第4話 望む望まずに関係なく、騒動は向こうからやってくる
【文明の落日】から三年が経った今、俺は今年で24歳になる。
あの日から三年――――――――現在の人類は、僅かな安全圏を確保して、そこで互いに助け合って生活している。
【朝日之宮】は、そうした安全圏の一つ。それも、大規模クランによって運営されている、この日本でも有数のコミュニティの一つだ。
・・・
・・・・・
・・・・・・・
灰色の樹木の短いトンネルを抜けると、そこには人の営みがあった。
右を向けばいくつものテントが群を成していて、左を向けば他とは違う遊牧民のようなテントが数件。
相変わらずの光景を目にすると、どこか安堵に似た感情が胸に広がる。
しかし………以前とは異なり、活気があるとは言い難い。
少し歩きながら周囲を見渡すと、子供の姿が全く見えない。目にする人は大人ばかりで、どこかピリピリとした空気があった。
「何かあったのか………」
ボソリと呟き、俺はこの空気を作り出した元凶を頭の中で思案する。
大きな魔獣の群れの痕跡を近くで見付けたのか。それとも犯罪クランの連中の襲撃があったか………。
いずれも、こんな世界になったからこそ思い浮かぶ考えだ。
しかし、その程度の騒動で【朝日之宮】が臨戦態勢のような状況になるだろうか。
もしかしたら………俺はまたろくでもない事に巻き込まれたのかもしれない。
そう考えると、ため息しか出ない。
間が悪いというか、なんというか。
「おいおいどうした!!そんな辛気臭い顔そして、幸運が逃げちゃうぞ!」
語尾に☆でもつきそうな愉快な声が背後から聞こえた。
俺は振り返りたくない一心で、その声を無視していたのだが・・・うわっ!
「無視は寂しいぞー!レンレン!」
「いきなり背中に飛びつくな!危ないだろうが!」
そう言って、俺は自分の背中に飛びついて来た女―――――
「レンレンなら大丈夫だろうという私の信頼の証さ!」
「そんな風に俺への信頼を示さなくてよろしい………ええい、うっとおしい!さっさと降りろ!」
「ふはははははは!降ろせるものなら降ろしてみろー!」
ビキッ―――俺の額に青筋が浮かび上がる。
「降・り・ろ」
「むう………レンレンはつれないなぁ」
渋々と灯歌が俺の背中から降りる。
「レンレンはやめろ」
「それはやだ」
「…………っはあ。もういい。それで?俺に何か用があるんじゃないのか?」
にやっと笑みを浮かべて、灯歌が俺を見る。
「さっすがレンレン、察しが良い~♪」
俺が睨むと、灯歌はすっと真面目な顔をつくり、モンゴルテントを指察した。
「話は詰所で。レンレンもなんでこんな状態なのか気になるでしょう?」
少し考えて、コクリと頷き、俺は灯歌の後をついていった。
◆◆◆
モンゴルテント―――――詰所の中に入ると、中の人間から一斉に視線を向けらた。別段、動揺することもなく、俺は歩き続ける灯歌の後をついて行く。
視線はすぐに外れたが、約数名、訝しげにこちらを見ている。
俺は目線で灯歌にどうするのか訴えたが、灯歌は俺にウインクするだけでそのまま目的の場所まで歩き続ける。俺は黙ってそれに従い、ついていった。
これから会議でも始めそうな、コの字型に並べられた机の前で、灯歌は止まった。
「さて諸君、まずは紹介しよう。我々の援軍として【朝日之宮】に駆けつけてくれた鏡峰蓮司くんだ」
は?
「(おい、いったいどういう事だよ!?)」
さすがに訳が分からず動揺した俺は、小声で灯歌に説明を求める。
「(後で教えるから、今は合わせてくれレンレン。なーに悪いようにはしないよ♪)」
…………この場で今すぐ怒鳴りたい衝動を抑えて、俺は首肯した。
本当になんなんだ………具なしでも良いから茶漬けが食いたい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます