第6話

 志々見しじみ九愛ここあは酩酊している!


 イケメン常務がお酌上手だったからだ。


 私が寝てる間に、雑務は班長が全部やってくれました。

 途中で殺人事件が起きたりして大変だったらしい。


「もっと水を飲め、ほら」


しゃけひょこ寄越


「バカタレ」


 私は班長の肩に支えられて、ビルの駐車場を進んだ。


 怪我人を介抱しているワゴンの後ろ、そのラゲッジに座らされた。


「ちょっと報告してくる。座ってろよ?」


ふぁい」


 私は頷こうとしたが、頭を下げると、もう上げられなかった。


 班長の革靴が、踵を返して遠ざかっていくのだけが確認できたのだった。


「腹減っ


 豚骨ラーメン……

 酒によって酸性に傾いた肉体が、アルカリ性の食品を欲している。


 頭を抱えながら立ち上がり、どうにかこうにか、ブソコープの敷地一帯を抜けた。


 公園があったので、中のベンチに座って一休み。


 帰ってシャワー浴びてベッドにインしたい。

 いや、その前にラーメンか。


 顔を上げると、前をゆっくり横切ろうとする人影に気がついた。


 街灯に照らされているが、羽織っているボロ布の奥にある表情カオはわからない。


 枯れ木のような手だ。

 それで掴んでいる麻袋のようなものを、ずるずる引きずっていた。


 映画の撮影とかかな?

 めっちゃ重そう。


 人影がちょうど目の前にやってきたので、「お兄ひゃん、手伝おっか?」と気さくに声をかけてみた。


 が立ち止まった。

 体は真横のまま、首を回してこちらを向く。

 赤茶けた異形の顔だ。

 真っ暗な眼窩の底に、仄暗い赤の光。


 骨の折れるような音とともに、ボロ布がはためいた。


 鎌のように鋭く変形した腕が、私に飛び込んできたのだった。


「うわァァアアアーーーーーッ!」

 

 腹を貫かれ、私は死んだ。

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