第8話 満員プールの一幕(4)

「……ツッコミどころが満載ではあるのだけれど、それについては言わない方が良いのかしら……??」

「お姉ちゃん……それは言わぬが花というものだと思うよ……」


 嘉神シスターズは何だか物言いたげな表情を浮かべているが、それはそれ。


「一人暮らしって言うけれど……実際高校生で一人暮らしって大変じゃないか? 下宿って訳でも……なさそうだし」

「一応、家事は出来ますよ。炊事洗濯掃除に犬の散歩まで」


 ペット可物件に棲まわれているようで。


「犬……? どういう犬を飼っているのかしら……?」


 あ、可愛い物好きなひかりが食いついてきた。

 まあ、女の子は可愛い物好きってのは定番だよな、割と。


「コーギーだよー。見る?」


 ひょいっと何処かからスマホを取り出すエルザさん。

 ……胸の谷間から出したような気がするけれど、それは全力でスルーする。全力で。


「へえ。可愛いわねえ。……どういう名前なの?」

「マリアって名前なの! 可愛いでしょう?」

「女の子?」


 男の子にマリアって付けるか、普通。

 あ、でもそういう漫画昔あったようななかったような。


「へえ……何というか日本人じゃあんまり付けなさそうな名前ではあるけれど……」


 いや、その考えはどうかと思うけれど。


「でも、可愛ければOKです」


 後ろでのぞみがそんなこと言っていた。何か聞き覚えあるんだけれどな、そのネタ。


「……で、どうしてここに?」

「いやあ、やっぱり夏と言ったらプールじゃないかな、って思って。で、この街には大きなプールがあるって聞いたから、そこに行ってみよう! って話になったの。あ、これは自分一人で会議をやっただけだから、誰かと来たって訳じゃないよ」

「悲しくなるからその補足は辞めてくれ」

「あ、そう? で、ここにやって来た訳だけれど……いやー、何をすれば良いのかさっぱり分からないね! 流れるプールとか、ジェットコースターとか、スクリュードライバーとかあるし」


 最後はおかしいし、何なら二個目のジェットコースターもおかしい気がする。


「流れるプールに目を付けるとは流石ね……」


 で、ひかりもひかりで何か玄人感出しているし。


「――素人は黙っとれ――」

「それ、元ネタはイメージしているだけじゃなかった?」


 ああ、もう何だろう。

 嘉神シスターズってこんなにネタ要素てんこ盛りだったか?

 色々言っておきたいところはあったのだけれど、それよりも今はプールを楽しんだ方が良い――なんて思う僕は、まだまだ子供の考えだったのかもしれなかった。



   ◇◇◇



 バスで帰った時も、エルザは一緒。結局、駅前まで同じだった。僕達はそのまま学校の近くまでバスで帰って、そのまま帰宅した。

 食事を取って、風呂に入って、自室に戻ったら夜八時。テレビでも見ようか、積み上げているゲームでもやろうか、はたまた真面目に夏休みの宿題を片付けようか――。そんなことを考えていた矢先、スマートフォンがぶるぶる震えた。

 画面に表示されていた相手は――あの神、ガラムドであった。


「……もしもし?」

『何で「もしもし」に疑問符を付けているのかということについては突っ込まないでおきましょう。プールは如何でしたか? 楽しかったですか? 楽しかったですよね?』


 その言葉からして、プールの様子を監視していたんですか。

 ってか、楽しいかどうか決めつけないでくれ。まあ、実際楽しかったんだけれど。

 

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