第3話 雄太のチャンス!?
「おはよう、ってやっぱり落ち込んでるなあ……」
翌日、雄太は大学に来て、同じ講義を取っている茉穂に話しかけた。
ちなみに、有咲と竣は別の講義を取っているため、同じ部屋にはいない。
「おはよう、雄太……」
茉穂が声を返してくれたことに少し嬉しくなりながら、雄太は茉穂の隣の席に座った。
「竣のこと?」
落ち込んでいる茉穂に端的に、しかし直接的に聞くと、図星だったようで茉穂の身体が震えた。
そしてその事でなのか、茉穂の目が潤みだしてしまった。
「うわ、ちょ、ごめん! 大丈夫?」
雄太が焦って声を掛けるが、反応も無くハラハラと涙を零すので、雄太は更に焦ってしまった。
焦りながらも、雄太は茉穂の流す涙に綺麗だ、と見惚れていた。
そして、自分にはこんな綺麗な涙は流せないだろう、とも。
それからは、茉穂の涙が中々止まらず、授業もまだ始まっていなかったので、同じ講義を受けている友人に昼飯を奢る代わりに授業の出席の代返とノートを頼み、茉穂の手を掴んで講義室から抜け出した。
それから雄太は、茉穂を連れて人気のない校舎の陰になっている場所に連れてきた。
そしてひとまずそこにあるベンチに茉穂を座らせてから急いで自販機へと走っていき、茉穂の好きなミルクティーを買って戻った。
茉穂の元に戻ってミルクティーを渡すと、少し歩いて涙が落ち着いたのか、茉穂は目が赤くなってはいたものの、泣き止んではいた。
そのことにとりあえずの安心をして雄太も茉穂の隣に座った。
「どう? 落ち着いた?」
茉穂にそう問いかけると、少しは落ち着いていたようで、返事をしてくれた。
「うん、ありがと……それに授業受けられなくなっちゃってごめんね」
「いや、大丈夫だよ。代返頼んでるし、今のコマの授業の先生は緩いからテストさえとれば単位くれる人だから、そんなことより茉穂の方が大事だったよ」
「ふふ、ありがと」
そう言って、慰めるために雄太が言っているのだと勘違いしている茉穂に、雄太は、
(慰めなんかじゃなく、よっぽど茉穂と居たいだけなんだけどな……)
そんなことを考えながら、口を開いた。
「それで、また喧嘩したんだって?」
そう聞くと、やはり茉穂はまた落ち込んでしまって、俯いてしまった。
(ああ……落ち込ませたいわけじゃないのに……俺なら落ち込ませることなく付き合ってられるのに……)
そう思いながら、茉穂が口を開くのを待っていた。
「……昨日、竣くんと喧嘩したんだけどね?」
「うん」(知ってるけど)
「竣くんはもう私のことどうでもよくなっちゃったのかなって思っちゃって、そしたらなんか我慢できなくて、竣くんに酷いこと言っちゃったし、プライベートぐらいは自由にさせろって言われちゃったの」
「うん」(有咲から聞いたことと同じだな)
「それで泣いて竣くんとはそこでサヨナラしてきたんだけど……それから竣くんの言ったこと考えてたら、プライベートは自由にしたいってことは、私との関係はプライベートじゃないのかな、って、オフィシャルな関係なのかなって思ったら、泣けてきちゃって……」
「……うん?」
「オフィシャルな関係って何だろう、竣くんは義務で私と付き合ってたのかなって思ったら、もう別れた方がいいかなってついさっき別れよって連絡して、全部ブロックして着信拒否したんだけど」
「……ちょっと待って、別れたの?」
「……うん、私から一方的に、だけど……」
その言葉を聞いて、雄太は少し先が明るくなったように感じた。
(あれ、もしかして今って絶好のチャンスというやつでは? 今こそ慰めて漬け込むべきでは?)
一瞬でそう考えた雄太は、茉穂の方に向き直った。
そして口を開こうとしたその時、ポケットに入れていたスマホが振動していたことに気が付いた。
急ぎのことだったら仕方ないが、よっぽど自分にとってはこっちのほうが大事だと無視することにしたが、茉穂も雄太のスマホの着信に気付いたようで、
「雄太、スマホなってるよ? 出なくていいの?」
そう言われた。
流石に茉穂にそう言われては電話を取らざるを得ず、スマホをポケットから出した。
すると、取り出したタイミングでちょうど切れたようで、振動が収まった。
ひとまず誰からの着信かだけでも見ようとして、雄太は目を見開いた。
そこには、雄太は気が付かなかったが、不在着信がこの短時間で30回を超えるような状況になっていたからだった。
その内訳は、有咲からで、一分と間を置かずに着信をかけてきていた。
流石に何かあったのかと、連絡を取ろうとしたその時、また電話がかかってきた。
今回も有咲からで、とりあえず電話に出て少し文句を言ってやろうと口を開こうとすると、いきなり有咲がまくし立ててきた。
『雄太! 今すぐ来て! 竣が飛び降りようとしてるの!』
「……はぁ!?」
有咲にそう言われて、雄太は一瞬何を言っているのか分からなくてフリーズしてしまったが、状況が読めてすぐに驚いた声を上げた。
『止めようとはしてるけど、ちょっと私だけじゃ厳しいから早く来て!』
その言葉を聞いて、茉穂にも聞こえていたのか青ざめた顔をして立っていた。
そのまま、雄太は茉穂を引っ張りながら、竣と有咲がいるという場所へと走っていった。
片思い&片思いvs両想い かんた @rinkan
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