第15話 焼きミカンは甘さが増すみたいですよ? 簡単なので機会があったら試してみるのもいいかもです
「あっ、長電話しちゃいました……ごめんなさい。そろそろ切ります」
「いや、たぶん、気にしなくても大丈夫だけど」
「? えっと、ありがとうございました。それでは、また」
瀬川さんとの通話が切れると同時、再びチャイムが鳴った。
「鷹山蛍ー、はやくでてきなさーい! ここは包囲されているー!」
「くそっ! なんでここがバレたんだ!?」
「無駄な抵抗はやめ、人質を解放しろ!」
「く、くそぉぉぉ!!」
「あっ、蛍来たよー」
扉を開けた瞬間普段に普通に戻る。もう少し開けない方がよかったかも? でも外寒いしね。
「今日は何の用?」
「用はないけど?」
「帰りなさい」
「帰ってきたけど?」
「あなたの家はここじゃない」
「ここは私の家なはず……あれ、わたしは……? お前は誰だ!」
「地縛霊かな?」
「死んでも一緒だね」
「えー、こんな部屋に留まってても飽きそうじゃない?」
「飽きたら別のとこ行けばいいじゃん」
「自由に動ける地縛霊とは……?」
「あっ、これみかん」
「香織自分の家で食べないの?」
「自分の分は置いてきたから大丈夫。少なくなってたから補充」
「ではありがたく」
親から送られてきていたミカン箱の隣においておく。
「ふぅ~」
すぐにこたつに入ってとろけていた。
「あ~、今日オムライスだよー」
「あ、今日も作ってくれるんだ」
「そう、家事もすべて私の仕事。夫はただテレビを見て寝てるだけ……」
「手伝うよ?」
「じゃま」
「オムライスくらいできるよ!?」
「あ、そうなの?」
「焼くだけだからね」
「……でも、私がやるから何もしないでね」
「じゃあ何のアピールだったの?」
「え、良妻アピールだけど」
「できたお嫁さんねぇ~」
「あなたのですけどね」
「今日の課題終わらせようか」
「ふーん、そう流すんだ」
「終わらせないの?」
「終わらせますー」
大した量ではない。今日の課題は数学の教科書の例題を解くだけだ。
「なんか学年あがってからいきなり難しくなったよね」
「そう?」
「そっか、蛍はあれか。できる系のこだった」
「先生の説明分かりやすいと思うけど」
「わかる人にはわからない人の気持ちはわからないんだよ……しくしく」
「おーよしよし」
「頭撫でないの?」
「なんで?」
「……少女漫画を毎日読めばわかるんじゃない?」
***
「おわり! やっと休める~」
「初めて30分くらいしか経ってないけどね」
「うるさい口にはみかんだ!」
「ありがとうございます」
「今更だけどこんなにみかん食べていいのかな?」
「体黄色くなるとか言わない?」
「そうなの?」
「どこで聞いたんだっけ?」
「……んー、調べたけど大丈夫そう? あ、焼きミカンが美味しいって書いてある」
「そんなのあるんだ? 焼きリンゴとかなら聞いたことあるけど」
「ちょっと試してみようか」
「夕飯のあとでね」
「そういえば蛍ってさー」
「うん」
「家で勉強ばっかしてるって言ってたけど、私に合わせて勉強やめていいの?」
「もともと夜にやってたからあんまり変わってないけど」
「私が勉強するのに付き合うから、もうちょっとやろう」
「別に気にしなくていいのに」
「ほら、勉強できて悪いことないし。蛍に教えてもらえるなら次の学年一位は私かなー」
「取れたらお祝いしようか」
「えー、順位あがったらにしよー?」
「いいけどね」
「蛍も教えることで勉強になるでしょ?」
「そう聞くよね」
「じゃ、がんばろー!」
「おー!」
***
「今度こそ終わり! 私ご飯作るから」
「手伝うよ?」
「ちっちっち、家庭教師代ですよ先生」
「代金はもう貰っておるからのぉ」
「んー、じゃあ、はい」
「ん?」
鍵を渡された。
「この前思い出したんだけど、私の家にゲーム機あるんだよね。しばらくやってなかったけど、こっちに持ってきてくれない?」
「おい娘さん。簡単に自分の家の鍵を男に渡すんじゃないよ」
「下着はタンスの上から2段目だよ?」
「そういうこと言わない」
「え、あー……靴下はその2つ下だけど」
「そういうことじゃないけど!?」
「だって、不公平じゃない? 私はこっちにちょくちょく来てるのに蛍は私の方来たことないって」
「いいです大丈夫です」
「テレビの下にあるはずだから。ゲームはダウンロードしてるからカセットとかはないよ」
「少し待ちなさい」
「下着とか見てもいいけど、その時は感想言ってもらうからね」
「勘弁してくだせえ……」
「もー、じゃあ、材料出しておいて」
「イエス、マム!」
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