時、侑の後ろで轟音が響いた。すぐに後ろを向くと、たくさんの人が倒れていた。


「誰がやったんだ? それ以上に、こんなにたくさんの人が倒れたのに、魔法でじゃなくて全員物理攻撃でやられてる」


 物理攻撃ということは、確実にスキルを使って攻撃したのは確かだろう。しかし、このような範囲攻撃のスキルは、とても習得が難しく、珍しい。かなりの実力者だと、侑は確信する。


「それにしても誰なんだ?」


 倒れた人の中で立っているのは1人の女子だけ。


「ま、まさかな……」


 そう、立っていたのは女子1人。この人数を1人で倒していたのだ。

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