第10話 告白……忘れてないよね……?

 家に戻ってきた。


「今から作るから少し待っててね」

「手伝う? 焼くしかできないけど」

「座ってていいから」

「はい」

「そういうば、告白だけど」

「ぐふっ」


 いきなりのことで息が詰まってしまう。


「なに、忘れてたの?」

「い、いきなり!?」

「いきなりじゃないでしょ。昨日から言ってたじゃん」

「そ、そうだけど……」

「忘れてたのはひどくない?」

「ごめん」

「まあ、私もさっき思い出したんだけど」

「おい」

「だって、今日楽しかったでしょ?」

「まあ、楽しかったけど」

「でさ、どうしようかなって」


 ん?


「ほら、付き合わなくてもここまで楽しめるなら別に付き合わなくてもいいかなって」

「そ、そう?」

「だって、今私が告白したら、蛍、断るでしょ?」

「……」

「わかるよ、さすがに。まあ、蛍に意識させたってのは進歩だし。だから、受け入れてくれるようになるまで告白は待つよ」


 そういいながら何かを切っていた。


「でも、今、受け入れてくれるならすぐ告るけど」

「え」

「冗談。よく考えたら、振った相手が近くに住んでるって気まずくなるかなって」

「なんていうか」

「んー?」

「俺に都合よくない?」

「え、刺されたいの?」

「怖いから包丁向けないでくれる!?」


 冗談だと笑うにしても包丁を置いてからにしてほしい。


「まだ告白してないんだから、私に気を使って接するのはなしだからね」

「それは……努力します」

「努力じゃなくて、ちゃんとして。客観的に見たら蛍は告られてもいないのに振って自分で気まずくなってる人だからね」

「客観的とは?」

「まあ、とりあえず」


 こちらを振り返った香織は今日一番の笑顔をしていた。


「私がヤンデレになる前に好きになってね」

「脅されてる!?」

「じゃあ、できたから食べよ?」


 運ぶのを手伝いながら、香織の方を見てしまう。


「何、好きになった?」

「なって、……」


 なってない、って言うのは最低では?


「私、料理できるよ」

「うん、おいしそう」

「洗濯できるよ」

「そうか」

「綺麗好きだよ」

「そ、そうなんだ」

「結婚する?」

「しない」

「ひどくない?」


 なんだこの会話。


「さ、冷める前に食べよ」

「ねえ、ちょっと言動おかしくない?」

「え、テンション上げないと私病むよ?」

「ご自由になさってください」






「そういえばさー」


 夕飯を食べ終え二人で休んでいると、香織が口を開いた。


「こたつ出すのはやくない?」

「そう?」

「だってまだ10月でしょ? 冬になってから出すもんじゃないの?」

「え、こたつって気持ちよくない?」

「いや、わかるけど……じゃあ、このミカンは?」

「え、香織はアイス派?」

「もういいや。みかんもいいよね~」


 みかんを食べていると足に何か当たった。


「……」

「……」


 また当たった。というより足で撫でられている。


「香織」

「いちゃいちゃって感じ」


 そう言ってほほ笑む香織にどう反応すればいいのか分からず、口を閉ざした。














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