64.素材情報の提供

「おお、今日中に間に合ったか! それで、これから作ってマーケットに流せそうか?」

「……えーと、それなんですけど。素材がどこにあるかわかりません」


 へぇ、みすふぃはレシピを入手するところまではいったんだ。

 で、素材の入手場所が不明と。


「サイ、どうする?」

「これ以上つきまとわれても面倒よねぇ。素材の情報、教えましょ」


 決定だな。


「みすふぃ。作成に必要な素材って、日光草と月光草であってるか?」

「あ、フィートさん。こんにちは。すみません、いたことに気付かなくって」

「そんなことはどうでもいいさ。素材はあってるか?」

「えーと……はい、あっていますね。低級リジェネポーションが日光草、低級メディテポーションが月光草です」

「それの入手場所までは調合ギルドで教えてくれなかったの?」

「あ、サイさんもこんにちはです。……聞いたんですが教えてくれなかったんですよ。素材を見つけるのも修行の一環だって」


 うーん、やっぱり調合ギルドのやり方はどうにも古くさいイメージだな。

 今度オババに報告してみよう。


「それで、フィートさんたちなら素材の入手場所を知っていますよね? その場所を教えてくれたりとか……」

「……みすふぃ。そこまで甘えるのはダメだろう……」

「かまわないわよ。私たちとしてもうるさい連中に粘着されたくないしね」

「そういうわけで採取場所だ。日光草も月光草も精霊の森で採取できる。ただ、内部にいかないと採取できないし、ひとりのプレイヤーが一日に採取できる個数は十五個ずつ程度だから量産は手間だぞ」

「……うわぁ。ガオンさん、とっても詳細な情報を教えてくれましたよ」

「だなぁ。これだけのことを調べようと思うと何日かかるか」


 そんな風にいわれてもね。

 こっちとしてはたいしたことでもないし。


「言っておくけど、あくまで採取数は体感だから間違ってるかもしれないぞ。採取場所は間違ってないけど」

「いえいえ、そこまで教えてもらえれば十分です。検証とかは私たちでやりますから!」

「それにしても、一日十五個限定の薬草か……。みすふぃ、ポーションの作成には何個の薬草が必要なんだ?」

「ええと、ひとつで足りますね。……あれ、でもフィートさんたちは一日五個しかマーケットに流せないと……」

「オババの店に納品する分もあるからな。あそこに納品する分が少なくなると、市場に流れている高品質ポーションの数が減るらしい」

「それってつまり、高品質ポーションが作れるようになったら日光草や月光草も必要ってことですよね?」

「うーむ。これは急ぎで農園の実在を確認しなくちゃいけないぞ……」


 なんだか気になるキーワードも出てきたが、ここはスルーしておこう。

 やることがあふれてきているし。


「ほかに低級リジェネポーションと低級メディテポーションで聞きたいことはない? なにかあれば特別に答えるわよ?」

「ええと……値段はやっぱりある程度高くしなくちゃダメでしょうか?」

「それはそっちの方が詳しいんじゃない? 私はプレイ期間は長くても生産品の出品は素人だし、フィートは初心者だし」

「あ、それもそうですね。ええと……材料も聞いたし生息地も確認した、入手個数も大まかに把握できたし、あとは生産難易度だけど……」

「生産難易度だったら、一個作るだけで熟練度が300程度上がるって思えば大丈夫だよ」

「うわぁ……とっても難しそう」


 まあ、がんばってほしい。

 実演してもいいけど、手作業による生産は慣れだから。


「ほかに聞きたいことは?」

「ありません。ああ、確認しなくちゃいけないことですが、売り上げの分配はどうしましょう?」


 分配?

 俺とサイはお互い見つめ合って首をかしげる。

 そこにガオンが詳しい説明を加えてくれた。


「ここまで詳細な情報をいただいた以上、ただでというのは僕らの理念に反するのですよ。なので、売り上げのうちいくらかの分配金を受け取っていただきたいのですが」

「……そういうことならいいんじゃない? フィートは初心者でお金があっても困らないわけだし」

「確かに困らないが……装備の更新も終わってるわけだから、お金の使い道がないぞ?」

「そこは追々ね。というわけだから、フィートに売り上げの……二割程度でどう?」

「かまいませんよ。もっと多くてもかまわないのですが」

「さすがにそこまでもらうのも気が引けるわ。だから二割ね」

「承知しました。では、先ほどのジュースポーションも同じ条件でいいでしょうか」

「……ジュースポーション?」


 あ、やばい。

 サイに説明してなかった。


「フィート、あとで説明ね。とりあえず、そのアイテムの分も同じでいいわ」

「わかりました。支払いは一週間毎、僕かみすふぃからメールで送信させていただきます」

「……メールでお金の送信なんてできるの?」

「できますよ。……フレンドになってもらう必要はありますが」

「いいと思うわよ? この先も生産がらみでなにか相談に乗ってもらうかもだし」

「ではおふたりとフレンド交換を。みすふぃも」

「はい。よろしくお願いしますね」


 そういうわけで、フレンド登録を済ませて生産職連合協同組合をあとにした。

 彼らはこのあと、ギルド総出で精霊の森に行くらしい。

 がんばってもらいたいものだ。


 なお、俺たちはまだファストグロウには戻らず、カーズファントムを倒して魂狙いの戦いを続けた。

 ……レベル差のせいか本当に出ないんだよ。

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