18.ライナ鉱山で採掘

「着いたよ! ここがライナ鉱山!」

「へぇ。確かに、露天掘りもやってる鉱山みたいだな」

「そそ。坑道に入る場合の入り口はあっちの方、露天掘りをする場合はこっちの道を上がっていく感じだね」

「了解。それで、採掘ってどうやればいいんだ?」

「少し進めば採掘ポイントが見つかるから、そこにピッケルを振り下ろせばいいよ」

「そんな簡単な……ってこれはゲームだもんな」

「そうそう。レイメントはゲームなの」


{レイメントがレイメントなとこだよな}

{なぜか簡略化されたところあるある}

{採取はちゃんと薬草を摘まなくちゃいけないのにな}

{でもいちいち岩盤を掘り崩して岩を拾ってとかやってられないから助かる}


 コメント的にもこの仕様は大助かりと言ったところか。

 サイは一足先に山登りを始めたし、俺も登っていこう。


「あ、そうだ。武器を出せるようにしておくのを忘れずにね」

「武器を? モンスターが出るのか?」

「うん、ほら、あそこ」


 サイが指さすところには、プレイヤーに襲いかかるモンスター達がいた。

 だが、プレイヤー側も慣れたもので武器を取り出すとあっさり返り討ちにしてしまう。


「いや、鮮やかな手前だ」

「褒めるところそこ? ここのモンスターはLv16からLv18程度、ボスモンスターは……山頂にまで行けばいるけど山頂から降りてくることはなし。フィートなら余裕だね」

「そうか? ……まあ、そうか」

「ただ、炎属性は相性が悪いから使わないほうがいいかも。モンスターによっては強化されるし。使うなら氷属性の銃だね」

「わかったよ。……うっすらと光る点が見えるが、あれが採掘ポイントか?」

「そうそう。多分十回も掘れば【採掘】スキルが手に入るからがんばって。私もあっちで掘ってるから」


 サイの採掘ポイントは少し離れた場所に出現したようだ。

 さて、それじゃあ掘ってみよう。

 インベントリからピッケルを取り出して採掘ポイントめがけて振り下ろす。

 ……あ、少し位置がずれた。

 身体能力が低いせいか、俺が慣れていないせいか、ピッケルをうまく扱えない。

 一回目は採掘ポイントの光から少しずれた場所を掘ってしまい、手に入ったアイテムは石ころ。

 二回目も同じく石ころ、三回目はうまく光に当てて銅鉱石、四回目も銅鉱石、五回目は石ころだった。

 五回掘り終わると採掘ポイントの光は消え去り、試しにピッケルで掘ってみてもなにも手に入らない。

 どうやら、回数制限があるようだな。


「フィートお疲れー。なにが掘れた?」

「石ころ三つに銅鉱石がふたつかな」

「おお、初回で銅がふたつならまだマシだよ。アッシュとか初回は全部石ころだったもの」

「そうか……まあ、よかったと考えようか」

「それで、手に入れた銅鉱石ってどうするの? 売りに出す? それとも、装備に使う?」


 使い道か、まったく考えてなかったな。

 さて、どうしたものか。


{まあまあ、サイちゃん。たったふたつじゃなにもできないから}

{そうそう。せめて十個単位じゃないと}

{インゴットにできるのが三つだっけか}

{銅鉱石三つとスズ鉱石ひとつで青銅インゴットやね}

{あと十個くらいは集めてから考えようぜ}


「それもそうか。フィート、次行こ、次」

「だな。行くか」


 そのあと、モンスターを蹴散らしながら採掘ポイントを周回。

 無事【採掘】スキルも手に入って、入手効率が少しよくなった。


「結局、どのくらい稼げたのかな?」

「銅が二十一、スズが六、鉄が二、石ころたくさんだな」

「それでインベントリパンパンだものね。インベントリ拡張しようか?」

「そうだな。明日拡張しておくよ」

「うん、そうしよう。それじゃ、下山」


 登るときはあちこちふらふらと歩き回りながら登っていたのでかなり時間がかかった。

 だが、下りはまっすぐ下るだけなのですぐに降りきってしまう。

 途中で何度もプレイヤーにすれ違う辺り、この鉱山は人気スポットなんだろう。


「はーい、麓にとうちゃーく。忘れ物はないかな?」

「ないよ。……それにしても人が多いな」

「そりゃあね。この鉱山に来るのは初心者から上級者まで幅広くやってくるんだよ。休日のゴールデンタイムとかサーバー分割されるほど混み合うんだから」

「サーバー分割?」


{ダンジョンとかで人が多すぎると起こる現象よ}

{システム側で同じエリアを複数用意して人を分散させるんだよ}

{そうしないと鉱山とか芋洗い場になってしまうw}

{ベータのときの鉱山はひどかったw}

{ベータの人数って二千人とかだったよな?w}


 混雑緩和策か。

 それだけ混み合うってことなんだろうな。

 気持ちはわかるし、仕方がないか。


「さて、これからどうしようか。ほかの狩り場に行くには時間が微妙だし、かといって寝るにはまだ時間が早いし」

「……別に終わりでもいいんじゃないか?」

「そう? もう少しだけ狩りをしたい気分だけど、鉱山で狩りは邪魔するだけだからなぁ」


{沈黙に行くとかは?}

{沈黙行きだな}

{沈黙だったら十五分で到着する}


「やっぱり沈黙の森がベターだよね」

「沈黙の森って?」

「ここからセカンドレスを挟んで西に広がる森だよ。虫系モンスターがいっぱいいるところ」

「……サイって虫平気だっけ?」

「ゲームは平気」

「そういうものか」

「ようは慣れだね。さあ、時間がもったいないし行くよ」


 俺たちはライドにまたがり鉱山を出発、セカンドレス内は通らずに迂回して進む。

 そして十五分ちょっとで沈黙の森とやらまで到着した。


「さて、沈黙の森だけど、ここのモンスターは大抵氷に弱いよ。というか、攻撃力差があるから氷武器でガンガン吹き飛ばしていこう」

「そうか、わかった。……ところで、サイは戦わないのか?」

「私が手を出したら経験値が減っちゃうでしょ? 危なくなったり背後の敵とかは倒してあげるから心配しないで」

「じゃあ、後ろは任せたぞ」

「おっけー。あ、頭上も注意してね。浅いところなら大丈夫だけど、深くまで進んだら頭の上から奇襲してくる蜘蛛がいるから」

「……そこまで進むのか?」

「レベル的にムリだね」

「じゃあ、いいんじゃないか?」

「気持ちの問題だよ。さあ、行こう」


 サイに急かされ、森の中へ足を踏み入れる。

 精霊の森とは違った空気に包まれたこの森は、なんというか命の息吹が感じられる場所だ。

 精霊の森はそういったものと無縁だったからな。

 あそこで感じた違和感はそれだったのか。


「あ、早速前方からバグ二匹」

「……あれは二匹なのか?」

「あの集合体で一匹なんだよ。さあ、ガンガン撃っちゃって」

「オッケー。……って弱いな?」

「自分がレベルの割に攻撃力過剰だって気がついて? そういえばインベントリいっぱいだよね。ドロップアイテムはどうする?」

「あー……どうしようか」

「じゃあ、銅やスズ、鉄は私が預かるよ。石ころはフィートが弾丸にして」

「わかった。それじゃあ、頼んだぞ」

「ほい、任された。あ、次の虫が来た」

「今度は巨大蜘蛛か。本当に虫ばかりだな」

「そういうコンセプトの場所だからね。って倒すの早いね」

「のんびりしてても仕方がないだろ。さあ、次に行こう」

「おっけー。どんどん行っちゃおう」


 この日は一時間ほど虫を倒して終了。

 虫素材はいい軽鎧素材になるんだとか。

 ただ、女性には不人気らしいけど。

 ともかく、探索を終えた俺たちはファストグロウまで移動してからログオフすることにした。

 明日はサイがサーディスクに案内してくれる予定なんだとか。

 サイの配信も終了させたみたいだし、これで俺も終わりにしよう。

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