第5話
山に逃げ込むな! と文句を垂れても山狩りの任務から外されるわけでは無かった。
もー、最悪。
虫除けしたのに三箇所も蚊に噛まれたし。
「仲間の供述では、この辺りに死体を埋めたらしいが」
班長はスマホで地図と現在地を確認しながら、周囲を念入りに調査している。
私は虫やら枝やらと格闘しててそれどころじゃない。
飛び退いたりするせいで、どんどん移動してしまう。
「バカタレ、戻ってこい!」
いつの間にかはぐれそうになっていたが、声の届く範囲に居て安堵する。
落ち着いて周囲を見ると、洞窟があった。
二人くらいなら並んで入れそうだ。
報告しなくては!
「ハンチョ、見つけた!」
「何をだ」
「洞窟!」
「ちょっと待ってろ。すぐ行く」
「ね! 怪しいでしょ?」
「なるほど。だが、人の入った形跡は見当たらないな。後回しだ」
「え〜。私は調べるもん!」
洞穴の入り口に立ち、スマホのライトを発光させた。
それでも気休めにしかならないくらい真っ暗だ。
「待て、入るな。なんか嫌な予感がする」
班長は暗くて狭いところが嫌いなのだろうか。
妙にビビっている。
「まさか〜」
中に一歩入るだけで気温が三度くらい下がったように感じた。
足元を照らしながら、慎重に進んでいく。
だんだん狭くなってきた。
さらに奥へ進もうとした時、右足が動かないことに気が付く。
「え?」
足元を照らすと、赤茶の小枝のようなものが巻きついていた。
それは、壁の下の方にある、横穴から伸びてきている。
「なにこれ!?」
振り解こうと引っ掻いているうちに、左足まで絡めとられてしまう。
「うわァァアアアーーーーーッ!」
何かに引き摺り込まれ、私は死んだ。
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