第3話


 ちゃちゃつぼ


 ちゃつぼ


 ちゃつぼにゃ


 ふたがない


 そこをとって


 ふたにしろ




 何者かからの手紙を睨みつけながら、班長がうんうん唸っている。


 難しく考えすぎだと思うんだよね。


 一人目は、かごめかごめ。鳥籠が腹に刺さって死んだ。


 二人目は、ゆびきりげんまん。針を飲まされて死んでいる。


 どう考えても私には、犯人がわらべ歌をなぞって殺しているだけにしか見えなかった。


「茶壺を探そな、ここあちゃん。今回の凶器や」

 香山さんが言いながら、私のお尻をスワイプしてきた。


 彼の意見には同意だが、その手は弾く。


「さすが香山さん! 先回りして回収。完! だね!」


「バカタレが。事態がややこしくなる。大人しくしてろ」


 班長の小言ごときで、大人しくしていられる私じゃない。

 

 運珍館の外に出、私は1時間くらい歩き回った。


 中庭や外の敷地は広く、手入れの行き届いていないエリアもある。


 蔵を見つけた。

 辺りは木々が生い茂っていて、出入り口に繋がる道もない。

 全く使われていないらしい。

 錆び付いた引き戸だ。

 雑草を踏みながら、扉に手をかけてみる。


 見た目ほど重くなく、するっと開く。


 中は異様に涼し、いや、寒かった。


 スマホで照らして辺りを見ると、二人、仰向けに寝かされている。


 駆け寄って首元を触ってみる。

 脈はなく、冷たい。


「き、金閣寺さんと、佐藤さん……」


 二つの死体。


 瞬間、全ての謎が一本の糸で繋がった。


 


 わらべ歌は凶器を探させるため。

 すなわち我々をばらけさせるためのミスディレクション。

 そして、凶器を探すことを提案した人物は……


 は、早く、班長に知らせないと……!


「お、ここあちゃんや。どないしたん?」


 振り向くと、香山さんがいた。

 表情を確かめる間も無かった。


「うわァァアアアーーーーーッ!」


 口封じに殴打され、私は死んだ。

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