第2話 出会い
俺と竣の出会いは高校の時だった。
高校入学したばかりで、友人も少なかったころ、真っ先に声をかけてきたのが竣だった。
最初は普通に仲良く、たまに二人で遊びに行く程度には仲良く過ごしていた。
その頃はまだ竣と茉穂は付き合っているわけでもなく、特に接点があったわけでもなかったが、俺はその頃から茉穂の存在を知っていた。
むしろ、竣が茉穂のことを気になる前から茉穂のことを好きになっていた。
有咲と茉穂も似たようなことになっていたようで、有咲の気持ちに雄太が気付いたのか、それとも雄太の気持ちに有咲が気付いたのか、どちらが先だったかはもう互いに覚えていないが、どちらからともなしに誘うようになり、すぐに四人でよく遊ぶようになっていた。
周りからも、あの四人はとても仲がいいとみられるようになり、たまにそれぞれの友人がそれぞれに話しかけに来る以外では関わりに来るものもいなくなっていた。
雄太と有咲からしたら、自分の思い人に余計な虫が近寄ってくることも無くなって安心していたころだった。
それは、晴天の霹靂という言葉がまさに、と言えるようなことだった。
夏休みのある日、いつも通り四人で集まって遊びに行こうとしていた時だった。
幼馴染な雄太と有咲が一緒に待ち合わせ場所に向かうと、いつもよりもやけに仲良さげに話している竣と茉穂の姿があった。
この時点で雄太と有咲は嫌なものを感じていたが、とにかく二人と合流しようと二人の元へと向かっていた。
そして、竣達もこちらに気付いたようでこちらに向かってきて合流した時に、何かを言いだそうとする竣と茉穂を見て、雄太と有咲は何かを察していた。
そのおかげなのか、二人が付き合い始めたということを報告されたときも、自分でも不思議なぐらいに落ち着いていられた。
解散した後には荒れるに荒れたが……。
もちろん祝福する気持ちは雄太と有咲にもあった。
しかし、自分の好きな人を盗られたという恨みと、もっと早く動かなかった自分に対しての憤りから、素直に祝福することは出来なかった。
ちょうど夏休みで、それから一週間後の夏祭りまでは予定は入っていなかったので、雄太と有咲は二人でずっと泣いていた。
学校が無かったことは本当に幸いだった。
もし学校があったら、泣き腫らして更に寝不足でとても人には見せられない顔を、人の恋人になってしまっているとはいえ、自分の思い人に晒すことになってしまうのだから。
そして、泣き続けて一週間が過ぎ夏祭りの前日になって、明日は夏祭りなのだから、こんな顔では会えないと思い、ひとまず顔をもとに戻そうとしている時だった。
雄太には竣から、有咲には茉穂から、それぞれにせっかく恋人になれて初めての夏祭りなのだから、二人でデートにしたい、という内容のメールが来た。
そのメールを見て、雄太と有咲はとても悲しくなったが、恋人になって幸せそうにしているところに入ってもむなしくなると思い、泣く泣く承諾して、また泣いた。
そうして夏休みが終わり、また学校では四人で集まり昼ご飯を食べたり、空き時間にはいろいろなことを話したりしていた。
ある日、雄太は茉穂に呼び出された。
竣には内緒で、と言われて、誰にも言わずに茉穂が待っている部室棟に行くと、茉穂が既に待っていた。
雄太は近付き、何の話なのか聞こうとすると、雄太が口を開く前に茉穂が口を開いた。
「雄太君に相談があるんだけど……」
そう言って話し出したのは、竣が最近別の女の子とよく話していて、なんだかもやもやしていてどうしたらいいのか、ということだった。
「男の子って、彼女いても他の女の子と仲良くしたいって思うものなの? 彼女がいるんだし、他の女の子とあんなに仲良さそうに話してるの見たくない……」
最初は、もしかしてこれは自分をアピールするチャンスなのでは!? と思った雄太だったが、茉穂の中には自分は居ない、竣のことしかなくて、そのことで悲しそうな顔をしているのが見ていられなくて、つい口を出してしまった。
「茉穂は、とても魅力的な女の子だから、竣もきっと恥ずかしくなっちゃってるだけだよ。試しに悩んでることを話してみなよ、きっと甘えられたって喜んで話を聞いてくれると思うよ」
雄太がそう言うと、茉穂も嬉しそうにして、早速話してくる、と駆け出して行ってしまった。
その後ろ姿を見ながら、雄太は徐々に脱力していき、その場にうずくまってしまった。
「なんで俺は敵に塩を送るような真似を……」
「ほんとだよ……」
「!?」
いきなり声をかけられて、身体を跳ねさせて驚いていると、そこには有咲が立っていた。
「あそこで雄太が茉穂を手に入れてれば、私はそのまま竣君とくっつきに行ったのに……」
「そうは言ってもさぁ……例え一時期であっても、それで茉穂が悲しむ姿とか見たくないじゃん……有咲も、茉穂と別れて落ち込んでる竣を見たいか?」
「うっ……それは見たくないけど……」
「だろう? ……だから、二人が互いに未練も無く別れて、そこで俺たちが割って入るしかないんだよ……」
「そうだね……なんて難易度の高い……」
そう二人で話して、落ち込み、二人はそれから共闘しようという協力関係になることにしたのだ。
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