新しい仲間3

 ビクトル城の方からレイナと戻った侑は、街で待っていたエレンに無事を伝え、ギルドへ行く。


「討伐終わったので、処理お願いします」


「分かりました。カードを出して下さい」


 受付の人に言われ、カードを出す。


「キングコボルトも討伐したんですか!? キングコボルトは依頼内容には、入っていないですが、ギルドから大物の討伐報酬を追加しておきますね。少しお待ち下さい」


 受付の前でギルド職員を待っていると、レイナとエレンがこちらに来た。


「侑さん、この後どうします? 冒険に行くのは5日後でしょうけど、私達は特に用事はありませんし、せっかくなら一緒に、いろんな依頼受けませんか?侑さんの魔法見たいですし」


「それでもいいよ。けど、その前に考えてる事があるんだ。あ、職員の人来たからこの続きは後で」


「お待たせしました。依頼報酬分の10Sシルバーと、キングコボルトの討伐報酬の22Sシルバー、合わせて32Sシルバーです」


 思っていたより多い報酬額に少し驚きながらも、お金を受け取る。


「ここだけの話、この依頼がもう少しで他のギルドに流されて、ここのギルドの評判が落ちそうだったので、職員みんな助かりました。なので少し報酬額が上乗せされています。とりあえずありがとうございます」


 この報酬額に納得しつつ、感謝の言葉を素直に受け取る侑。その後、近くにある店にレイナ達と行きそこで話すことにした。


「そういえばちゃんと自己紹介してなかったな。僕の名前は侑。

17歳で、魔法使いだ。得意なのは水魔法だからこの杖はほんと助かった。これからよろしく!」


 侑に続いて2人も自己紹介をはじめる。


「私の名前はレイナです。16歳で、弓使いです。一応ナイフも使えます。威力は低いですが、精密射撃は得意です」


「俺の名前はエレンだ。19歳で、グレードソードを使ってる。小回りはきかないが、威力なら魔法使いにも劣らないと思ってる」


 全員の自己紹介が終わったところで本題に入る。


「なあ、考えてる事って何だ?」


「ああ。僕が考えてたのは、戦力増強だ」


「戦力増強ですか!?」


「今でも十分戦えそうだけどな」


「今のうちは戦えるだろうけど、後になってくると多分きつくなる。で、僕は新しい仲間を増やしたいと思う」


「新しい仲間ですか……」


 新しく仲間になって、その日に更に人を増やすと言われると、ほとんどの人がレイナのような反応になるだろう。


「どういうタイプを増やすんだ?」


「中衛タイプの人を増やそうと思ってる。今このチームは、前衛のエレンと後衛の僕とレイナの3人だ。3人の共通する欠点は、攻撃に隙が生まれやすいことだ。だから、中衛タイプの槍か、双剣を使うバランサーがほしいんだ」


「確かに、そこは気になりますね。素速い敵と戦う時は、きつそうですもんね」


 言われてみると気付いたようで、レイナも納得する。ここで、レイナが何かを思いついたのか、発言する。


「チームのコンセプトを作りませんか!? やっぱり、みんな同じ目標というか、そんなものを持っていたほうがいいと思うんです」


「決めてもいいとは思うけど、その辺は冒険しながら決めようよ。でもリーダーだけは決めとこ」


「え、リーダーは侑さんじゃ……」


「いやいや、違うでしょ。僕は元あったチームに誘われただけだし、ずっと一人で戦ってた。だから二人のどっちかになってほしいな」


 侑には友達はいたが、親友と呼べるような人はいなかっだから、ずっと一人で「LAST・BRAVE」をプレイしていた。なので個人での戦いならともかく、チームで戦う事に関しては、レイナやエレンにも劣る。


「そういうことですか。それならエレンがいいと思います。エレンは結構、いろんな人に優しいですし、外見的にもリーダーっぽいから」


「レイナがそういうならエレンがリーダーでいいな」


「え? え!」


「よし、エレンがリーダーになってくれるらしいから、早く新しい仲間を探しに行きますか」


「お~~」


「ちよっ、俺まだ了承して……」


「よし行こう!」


 エレンに反論される前に強引に行動する侑とレイナ。エレンも嫌がってはいなかったので、それでいいのだろう。こうして、新しい仲間探しは始まった。



   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 一日目は、はじめたのが遅かったのもあり、収穫はなし。そして二日目。朝の方はギルドで、個人ソロの、中衛に向いていそうな冒険者を探していた。


 そろそろ街に出て探そうとしたとき、エレンが一枚の紙を持ってきた。


「聞いてくれ! この街の領主が明後日、武道大会を開くらしい。そこで探さないか」


「お、早速リーダーらしい。で、探しに行くだけにするか、自分達も出場するのか。どっちにるする?」


「そのことなんだが、ここにエントリーシートが一枚ある。だから、一人がエントリーして、あとの二人がいろんな試合を見て、良さそうな人を探す」


「一人がエントリーする理由は?」


「もちろん、賞金狙いだ。参加費は10Sシルバーとか言うぼったくりかと思う金額だが、賞金は10Gゴールドだ!」


 10Gゴールドは日本円で1000万円。1万円が1000万円に化けるのだから10Sシルバーでもエントリーする人は、かなり多いだろう。


「1000倍!? 絶対出ないと。それで2位以下は?」


「2位以下は0だ」


「「え……」」


「だから大会には侑に出てもらいたいと思ってるが、いいか?」


「私もそれがいいと思う」


「分かった。僕が出るからしっかり探して来いよ」


「「OK!」」


 こうして侑は、この世界に来て初めて対人戦をすることになったのだった。

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