17.セカンドレスへ(観光するとは言ってない)

「セカンドレスか……二番目に行くといい街だっけ?」

「そうそう。モンスターの強さ的に二番目がおすすめな場所。調べて来たんだ」

「まあ、それなりにはな」

「そっかそっか。それなら話は早いよね。セカンドレスまで、ライドで一気に進んじゃおう!」

「わかった。どれくらいの時間がかかるんだ?」

「セカンドレスまで一時間弱かな。ポータルだけ設定して今日は素通り予定なんでよろしく」

「了解、それでどの門から出ればいい?」

「北門かな。セカンドレスはファストグロウから北に突っ切った場所にあるから」

「おっけーだ。それじゃ、行こうか」

「うん、行こう」


{自然と恋人つなぎをするふたりよ}

{裏山}

{本人たちに自覚はねーんだろうな}

{押せば嫉妬の泉湧く}


 うん、この際コメントは無視しよう。

 あとでサイの機嫌を損ねる方が恐いし。


 さて、北門についたらお互い、ライドを召喚する。

 俺のライドは昼間も使ったロードランナー。

 サイのライドは……。


「……ダチョウか、それ?」

「ダチョウだよ。かわいいでしょ?」

「うん、愛嬌はあるな」

「でしょー。それじゃ、さくっと行ってみようか」

「ああ、道なりにまっすぐでよかったんだよな」

「うん。道なりにライドで一時間位進めばセカンドレスだよ」


 そして、お互いライドに騎乗したあと道なりに突き進んでいく。

 最初は始まりの平原でモンスターも穏やかだったが、途中からモンスターの生態も切り替わり少々強そうなモンスターがうろつくようになってきた。


「サイ、ここは?」

「ここ? ガラナ平原だよ。始まりの平原を越えた辺りかな。ここら辺から徐々にモンスターも強くなっていくの」


{強くなっていくと言ってもLv15くらいまでだけどな}

{精霊の森よりも弱いから安心して}

{というか彼氏さんはこの辺じゃ絶対強者}

{氷武器まであればフィールドボスのソロ討伐もいけるんじゃね?}

{いけるいける}

{サイちゃん、今度彼氏さんをガラナリザードの巣に連れてってよ}


「コメントがしんらつぅー」

「……なんだ、ガラナリザードって?」

「ここのフィールドボスだよ。……あ、フィールドボスって言うのはね、各フィールドにいるボスクラスモンスターのことだよ」

「へぇ。精霊の森はゾンビグリズリーだったとして、昨日行ったグロウステップにもいるのか?」

「いるけど……グロウステップのボスモンスターってレベル130なんだよね」

「なんでそこまで強いんだ?」

「グロウステップは入り口付近は弱いモンスターばかりなんだけど、奥地に行くと非常に強いモンスターの宝庫なんだよ。そこのボスだから仕方がないね」

「そうか……まあ、戦うつもりはないけどな」

「それがいいねぇ。さすがにかすっただけで即死だろうし。……あ、セカンドレスが見えてきたよ」

「どれどれ。……ああ、あの街か」

「うん、あの街。主要産業が林業と鉱業だから無骨な街なんだよ。その分、金属装備とか木工装備はいいのが手に入るんだけどね」

「なるほど。それじゃ、早く街まで行ってみるか」

「うん、そうしよう」



 俺たちは街までライドを飛ばす。

 少し道からそれて平原の中を走って行ったけど、モンスターに捕捉されることもなく進めたので問題ないだろう。

 そうして、セカンドレスの街までついにたどり着いたのだ。


「ようこそ、セカンドレスへ!」

「お前の街でもないだろうに」


{おいでやすー}

{ようこそ彼氏さんー}

{彼氏さん、ナイフ買い換えようぜ}

{せっかく来たんだしな}

{短剣系で五万出せばかなりいい武器が買えるよw}


「うーん、コメントではナイフの買い換えをお勧めされてるけどどうする?」

「ナイフは今のところ必要ないかな……。スキルレベルもゼロのままだし」

「いや、そっちは最低限上げておこうよ」


 そう言われても使わないんだから仕方がない。

 SPもあまり余ってないし、当分はこのままでいいだろう。

 そのことをサイに伝えると、あきれ顔をされてしまった。


「普通は遠距離攻撃メインでも近距離戦用の装備は最低限調えるものだけどね……」

「もう少しレベルが上がったら考えるよ」

「しょうがないなぁ。とりあえずホームポータルを登録して、転移できるようにしておこう」

「わかった」


 サイに案内されてホームポータルまで行き、転移先として登録完了。

 これで、ここからファストグロウに帰ったり、ファストグロウからここに来たりできるようになったようだ。


「……さて、今日のメインミッション。鉱山で露天掘りと行こうかな」

「露天掘りねぇ。鉱山内には入らないのか?」

「鉱山に入るにはたっかい許可証を買うか、クエストをこなすかしかないんだよ。どちらにしても許可証は使い捨てになっちゃうからね」

「……なんだか世知辛いな」

「世界設定を考えると、私たちよそ者に自分たちの食い扶持である鉱山を勝手に荒らされてたまるかー、ってことなんだろうけどね」

「なるほど。そう考えると合点がいくな」

「……まあ、おかげで冒険者の間では鉄装備が極めて高額なわけですよ」

「極めてっていくらくらいなんだ?」

「一般的なロングソード一本で三十万リル」

「たっか」


 俺が買った銃セットの二倍じゃないか。

 ……そういえばこの銃には鉄は使われてないんだろうか?

 気になって聞いてみると。


「多分、鉄は使われていないと思うよ。使っていても青銅くらいで氷の属性鉱石がメインだと思う。属性鉱石は採取場所まで行けばそれなりにまとまった数がとれてお手頃価格だからね」

「……それなら、鉄と価格の逆転現象が起こるんじゃないのか?」

「属性鉱石だけで武器を作ると耐久力が低くなっちゃうのよ。あと、攻撃力も鉄には及ばない」


 なるほど、よくできてる。


「そういうわけで、いまの冒険者にとって鉄製武器は一流への入り口なわけですよ。ちなみに、鋼鉄製武器は超一流の入り口ね」

「へー。サイの武器は?」

「もちろん、鋼鉄製」

「嫌みか」

「自慢だよ」


{サイちゃん八時間耐久露天掘りとかやってたものなぁ}

{そんだけ露天掘りするなら鉱山利用許可証買って籠もれと言いたくなったw}

{でも、あれで鋼鉄のブーストスピア作れたんだからたいしたもんだ}


「サイ……何やってんだお前」

「コメントー」


 コメントでサイの奇行が暴露されたところで俺たちは一度休憩をする。

 休憩と行っても満腹度回復のための買い食いと、露天掘りに必要なアイテムの購入だったが。


「へぇ、採掘に必要なのはピッケルだけなのか」

「そうそう。その辺は簡略化されているみたい。あと、何回か掘っているうちに【採掘】スキルが取得可能になるから、覚えてね」

「なにか効果があるのか?」

「上位の鉱石が入手しやすくなるのよ。スキルがないとほとんど石ころと銅鉱石ばかりよ」

「なるほど、了解した」


 ホットドッグを食べ終え、街の外に再びやってきた。


「さあ、今度の目的地はライナ鉱山。掘って掘って掘りまくるよ!」

「了解。……で、その鉱石でなにを作るんだ?」

「それは入手してからのお楽しみね。さあ、行こう!」

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