23.サーディスクでレベル上げ(配信はおやすみ)
「それで、サーディスクまで行ってなにをする気なんだ?」
午後、ゲーム内でサイと合流して新しい街へと向かう理由を尋ねてみる。
セカンドレスでは鉱山に行くという目的があったようだが、サーディスクではなにが目的なのか。
「うん? うーん……とりあえずは、移動できるようにしておくことかな。ファストグロウ、セカンドレス、サーディスクの三カ所はなにかと行き来する街だし」
「ふーん、それだけか?」
「あとは経験値を稼ぐための狩り場がサーディスク方面に二カ所あるんだよね。そこの案内」
「狩り場が二カ所か……戦いやすいのか?」
「行ってみないと、かな。最後に防具の更新だけど、それは夜になってからだね。知り合いの裁縫士に予約を入れてあるから」
「わかった。……今日は配信なしなんだな」
なんだかんだ、移動中とか狩りの時間とかは配信していた気がする。
どういう風の吹き回しなのやら。
「毎日配信しなくちゃいけないわけでもないしねー。さっきまで薬草集めをしていたし、配信って気分じゃないのさー」
「ならいいが。……グロウステップも手を出さなければ平和だな」
「アクティブは避けて通ってるからね。その分、少し時間が多めにかかってるけど……まあ、十分くらいだろうし誤差でしょ」
「だな」
俺たちふたりはときどきほかのプレイヤーとすれ違ったりしながらグロウステップを駆け抜けた。
一時間半程度走り抜けた先に見えてきたのがサーディスクらしい。
「うわ、これまた立派な街並みだな」
「でしょ? この街は街全体が白く塗りつぶされているんだよ。理由は……忘れた!」
理由は後で調べれば問題ないだろう。
それよりもこの景色だ。
遠目に見ても美しいのだから、近くで見ればもっと美しいのだろう。
「さあ、早くサーディスクに入るよ。そしてホームポータル登録をしたら狩り場に出発!」
「了解だ。観光はまた今度、だな」
「そうそう、また今度。いまは少しでも強くならなくちゃね」
「あい、わかった。それじゃ、いこうか」
サーディスク中心部にあったホームポータルを登録した。
そのついでに屋台で料理アイテムをいくつか買ってインベントリに入れておく。
こうしておけば、空腹で帰ってくる心配もないだろう。
「それで、狩り場ってどっち方面にあるんだ?」
「大きく分けて三つ。東方面に幽玄の森、北東方面に百獣の平原、南東方面に水没洞窟かな」
「水没洞窟?」
「そう、正式名称が不明だからそう呼ばれてるの。ただ、ここは選択肢から除外ね。モンスターレベルが高すぎて勝負にならないから」
「つまり、幽玄の森か百獣の平原に向かうと」
「まずは幽玄の森から行くよ。準備はいい?」
「ああ、いつでも!」
「よし、レッツゴー!」
勢いよく挑んだ幽玄の森。
ここはゴースト系モンスターが跋扈する森だった。
モンスターの密度はそれほどではないが……一匹一匹を倒すのに苦労する。
「……なあ、この森って物理攻撃じゃきついんじゃないか?」
「あ、いま気がついた? ここは魔法メインの人向けの狩り場だよ。まあ、フィートはよく戦えている方だと思うけどね」
「武器に属性がついているからな。それでもつらいが」
「そりゃあね。それじゃ、百獣の平原に移動しようか」
「そうしてくれ。ここじゃ疲れてたまらない」
「じゃあ急いで脱出しよう。森の外まで幽霊は追ってこないから」
「ちょっと待て!」
先に走り出したサイを追いかけ、俺も走り出す。
ステータスの差なのか、歩幅は俺の方があるはずなのにぐんぐん差を広げられているぞ。
息も上がってきたし、これがスタミナ切れというやつだろう。
背後からは幽霊どもの声にならない叫びが聞こえるし、立ち止まってはいられないな。
「ゴール! いや、がんばったね」
「……はぁ、はぁ」
「あー、スタミナ切れかぁ。鳥人ってそっちも低いものねぇ」
「はぁ、わかってるなら、ぜぇ、おいて行くなよ」
「試してみたかっただけだって。ちゃんとサポートする準備はできてたから心配しないで」
本当かどうか怪しいが、まあいいとしよう。
息も整ってきたし、次にいくのも問題なさそうだ。
「……よし、次いくぞ、次」
「立ち直り早いねぇ。じゃあライドに乗って百獣の平原まで移動だよ」
幽玄の森から百獣の平原までは十分もかからないらしい。
実際、森を迂回した先が平原になっており、ここが百獣の平原だそうな。
「百獣の平原は物理向けな稼ぎ場かな。出てくるモンスターは獣系ばかり、全部アクティブ。深入りして囲まれないように注意してね」
「ほかに注意点は?」
「特にないかな? 割と素直な狩り場なのよ、ここ。その分、攻撃力高めだけど」
「なるほどね。それじゃあ、始めるとするか」
注意点を聞き終えて始めた百獣の平原での狩り。
これが思った以上にうまくはまってくれて楽しいのだ。
うまくつり出せば一対一の状況を作り出せるし、その状況下なら負ける気がしない。
万が一、複数に囲まれても落ち着いて対処すれば、なんとかなった。
ともかく、ここの狩りでめきめきレベルが上がっていき、いまはレベル29になっていた。
「うーん、百獣の平原というからもっと強いかと思ったが、そうでもないのかな?」
「奥地まで行けば常に五匹とかで行動する群ればかりになってくるよ」
「なるほど。それじゃ、とりあえず帰るか」
「そうね。帰りましょう」
ライドを呼び出し敵を避けながらサーディスクまで帰還する。
そこでスキルを割り振るのだが、サイの勧めにより【クリティカルヒット】スキルをレベル40まで上げることとなった。
このスキルはレベル50まで上げることができるので半分以上上げたことになる。
だが、遠距離攻撃をメインにするならクリティカルダメージの上昇は必須と言うことで上げることになった。
そのほかにも取得可能になっているアーツがいくつかあるわけだが……いかんせん情報不足なため覚えるのに二の足を踏んでいる。
銃のスキル情報、特に上位スキルの情報が少なすぎるんだよ……。
「さて、帰ってきて暇になっちゃったけど、このあとどうしようか?」
「そうだな……サーディスクの観光とでも……」
いこうか。
そう言おうとしたとき、目に映る光景があった。
道ばたで女の子が冒険者とおぼしき男たちになにかを懇願していたのだ。
ただ、その懇願が受け入れられた様子はなく、乱暴に振りほどかれ尻餅をついてしまった。
「サイ……」
「……ほんとお人好しだよね、フィートは」
「悪いか?」
「ううん、そういうところも好きだよ」
「じゃあ決まりだな」
「うん。午後の残りの時間はあの子の事情を聞いてみよう」
そうと決まれば話が早い。
俺たちはまだうずくまっている少女の元に駆け寄って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます