第11話 裏
「……」
今、私は一組の男女を見てる。
香織と鷹山。
今日デートをすると言っていたから尾行するつもりだ。
二人はお隣さん同士、ということを知ったのは今日の朝。
香織の部屋を少し離れて見ていたら、香織の家の隣から二人が出てきたのは驚いた。鷹山が鍵を閉めていたから、あっちが鷹山の家。覚えておいてあげよう。
香織もめっちゃ気合入ってるし。
電車に乗った。っているか、香織くっつき過ぎじゃない?
私はバレないように少し離れたところに座ったら、小学生のガキ(たぶん)が隣に座ってきたし。じっとしとけ!
二人を追って電車を降りる。向かった先は水族館らしい。まあ、ベタね。
二人は本当にただのカップルのようだった。
二人で写真を撮ったり、食べさせ合いをしたり。くっつきあいながら。仲睦まじく。
……
***
水族館から出て、電車に乗った。このまま帰ると思って一応ついていけば、スーパーで買い物をしていた。鷹山がカートを押して、香織が商品を見比べてかごに入れている。まるで……
そして、デパートから出ても、エコバッグを二人で持っている。当然、距離も近くて。そのまま、同じ家に帰っていく。
……私、何やってんだろ?
こんなストーカーみたいなことして。結局何にもできないくせに。
風が吹いた。厚着はしているけど、寒い。
帰ろう。
もう結構暗い。少し急いで帰ろう。
手も寒くてこすり合わせた後、温めようと思ったら白い息が出た。
もう冬か。
家について、電気をつける。何か食べる? でも、お腹もすいてないし……
一応テレビをつけても、なんにも面白くない。なんか、あれだ。早く寝よう。
シャワーを浴びて、髪を乾かして、歯磨きして、ベッドに倒れこむ。
今日は寝る。
……目を閉じていると、今日のことを考えてしまう。思い出してしまう。
あの二人。
ま、自業自得だし。受け身だった私が悪い。
そう。そう……
「くっそ……」
くだらないくだらない。勝手にあふれる涙がうざったい。
こんなんじゃ、寝れない。
てか、香織も香織じゃん。明らかに私が好きってわかってるでしょ?
普通遠慮しない? なんで自分がデートしてんの?
「う゛ぅ……」
こんなこと考えてるからダメなのか、私は。
もういい。終わったんだから。私は、終わった。はいはい、終わり終わり。
……これが駄目なんだろうが。
諦めない、絶対に。こう考えるべきなんだろ。
「まだ、まだ終わってない。終わってない」
自己暗示か、これ。案外馬鹿になんないじゃん。
私は単純なんだから、頭いいふりして取り繕うとする方がおかしいんだ。もっと早く気づけよ。
「お腹へった」
ご飯を食べよう。あと、お風呂に入りなおそう。
明日からなんて結局やらないみたいだけど、明日から。
絶対おとす。
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