16.半日の成果は……
{半日放っておいたらお金持ちになってたは草}
{さすがにわらえるよw}
{さすがサイちゃんの彼氏さんw}
{どうしてそうなったw}
「ねー、そう思うよねー」
「この扱いに納得がいかない」
夜になって予定通りサイと合流した。
サイはすでに配信を始めていて、今日の成果を聞かれたため答えたらこれだ。
「それじゃあ、もう一度はじめから聞き直そうか」
「何度説明しても同じだと思うんだがな」
「そこはほら、気分だよ」
「まあ、いいけど。まずはサイに勧められたとおり、武器を買い換えてから精霊の森でカラス狩りをしてたんだ」
{このときに買った武器が初心者武器にしては強すぎだった}
{普通属性武器が一万以内で買えるなんてことはない}
{見せてもらったが、虫が嫌いな人にはダメなデザインだったからな……}
{サイちゃんがカラス狩りを勧めたのはスルー?w}
{高火力の長距離武器が手に入ったのなら、カラスはおいしい}
{一発で撃ち落とせるならカラスは経験値的にも金銭的にもおいしいよ}
{ただし開始二日目の初心者に勧める場所じゃねえ}
{そこはサイちゃんクオリティ}
{クリアできるのもサイちゃんの彼氏さんクオリティ}
「で、俺は気づかないうちにボスエリアに足を踏み入れたわけだ」
「わかりにくいからね。精霊の森のボスエリア」
{普通はここで死に戻り確定}
{ゾンビグリズリーはもっと上位のダンジョンボスより強いからな}
「ポーションを使い切る程度には激戦だったけど、かろうじてボスを倒せたんだよな」
「うん、まずはここがおかしい」
{なぜ初見未予習ソロでゾンビグリズリーが倒せたのか}
{でも倒した証拠は彼氏さんが装備しているわけで}
{深緑の腕輪を装備しているからソロ討伐は確定なんだよなぁ}
{パーティ討伐だと新緑の首飾りだけだもんな}
「ほんと、おかしいよ、それ。どうやって倒したのさ」
「どうやってと言われてもな……まず、インパクトショットを撃ち込むとノックバックするだろう」
「うん、そうだね」
「で、火力強化のスリーショットを追撃で撃つとひるむから、そこでさらに追い打ちをかけるんだ」
「それがおかしいんだよ」
おかしいと言われても、できたんだから仕方がない。
証拠の動画とかがない以上、信じてもらうのは難しいが。
「あのね、あのボスはベータ時代、多くのプレイヤーを泣かせてきた強ボスなんだよ? 私だって倒すのに一週間かけたんだよ? それなのに開始二日、それも初見で突破されたら立つ瀬がないじゃない」
「それは俺の責任じゃないなぁ……」
俺が特殊パターンなのは理解した。
ただ、立つ瀬がないと言われても困る。
{よし、真面目に彼氏さんがなぜ勝てたのか検証しようぜ}
{面白そうだ。勝てた理由はどう考えてもアーツと武器だよな}
{武器の攻撃力が高かったからってのはどうだ? 銃で石の弾ならかなり攻撃力高いだろ?}
{それなら大槌とかの方が攻撃力高い}
{攻撃力高いのは要因の一つだがそれだけじゃないな。ほかに思いつく理由はなんだ?}
{炎属性武器って言うのは? ゾンビグリズリーの弱点は炎だろう}
{彼氏さんにステ読み上げてもらったけど、炎属性5しかなかったんだよな}
{でも、炎属性が鍵なのは間違って無い気がする}
{あ、思い出した。確か、ゾンビグリズリーって炎属性で一定時間内に50ダメ以上与えたらひるむんだった}
{50ダメか……炎属性値5じゃ厳しくないか?}
{いんや、スリーショットならいけるはず。ダメージ倍率そこそこ高いからな}
{ってことはダメージ倍率高いアーツを積んで、炎属性値が高い武器を持っていけば誰でもゾンビグリズリーをソロ討伐できるってこと?}
{そうなるな}
{問題はゾンビグリズリーの反撃を受けずにすむかってことだw}
{そこは遠距離攻撃で}
{結局弓か銃になるという}
{問題は解決したが検証は大変そうだ}
{俺まだゾンビグリズリーやってないから炎属性武器担いで行ってくる}
{いってれー}
「うん、コメントの方で結論が出たみたいだね」
「そのようだな」
俺はよくわからないけど、結論が出たようでなによりだ。
ただ、流れを追っていたけど、ゾンビグリズリーから反撃を受けずに倒すってかなり大変だぞ?
「それで、そのあとはどうしたんだっけ?」
「薬草や毒草を採取して帰ってきてNPCのお店で換金してきた」
「……薬草や毒草ねぇ。森の精霊からもらえるスキルがあれば草木の種類がわかるのは知ってるけど、薬草とかを買ってくれるNPCなんていたっけ?」
「俺の場合は買い取ってくれたけどな」
「んー、現金は持ってるわけだし疑いはしないよ? ただ、そんな都合のいいNPCっていなかったような……」
{第四陣参入前のアップデートで追加されたとか?}
{ああ、こないだのアプデ}
{NPCやイベントを追加したって書いてたもんな}
{それを見つけたんじゃね?}
「そんなところだろうね。……さて、お金はできたわけだけど、どうする? 装備の更新いっとく?」
「そうだな。この手のゲームってこまめに更新した方がいいんだろ?」
「そりゃあね。死んでも復活するとは言っても命あっての物種だし」
「じゃあ更新しようかな。やっぱり武器からか?」
「だねぇ。レールのところに行ってみようか」
というわけで、昼間も訪れたレールの工房にお邪魔することに。
まだ灯りがともっていると言うことは営業中なのだろう。
「ごめんくださいな」
「おう。サイの嬢ちゃんにフィートじゃねえか。武器に不具合でもあったか?」
「いや、とても活躍してくれたよ。……ゾンビグリズリーを倒せる程度には」
「……ゾンビグリズリーってマジかよ。いや、そのアクセを身につけてるってことはマジなんだな」
「マジなんだよねー。そういうわけで、フィートってばお金の余裕ができたんだよ。もっといい武器ない?」
「金の余裕なあ。予算はどれくらいなんだ?」
「えーと、十六万リルだな」
「……半日でよくため込んだな」
「そう思うよね」
「たまったんだから仕方ないだろ」
「ま、いいか。それなら大抵の商品は買えるが……それより、フィートのスキルレベルは大丈夫か?」
「あーそっちの制限があったか」
「うん? 制限?」
説明をしてもらうと、上位の装備を扱うにはスキルレベルが高くないといけないらしい。
スキルレベルが足りない状態で強い装備を使おうとすると、うまく扱えないんだとか。
「銃を使うってことで最低レベルの20はあると踏んで昼間の武器は売ったんだ。これ以上の武器を売ろうと思うと、スキルレベルを上げてもらわないとなぁ」
「だってさ。フィート、スキルレベル上げちゃおう?」
「だな。どこまで上げればいい?」
「できれば上位スキルを開放して覚えてくれるとありがたい」
「上位スキル?」
「【銃】スキルだと【アサルト】とか【スナイパー】とかだね。スキルが細分化されたものって感じかな」
「わかった。……初期スキルの上限は30か。そこまでスキルを上げてと。うん、上位スキルが解放されたって」
「なら、使いたい武器のスキルを覚えてくれ」
「……じゃあ【アサルト】と【スナイパー】のふたつかな」
「……ふたつ買ってくれるのは嬉しいが、育てるのは大変だぞ?」
「カラス狩りしていて思ったんだよね、スナイパーもほしいって」
「なるほど、それなら止めねえよ」
「……よし、覚えた」
「わかった。それじゃあ、いい武器を持ってきてやるからちょっと待ってろ」
レールさんは工房の奥に武器を取りに行った。
その間、やることもなかったので、スキルを調整することに。
上位スキルも覚えただけではもったいないのでLv10まで上げてみた。
SPがかなり減ったが……まあ必要経費だな。
「待たせたな。今回のおすすめはこいつだ」
「うっわ、真っ白な銃」
「こいつはシロッコ氷河の素材で作った銃だ。物理攻撃だけじゃなく氷の属性攻撃もついてるからお得だぞ」
「ふーん、ちなみにお値段は?」
「アサルトとスナイパー。セットで十三万でいい」
「んー、フィートはどう思う」
十三万か……安い買い物ではないけど、いま使っている銃よりも攻撃力は高いし、買ってもいいんじゃないかな。
「念のため言っておくが、ボス素材を除けばかなり上位の素材を扱っていることになるぞ。……もちろん、うちで取り扱っている素材の範囲で、だが」
「わかった、この銃を買わせてもらうよ」
「よし、助かる。素材を見かけて作ってみたはいいが、誰も買ってくれなかったんだよな」
つまり不良在庫か。
性能はいいし気にしないけど。
「よし、リルはしっかり受け取った。ほかに欲しいものはあるか?」
「ああ、そうだ。ポーションがなくなったんだった。まとまった数になるけど大丈夫かな?」
「よっしゃ任せろ。銃をかってもらった分、安くしてやる」
ポーションの値段は、宣言どおり一割ほど値引きしてもらえた。
こうして、二回目の装備更新も大満足の結果となったのだ。
そういえば、配信の方はどうなっているんだろう。
{……銃装備ってあまり強くないのな}
{正確には一般に強い銃が出回ってない}
{強力な銃はすべて持ち込みで作られている}
{マイナー武器の定めだな}
……見なかったことにしよう。
「残り三万ちょっとか……防具を更新するならもう少しほしいね」
「だったら今日はこのままでいいか」
「うんうん。それじゃ、今日の目的地まで移動しよう」
「目的地?」
「今日はセカンドレスに移動して鉱山に行ってみよう!」
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