5.お披露目配信 その2

「二十メートルねぇ。比較対象として弓や魔法ってどれくらい届くんだ?」

「魔法は種類によりけりかな? 射程が長いものになれば三十メートルは届くし。でも、普通の魔法ならがんばって十五メートルが限界。弓の射程は……三十メートル以上は届くよ?」

「だめじゃん」


{だから銃は微妙武器なんよ}

{ファンタジーの銃はクソツヨか微妙かの二極化}

{銃の強みは扱いやすさと攻撃力。なお、ステータスによる強化があるかがいまだに不明}

{ステ強化分も含むと弓も銃も攻撃力変わらない可能性}

{弓も二十メートル当てられるのは一割程度だからな}


 コメントを見てもやっぱり微妙武器という感想だ。

 ゲーセンのVRシューティング出身者としては残念なところ。


「ほら、それよりサブウェポンを選んでみようよ!」

「サブウェポンねぇ。……これでいいや」


 俺が選んだのは短剣ナイフ

 これだったら別ゲームで使ったこともあるし、なんとかなるだろう。


{悩まずサクッと逝ったな}

{でも短剣セレクトは悪くない}

{長距離武器の弱点は接近戦。小回りがきく武器は使いこなせれば強い}

{あとは彼氏さんが使いこなせるかだな}


「ゲーセンのVRゲームでは使ったことがあるけど、どうなんだろうな」


{彼氏さんゲーセン出身者か}

{ゲーセンでVR、ナイフ使う=VRシューティングか}

{あれって結構難しい使い方要求されたよな}

{ぶんぶん振り回すだけでもいけるけどきちんと型にはめた方が強い}

{場合によっては銃使うより強いすらある}


 こっちはそれなり好感触。

 ナイフはそれなりに使用者がいるのかな。


「ともかく、これで初期装備は決まったね。じゃあ、フィート。メッセージボックスに届いている、プレゼント三つを開けてみようか」

「メッセージボックス? ……ああ、これか。なんで最初から三つ届いているのか疑問だったんだよ」

「それね、初回ロット特典」


 届いていたアイテムを確認するとそれぞれ『渡り鳥の装備セット』『ポーションセット』『ブーストアイテムセット』と書かれていた。


「まず『ポーションセット』と『ブーストアイテムセット』だけど、それはその名前どおりだから説明は省くね」

「大体わかるからオッケーだ」

「よしよし。じゃあ『渡り鳥の装備セット』を開封しようか」

「わかった。……おお、なんか装備が出てきた」


 指定されたアイテムを使用すると、装備セットらしく各種装備が出てきた。

 帽子にベスト、スラックス、ブーツ、グローブの防具五つに銃とナイフの武器ふたつだ。


「開封が終わったら装備してみてよ。早く早く」

「はいはい。実際に着替えるんじゃなく、ステータス画面で操作するだけなんだな」

「それじゃないと生着替えとかいやじゃない」

「それもそうか」


 渡り鳥装備に変更すると、一般的な村人チックだった装備が西部劇に出てきそうなウェスタンスタイルに早変わりだ。

 持っている銃が人間の身丈ほどもある巨大なものでなければ、完全に西部劇のガンマンだったな。


{ウェスタンスタイル似合ってる}

{ピストルほしい}

{残念だがレイメントにピストルはない}

{わかってるよw言ってみただけ}


「うん、よく似合ってる」

「それはどうも。で、このあとはどうするんだ」

「次はドーピングかな」

「ドーピング?」


{初心者にためらいなく強化をぶち込んでいくスタイル}

{でもSPシロップはみんな使うじゃん?}

{確かに。遅いか早いかの差だ}

{ゲーム開始数時間の初心者に使わせようとするサイちゃん鬼畜}


 俺にはよくわかってないが、コメントは盛り上がってる。

 さて、今度はなにを使わされるのか。


「それじゃあ、まずは先にこれを送っておくね」

「うん? ……これって」

「リアルマネーのギフトコードだよ。あ、今度返してね?」

「わかってるよ。これを登録して有料アイテムを買えばいいんだな」

「そうそう。このゲーム、基本的に課金なしで楽しめるんだけど、必須アイテムがいくつかあってね。それを買うためにいくらかの課金が必要なのよ」

「そうか。で、なにを買えばいいんだ」


 もらった金額は一万円。

 これだけあればかなりのものが買えると思うんだが。


「『SPシロップ』って言うアイテムを四つ。スキル【暗視】をひとつ。ライドタブにあるアイテムから好きなものをひとつだよ」

「了解した」


 課金ショップの開き方はすぐわかった。

『SPシロップ』はSP――スキルポイント――を入手するアイテムで一キャラクター四つまで使用可能。

 スキル【暗視】は森の中や洞窟内でも昼間と同じようにものが見えるスキル。

 ライドタブにあるアイテムは、いわゆる乗り物アイテムだな。

『SPシロップ』がひとつ千五百円、スキル【暗視】が千円の合計七千円。

 ライドアイテムが千円から三千円程度なので、一万円をほとんど使い切ることになる。

 ……サイにはソフト代も含めて今度お返しをしておこう。


 さて、ライドはいろいろな種類があるけどどれにしようかな?


「なあ、ライドってどれを選べばいいんだ?」

「どれを選んでも一緒だよ。一人乗りか複数人乗りかの差はあるけど」

「ふむ……リスナー的におすすめってあるかな?」


{おっ、彼氏さんここで聞いちゃう?}

{すごい勢いでコメント流れちゃうよ?}

{俺らの好みより彼氏さんの好みでいいのよ}

{ぶっちゃけ千差万別だからどれがいいとか勧められん}


 うーん、コメントでもおすすめはなしか。

 さて、どれを選ぼう。


「とりあえずいまは選ばなくても大丈夫だよ。今日は使わないからさ」

「……それじゃ、いまは保留にするか」

「それでオッケー。じゃあSPシロップと暗視を使っちゃおう」


 サイに言われるがままアイテムをすべて使ってしまう。

 SPシロップをすべて使って入手したSPは60。

 これが多いのか少ないのかはよくわからない。

 ただ、コメントの話が本当なら、この差は大きいんだろう。


「使い終わったね。じゃあスキルを覚えていこうか」

「わかったが、課金アイテムまで使って覚える必要はあるのか?」

「種族スキルは必須だからね。鳥人のスキルが必要かどうかは微妙なんだけど……」


{鳥人の種族特性はなぁ……}

{使う人を選ぶ}

{上手く使える人はすごい上手い}

{ただしステータスが低い}

{それを言うなし}


 サイの反応もコメントも不穏だが……そんなに微妙なんだろうか。

 飛行とかすごくロマンがあるんだが。


「まあ、まずはスキルを覚えちゃおう。話はそれからだよ!」

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