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「もうっ、冬斗、なにしてるの!!」
お母さんは俺を強く抱きしめ、そう言った。
「お母さん、どうし…っ。」
「冬斗、ごめん、ごめんね。ちゃんと聞いてあげればよかったね。」
「ごめんなさい、お母さん。何も言わないでこんなことしようとして…。」
「怒ってないよ。大丈夫。さ、お家に帰ろ?」
「…うんっ、帰る…!」
「今日はね〜!!お父さんも居るから冬斗の好きな
焼肉にする??」
あ、そっか…そういえばこの日、お父さんが行ってらっしゃいって言ってくれた気がした。
「ん?違うのが良い?」
「ううんっ、嬉しい、ありがとう。お母さん。」
お母さんと久しぶりに並んで帰る。なんだか懐かしい気がした。
どうして、お母さんが居たんだろう?まぁ、今は考えなくてもいいかな。
「ただいま。」
「冬斗、おかえり。」
優しい笑顔でお父さんが迎えてくれた。なんだかその顔を見ると泣きそうになってしまう。
「冬斗、なにがあったかは分からないけど頑張ったな。」
泣きそうな俺を優しく、力強く抱きしめてくれた。
「おとうさんっ…おれっ、おれっ、おとうさんみたいになるって、つよくなるっていったのにっ、にげようとしてっ、ごめんなさいっ、よわくて、ごめんなさいっ………!!」
お父さんは優しい声で
「…冬斗は弱くないよ。1人で全部全部抱えて辛かったよな。気付いてやれなくてごめん。冬斗は強いよ。かっこいいよ。誰も傷付けないように1人で戦ったんだもんな。偉いぞ、冬斗。」
お父さんに抱きしめられながら、今までの辛かった事、苦しかった事、吐き出したいこと、全部言った。声を上げて泣いた。
「……お父さん、ありがとう。」
俺が落ち着いた頃
「さぁ〜、焼く??」
ってお母さんがニコニコしていた。
「俺、焼くの上手いんだから!」
「その焼き方教えたの俺だし、やっぱり俺の勝ちでしょ!」
「お父さんよりも上手いし!ね?お母さん!」
「あははっ、ん〜、どっちも上手いよ!」
「えぇ〜!!」
「2人とも息ぴったり!!」
久しぶりの家でのご飯、笑顔で溢れていた。帰ってきて後悔はしていない。むしろ言えてこまくんに感謝している。
俺がした選択はもちろん、家族と居ること。家族を守れる強いひとになりたい。
るきや、あいり、陽向くん、陽菜乃ちゃん…こまくん。みんなと過ごした時間も楽しかった。大好きだった。だけど、家族と居たい。いじめられても、俺は大丈夫。もう逃げたりしない。
みんなと過ごした日々の記憶が無くなるのは寂しいけど……。
また、きっと会えると思うから。その時まで、みんなバイバイ、ありがとね、大好きだよ。
…生きたい。
そう心の中で呟いた。
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