11.VS.アッシュ 配信を添えて
「うぉりゃー!」
「っと!」
「はーい、皆さんこんばんはー、サイだよー」
{わこつ}
{わこつ}
{こんばんちゃ}
{こんばんは}
{ねえ、あそこはなにしてんの?}
{彼氏さんとアッシュが戦っているように見えるけど}
「戦っているように見える、じゃなくて戦っているんだよねぇ。なんでも、アッシュがフィートの腕前を試したいとかなんとか」
「身近な人間が増えるとすぐに腕試しがしたくなるのはアッシュの悪い癖ですねぇ」
{お、グロウもいるじゃん}
{岩鬼さん、おっすおっす}
{グロウさんおいっす}
{グロウって相変わらずアッシュと旅してんの?}
{イアリスたんはいないの?}
「私は相変わらずアッシュと旅をしてますよ。それから、今日はイアリス不在です。リアルで用事があったとか」
{それなら仕方がないか}
{久しぶりにイアリスたんみたかたのに}
{で、あれってどんなルールで戦ってるの?}
{累積レベル300超え対今日始めたばかりの初心者で戦えてるのがおかしい}
「PvPモード設定で弱い方のステータスにあわせた戦闘力で戦ってますね。アッシュはステータスが低くて少し動きにくいと言っていましたが」
{だよねぇ}
{累積が違うわな}
{でも彼氏さんがんばってるじゃない}
{いま戦闘開始からどれくらい経ってるの?}
「えーと、戦闘開始から五分くらいかな?」
{アッシュ相手に五分持ってるって凄くね?}
{アッシュが本気ならな}
{見た限りまだ本気じゃない。アーツ使ってないし}
{ヒント:弱い方のステータスにあわせてる}
{彼氏さんにあわせてても基本系のスキルがあるんだからそれのアーツが使えるべ}
{むしろアッシュは基本アーツの使い方がうまくて上位勢に名を連ねた}
{それを出していないってことはまだ見極めてる途中なんだろ}
「そうですね。まだ、本気を出していないと思いますよ」
{本気出したら一分も持たないに一万リル}
{お、賭けか?}
{この場で賭けても誰が胴元をやって集計するかが問題だな}
{やだなぁ、冗談だって}
{そもそも、彼氏さんのメインウェポン銃やん}
{そいえばナイフで戦ってるな}
{サブウェポンでしか戦ってないのに結構がんばってるじゃない}
「フィートはナイフの扱いもうまいんだよ!」
{確かにあれだけ使えればメインウェポンって言ってもよさそう}
{もったいねぇな}
{本人が銃を使いたがってたし仕方ないじゃん}
{銃って言えば弾丸の問題もあったが、その辺どうなん?}
{そういえば日中の放送では一回も補充してなかったな}
{初期装備を手に入れたときに弱弾をかなりの数もらえたはずだが}
{それにしてもモンスターをかなりの数倒してたろ}
{彼氏さん、弾切れ起こさないか不安}
「それも大丈夫! さっきアッシュから石ころをもらって補充してたから」
{銃の弾が石ころ製}
{知らないのか?}
{最弱の弾は木製だぞ?}
{石の弾って初期装備の弱弾の三倍強いからな}
{石ころひとつから十発だっけか}
{詳しいな}
{俺元ガンナー}
「そろそろ体が暖まってきたな! アーツも使っていくぞ!」
「うわっ!? ちょっと、まて!」
{そういえば彼氏さん、短剣スキルって鍛えてたっけ?}
{スキレベ0だった気がしないでもない}
{つまりアーツなしと}
{……パリィガードすらないのかよ}
{本気で詰んだな}
「いえ、そうでもないようですよ?」
{おお! アッシュの連撃をうまくさばいてる!}
{完全回避じゃないから細かくダメージは受けてるけどそれでもすぐ負けてないな!}
{お前ら、あれできる?}
{無理}
{ムリ}
{できるわけねー}
「フィートってなんだかんだ言って結構反射神経がいいのよ、ゲームでは」
{ああ、VR内では身体能力が上がるってタイプの人なんだ}
{結構いるらしいよね}
{実際の肉体だとうまく扱えないけど仮想の肉体は齟齬なく扱える……とかだっけ}
{彼氏さん、プロゲーマーとかは目指さないの?}
「今のところはそんなつもり一切ないみたい。ゲームはかけがえのないものだけど、仕事にするにはなにか違うって」
{わかるわーその気持ち}
{その心意気に投げ銭したい}
{サイちゃん、投げ銭解除しないの?}
「投げ銭解除はしないよー。私もゲームで稼ぐつもりはないからね」
{あの彼氏にしてこの彼女あり}
{なんだかいいコンビである}
{サイちゃんの彼氏さん、やっぱりいい人だわ}
{安心して任せられるな}
「少し話しただけですがいい人だと思いますよ、フィートは。サイと違って常識人ですからね」
「グロウ、それって私が非常識みたいじゃない?」
「割と非常識だと思いますよ? 初期装備で西の森ボス単独討伐とか装備変更後とはいえ累積レベル100未満ワイバーン単独討伐とか」
「……それくらいうまい人なら誰だってできるって、ねぇ?」
{できるかどうかはともかくやるやつは少ない}
{それをやることが非常識}
{サイちゃんの常識は世間の非常識}
「コメントー!?」
「おっと、あちらの戦闘も動きがあるようですよ?」
「ハイジャンプ! 急降下!」
「お!? 即席のバックステップか! いいねぇ!」
「ここからは銃で相手をさせてもらうぞ!」
「よっしゃ、かかってこい!」
{なに、いまの動き}
{かくかくって動いた}
{サイちゃんかグロウさん説明プリーズ}
{もしくは詳しい人}
「おそらく斜め後方にハイジャンプをして、そのまま斜め後方に急降下をしたんでしょうね」
「なるほどー。それでフィートがアッシュとの距離を広げたんだね」
「そのようです。種族特性スキルは技後硬直がないものが多いですからね」
「硬直なんてしてられないものね」
「そうです。それを利用したんでしょうが……あらかじめ練習していた?」
「多分、初めて試したんだと思うよ。失敗しても、ハイジャンプで上空に逃げられるしさ」
{なるほどー}
{っていうか、最初からハイジャンプしてれば空中で銃撃つだけにならないの?}
{真下に回り込まれてジャンプから切り刻まれるか遠距離攻撃で切り刻まれるか}
{それ知ってるのかな?}
{多分勘じゃね?}
{彼氏さん、MMOは素人でもゲーム慣れはしてるっぽいしな}
{そんなことより、ふたりのバトルが楽しいことになってるぞ}
「……これはこれは。アッシュがあそこまで近づくのに苦労するとは」
「初心者の館でアーツカスタマイズを覚えたんだね。最速連射で近寄らせないようにしてるよ」
「確かに、通常攻撃とアーツ攻撃でうまく弾幕を貼っていますね」
{でも、それを切り裂いていくのがアッシュなんだよなぁ}
{通常攻撃は剣ではじける。インパクトショットをはじいてしまうと強制ノクバが発生する}
{うまいこと組み合わせてるよなぁ}
{でもジリジリとアッシュが近づいてるんだよな}
{あっ、アッシュが一気に駆け出した!}
{彼氏さん、不意を突かれたのか迎撃できない!}
{アッシュのヘビスラでHP全損、試合終了}
{最後はあっけなかったけど見応えがあったな}
{でも最後なんであんな極端な終わり方したんだ?}
「最後だけど、フィートがMP切れを起こしたんだって。それをアッシュが見逃さなかったみたい」
「数発通常攻撃が続いたのをみて一気に勝負をつけにいったのでしょうね。さすがにフィートはまだまだ駆け引きが苦手と言ったところでしょうか」
{いやあ、PSだけでここまで粘れれば十分っしょ}
{いいもんみれたよ。ありがとさん}
{サイちゃん、あとで彼氏さんにお疲れって言っておいて}
{確かに彼氏さんはお疲れ様だ}
{アッシュはもう少し初心者に優しくだな}
「あはは……伝言は了解したよ。それじゃ、配信は終了するね。また今度ー」
{またねー}
{乙ー}
{ばいばー}
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