長い数日の始まり2。
ーーその日の放課後、またもや鋭く痺れるような衝撃が全身に強く駆け巡った。
「うぐぅぅぅ」
この衝撃はもう三度目になるのだが、全く慣れない。そもそもこれは何なのだろうか……。そろそろ心配になってきた……。
何かの病でないことを祈るしかない。だがこれも三度目。流石に不安は募っている。
そして目の前には、コンビニエンスストアがある。何故かこのコンビニに寄らなくてはならない。そんな強い衝動に僕は支配されている。
とりあえず外から中を覗くと、レジの所で男と店員が揉めているようだった。
男の方は黒い覆面を被っており、店員にナイフのようなものを突きつけている。
強盗!? やばい……け、警察に!?
ーーと思った瞬間、店内の奥の陳列棚の陰に1、人の女子高生が見える。
何とそこには二階堂さんが頭を抱えてうずくまっていた。
‥‥二階堂さん!?
見たところ、強盗と思われる男にはまだ気づかれていないように見える。
しかし、気づかれるのも時間の問題だろう……。
奥で震えている彼女を見て、僕は胸が痛くなる。何かできる事はないのか……。
まだ外にいる周りの人たちは、中の異変には気付いていないように見える
中では店員が、男の差し出したカバンにレジのお金を詰めている所。
もしかして、このまま二階堂さんはあそこに隠れていれば大丈夫なんじゃないだろうか?
ーーそう思った時、突然パトカーがやってきた。そして、あっという間にこのコンビニエンスストアを、複数のパトカーが取り囲んだ。
そして強盗と思われる男が、外のパトカーに気を取られてるうちに、目の前にいた店員が隙を見てか、お店の外から出てきた。
見たところ店内には強盗の男しか居ないように見えない。その為、警察が一気に店内になだれ込んでいく。
「うわあ!」
入り口の近くにいた僕はそれに巻き込まれ店内に押し流されてしまう。
強盗と思われる男が奥へ逃げようとした時、僕の恐れていた事態が起きてしまった。
‥‥二階堂さん!?
商品が陳列されている棚の陰に隠れていた、二階堂さんが男に気づかれてしまったのだ。
当然、男は二階堂さんを人質に取り警察を牽制する。
「この女の子の安全を考えるならこのお店から全員出て行け!!」
女子高生を人質に取られた警察たちは、あえなくお店の外まで引き返しを止む無くされた。
ーーしかし、ここで一つ問題が起きてしまった。
そう。僕はお店を出るタイミングを失い、犯人の死角になるところで、隠れざるを得ない状況になってしまっていた。
警察に押し流された後。巻き込まれないように陳列棚の陰に隠れていたら、今のような展開になってしまったのだ。
これは最悪だ……。
外で見ていた時では計り知れない恐怖が襲いかかってくる。
二階堂さんはこんな恐怖とたたかっていたのか……。
店内では二階堂さんの泣き声と犯人の声だけが響く。
「泣くんじゃねえ!! 黙ってろ!! くっ……さっさと金を奪って逃げるはずだったのに……」
外には警察がこちらを取り囲んで居るのが見える。
警察は、僕が中に居ることに気づいて居るのかな……?
犯人の男は二階堂さんの、すぐそばに座って居るため警察は手を出せないでいる。
そしておそらく、今犯人の一番近くにいるのは僕……。
ダッシュで出口に逃げれば、逃げ切れるかもしれない。でも、二階堂さんの恐怖がわかるからには、そんなことはいくら僕でも出来やしない……。
あの刃物さえなければ……。
僕は息を殺し、心臓の高鳴りを抑える。足が震えるのを両手で必死に押さえる。
恐怖でどうにかなりそうだ……。
でも外にはたくさんの警察官の方がいる。一瞬でも隙を作れればなんとかなるかもしれない……。
ーーその瞬間、外にいた1人の警察官と目が合う。
目があった時の自分の顔を鏡で見たら、きっと嬉しそうな顔だったに違いない。それくらいに、僕は少しの安堵を覚えた。
その警察官は何やら僕の先に向かって指を指し、ジェスチャーを送っているように見える。
なんだろうか……。
振り向くとそこには、黒い棒のようなものが落ちていた。
警棒……?
さっきの突入時に、誰か警官が落としたのだろうか?
その棒を僕は拾う。外にいる警察官たちは僕の存在に気づいている。それならやはり、一瞬でも隙を作れれば……!
僕は棚の陰からレジの中に居る男にゆっくりと近づいていく
よし、気づかれてない……!
その距離はおそらく、わずか3.4メートルくらいだろう。
だが、犯人の男のそばには二階堂さんが座っていて、中々タイミングが訪れない……。
その時、外からメガホンで大きな声が聞こえた。
「大人しく出てこい!! もう完全に包囲されてるぞ!!」
こんな事をまさか、現実で聞くことになるとは……。ドラマなどで見ていた展開に僕が巻き込まれるとは……。
その瞬間に犯人の男の視線が外に向いたのを僕は見逃さなかった。
ーーそう考えるよりも先に、僕の身体は動いていた。
「うわああああああ!!」
突然の大声に驚いたのか、男は完全に動きが止まっていた。
僕は力一杯、右手の警棒を犯人が刃物を持つ右の手首に振り下ろす。
ーーガン!!
鈍い音が響き、犯人の男の叫びが響いた。そして、男が手に持っていた刃物が飛んでいく。
同時に、僕の右の頬に味わったことの無い衝撃が走った瞬間、一気に警官がなだれ込み犯人は確保された。
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