考古学者とアラクネと悪魔

結城暁

第1話

 むかしむかし、そのむかし

 あくぎゃくひどうをはたらいた あくまがいっぴきおったとさ

 ひとをころしてばんらばら

 あめをふらせておしながし もりをやいてはおいたてて

 かぜをふかせておいちらす つちをこわして たかわらい


 あるひとうとういのちをかけた ひとにうたれてばんらばら

 てあしをおとされ くびをおとされ こまぎれになってばんらばら

 ひとはよろこび めでためでたやおおさわぎ

 いついつまでもうたってた それ めでためでたや そーれそれ


 ――地方小唄「大宴会」



 故郷に伝わる唄をのんびりと歌いながら考古学者のリボルは荒野を歩く。

 唄に伝わる大悪魔は名をパドゥーだと伝わっている。唄の通り悪逆非道の限りをなし、その果てに人間に封印された。

 大悪魔に手も足も出なかったはずの人間がどうやって封印したかといえば、唄には出ていないが実は、人間側についた悪魔がいたからだ。

 その悪魔は蜘蛛の胴体を持った美女の蜘蛛女アラクネで、伝承では大悪魔の右腕ともされる存在だ。アラクネは人間の子どもが好きであったらしく、子どもを助けたり育てたりといった逸話がいくつも残っている。

 子ども好きであったからか人間にも友好的であったようで、日々力を増していく大悪魔パドゥーの封印を持ちかけてきたのはアラクネだったという。

 強大な力を持つパドゥーを眠らせたアラクネは、身体をバラバラにして人間に渡し、各地に封印させた。その場所は今現在でも定かになっていない。古文書には詳しく書かれておらず、教会や寺院も未だ沈黙を守っているからだ。

 リボルはなぜかアラクネに強く惹かれて悪魔の伝承を調べだし、終いには考古学者になった。村の教会にあったアラクネのタペストリーを見たとき、なぜかアラクネのことを知りたいと強く思った。初恋のようなものだったのだろう。

 アラクネについて調べていけば、自然とパドゥーにも詳しくなる。どうやらアラクネはパドゥーの妻だったようだ。この事実を初めて知ったときは恋に破れた気分を味わい、リボルは一週間ほど食欲が落ちた。

 しかしここで疑問が残る。なぜパドゥーの妻だったアラクネがパドゥーを裏切るような真似をしたのか。最近のリボルはそれを調べて回っている。

 リボルが今いるヴルホル市の近くでアラクネに関する記録は途切れている。アラクネは人間を刺激しないように山奥に消えたと僧侶が書き残した記録が最後で、そのち地がここアデュリィ地方だった。

 目の前に広がる荒野と古地図とを照らし合わせると、どうやらパヴォルク山がアラクネの消えた山の可能性が高い。アラクネの伝承から千年は経っているが、長命な悪魔であればもしかしたら本人にあえるかもしれない。

 そんなかすかな希望を胸に、リボルは野宿の準備を始めた。ヴルホル市から馬も使わずに歩き通しで、ここから麓の森まで行くのに半日はかかりそうなパヴォルク山まで行くのは辛い。今日は早めに寝て、明日早くに山へ向かうことにした。

 現地民から起伏の激しい荒野に洞穴がいくつか点在していると聞いていたリボルはそのひとつに向かう。聞いた話ではなかなかに広く、涼しい快適な洞穴であるらしい。旅人がよく使うそうだ。

 リボルが洞窟に向かう途中、不思議な雰囲気の女性と出会った。目の覚める様な美貌に、腹から下に蜘蛛の胴体を持つ蜘蛛女アラクネだった。すれ違うのかと思いきや、蜘蛛女とリボルの行く先は同じらしい。並んで歩くリボルに蜘蛛女が涼やかな声をかけてきた。


「こんにちは」

「こんにちは。この辺りの方ですか?」

「ええ。あの山に住んでいるの」


 蜘蛛女が指さしたのは明日リボルが向かわんとしているパヴォルク山だった。


「俺、明日パヴォルク山に行こうと思ってるんですよ!」

「まあ、偶然ね」


 蜘蛛女が笑い、小首を傾げれば長い髪がさらりと揺れた。どきまぎと顔を赤くしたリボルに蜘蛛女は歌うように言葉を紡ぐ。


「よければ案内するわ」

「ありがとうございます!」


 助かるなあ、と笑ってリボルは頭をかいた。


「俺の足じゃ今からだと真夜中になってしまうので、明日の早朝に山を目指そうと思ってたんです。道案内がいるなら迷う心配しなくて済むから、ありがたいです」

「賢いのね」


 蜘蛛女の声はまるで詩でも吟じているかのようにリボルの耳を心地良く撫でていく。

 辿り着いた洞穴でも蜘蛛女との時間は楽しく過ぎていった。焚火を囲み、リボルは携帯食を腹に収めたが、蜘蛛女は何も口にしなかった。その代わりに微笑ましいものを見るような視線をリボルへ注ぎ、考古学者になった理由や、今までの成果を話すリボルに相槌を打った。

 自分の話を久方ぶりに熱心に聞いてくれる観客に興奮したリボルは、常にない程話して、話して話して、話しまくった。


 ぐう~~~~。


 洞窟に響いた間抜けた音が自分の腹の音だ、と気づいたリボルは赤面した。


「あら」

「お恥ずかしいです……」

「食べ盛りなのね。良い事だわ」


 蜘蛛女は柔らかく笑んで立ち上がった。


「ちょっと待っていてね。なにか食べるものを獲ってくるわ」

「ええ、そんな、悪いです」

「いいの、いいの。甘えて頂戴」


 重さを感じさせない動作で洞穴の出口へ歩いて行く蜘蛛女は一度、リボルを振り返った。


「奥に行っては駄目よ。危ないから」


 洞窟から出て行く蜘蛛女を呼び止めようとして、リボルは蜘蛛女の名前を聞き忘れていたことに気づいた。自分の名乗り忘れにも気づいて、蜘蛛女が戻ってきたら絶対に名前を聞こう、と拳を握った。

 焚火に小枝を足しながら、リボルは蜘蛛女の帰りを待った。


「ん……? なんだか、耳が痛いような……」


 風の音だろうか、妙な音が聞こえてリボルは思わず立ち上がった。その音は洞窟の奥から聞こえてくるようだった。奥になにかあるのだろうか。

 蜘蛛女に奥に行ってはいけないと言われたけれど、少し見るくらいなら大丈夫だろう、とリボルは奥へ奥へと進んでいく。

 なんだか寒いような気がして、二の腕を擦る。風が冷たくなったようだった。リボルは恐怖を感じていたが、進む足は止まらない。引き返せない。洞窟の奥へ奥へと歩いてしまう。行かなくてはならない。

 洞窟の奥には少し天井の高い、開けた空間があった。奥の岩の上に祠のようなものを見つけたリボルはまじまじと観察する。岩に施されているのも、祠に施されているのも魔除けだった。意匠からして千年程前のものだ。見ただけで近づいてはならないと分かる。足を踏み入れれば均衡が崩れ、封印に綻びを入れかねない。

 それなのにリボルの足は止まらない。

 止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ!

 頭でどれだけ思っても、叫んでも、歩みは止まらない。まるで体が別の生き物のようだった。

 岩の前に描かれた魔術陣に踏み込めば、一線を越えてしまったと体で感じた。

 待て、止めろ、その封印を解くのはまずい、祠の封印札にはっきりとパドゥーの名が――!!

 リボルの意識とは裏腹に体はすいすい岩をよじ登り、祠に近づいていく。とうとう岩を登り切り、その頂に安置されている祠の扉に手をかけた。

 札で封印されていた扉はあっさりと開いた。おそらく経年劣化で封印の力が弱まっていたのだろう。

 もっとがんばれよ当時の術者! でも千年以上もったんだからすごいよ自慢していい! けどやっぱりもっと強固なのにして欲しかった!

 泣きわめくことすらできないリボルは、祠の中の生首と目が合った。


「よく開けてくれた。褒めてやろう」


 あんぐり開いた生首の口がリボルの喉を


***


「フ、フフ、フハハハハ!」


 生首は噛み切った人間の首を放り投げ、残った胴体を自分の体にした。しかし、自分の体ではないため本調子にはh所度遠い。一割も力が出ない。

 けれど、ようやく自由に動き回れる体を得た生首――パドゥーは高らかに哄笑した。


「ようやく! 封印を解いてやったわ! 塵芥クズ共め! よくも、よくも我を千年も封じてくれたな! 褒めてやるわ、皆殺しだ!」

「まあ、それはいけません主様ぬしさま


 聞こえた声にパドゥーはぴたりと笑いを止めた。ゆらりと視線を巡らせば、蜘蛛女がパドゥーの視界に入った。

 白い肌、白い髪、嫋やかな人の体に蜘蛛の胴。かつてパドゥーの右腕を務めたシェトゥがそこにいた。


「そのようなことをしても無意味でしょう」

「シェトゥ! 貴様よくものうのうと我の前に姿を見せられたものだなァ!!!」


 パドゥーは怒りに任せて腕を振るった。けれど全盛期には遠く及ばぬ体を用いての魔術は簡単に躱される。

 かつて油断していたとはいえ、十全の状態でも相性の悪かった相手だ。今のパドゥーがシェトゥに敵わないのは明白だった。

 それでも攻撃をやめる理由にはならず、パドゥーは当たらない魔術を放ち続ける。ひらりひらりと避けていたシェトゥの手がいつの間にか二対になっているのに気づいたパドゥーは慌てて移動しようとした。だが。パドゥーの体は最早ぴくりとも動かせなかった。

 シェトゥはパドゥーの知る蜘蛛女の誰より糸の扱いが上手い。糸の色や太さを変えることなど朝飯前で、罠をかけて動きを封じるのも、糸を巻き付けた相手を操るのも上手かった。それを誰よりも知っているのが自分であったのに、糸を繰るための二対の腕を見るまで忘れているとは!


「この、放せッ! 最強と謳われたこの我がァ!!」


 沸騰した怒りのままに叫んでも身動きはできず、近づいてくるシェトゥを見ているしかできない。このまままた封印されてしまうのか、いや最後の最後にシェトゥの首を噛み切るくらいはしてやる、と歯を食いしばったパドゥーの両頬にシェトゥの手が添えられた。そしてそのまま口づけられる。


「………」


 いきなりの展開にパドゥーはしばし茫然とシェトゥを見つめた。怒りの炎に水を浴びせられた気分だった。さらに大層嬉しそうなシェトゥの笑顔もそれに拍車をかけた。燃え盛っていたものはすでに燻る焚火ほどになっていた。


「……今更ご機嫌取りか」

「いえ、わたしがしたかっただけです」


 言いながら、シェトゥはパドゥーの首をリボルの体から取り外す。そうしてどこぞに転がっていたリボルの首を元通り体に付けなおした。丁寧に糸で縫い合わせ、治癒術までかけている。


「おい! それは我の体だぞ!」

「違います。この子の体です。なのにこんなにしてしまって、ご無体をなさる。あと少し遅ければ死んでしまうところでしたよ?」

「人の子に甘いのは相変わらずか」

悋気りんきのも嬉しいですけれど、ほどほどになさってくださいまし」


 舌打ちをしてもシェトゥは怯む様子はない。鼻歌交じりでリボルの首を治療している。邪魔をしてやりたいが、首だけでは絶対にシェトゥに勝てないと理解しているため、パドゥーは機嫌の悪さを表情に出すしかできない。


何故なにゆえ裏切った、シェトゥ」

「裏切ってなどおりませんよ」

「裏切っただろうが。お陰で見よ、この無様な姿を!」


 治療を終えたシェトゥが小首を傾げる。


「無様などとは思いませんけれど……。だってあのままだと貴方様は滅ぼされてしまうのですもの」

「なんだと?! 我が人間如きに滅ぼされると思うたのか!」

わたし能力ちからはよくご存じでしょう」

「…………」


 柔らかく微笑まれて、パドゥーは歯ぎしりをした。

 シェトゥの能力は糸を手繰ることだ。己で作り出した糸だけではなく、触れらるならば運命の糸さえ手繰れる。手繰った糸が見せる未来を垣間見ることすらできる。パドゥーもシェトゥの能力に幾度も助けられてきた。

 しかし、その能力は絶対ではなかったはずだ。


「我が人間如きに滅ぼされてたまるものか!!」

「ええ、そうですとも我が君。人間ヒトが貴方様を滅ぼせるはずはありません。けれど、可能性は皆無ゼロではありませんでした。貴方様のいない世界など考えたくもございません。どんな僅かな可能性だとて無視はできませんでした。

 貴方様が人間ヒトを殺せば殺すほど貴方様が人間に滅ぼされる可能性は上昇していきました。ですから、人間に貴方様が滅ぼせぬと思い込ませ、封印をさせるためにはわたしが貴方様を裏切ったように見せる必要がありました」

「…………」


 腹の虫は到底収まらなかったが、パドゥーは取り合えず口を閉ざした。シェトゥが考えに考えて出した策ならば、おそらくそれが最善だったのだろう。だからといって、容易く許す気にはなれないが。

 仏頂面を晒すパドゥーの髪をシェトゥがゆっくり、ゆっくりと梳く。


「………もっとやりようがあったのではないか。事前に話ておくとか。だいたい、我と千年も離れて平気だったのか? 薄情な奴め」

「貴方様にお話すると激昂してさらに人間を殺そうとなさるのですもの」

「………」


 図星を突かれ、パドゥーは黙るしかなかった。


「貴方様に触れられぬのは寂しいけれども、貴方様が滅ぼされてしまうよりはずっと良い。貴方様のいない世界を生き続けるよりはずっと良いのです。貴方様の目覚めを待つのはいつものことですもの」

「……」


 シェトゥはパドゥーの髪を梳きながら微笑む。封印される前も、たしかに眠るパドゥーの側に侍るのがシェトゥは好きだった。


「それに貴方様が蛇蝎の如く人間を嫌っていても、わたしはそれほど人間が嫌いではありませんもの。子どもは特に。かわいらしゅうてたまりません」


 思い返せばシェトゥは人の子が好きだった。パドゥーが人間の村々を焼けば必ず生き残った子どもを助けては面倒を見ていた。人間など皆殺しにしてしまうのだから無駄な事を、と思っていたが、もしやあの頃からすでにこうなるとわかっていたのだろうか。シェトゥは瞳が八つもあるせいか、すこぶる先見さきみが得意なのだ。


「……それでこれからどうせよと言うのだ。どうせ人を殺すなと言うのだろう」

「わかって下さるのですか、我が君」


 パドゥーは鼻を鳴らした。首を抱えられたままで恰好はつかない。


「どうせお前は我より人の命のほうが大事なのだろう」


 あらまあ、とシェトゥが笑う。ころころと声を立てて、寝ているリボルの頭を撫で、それからパドゥーの髪も撫でる。


「たしかに人の子は大事ですけれど、貴方様よりも大事なものなど」


 そう言って、シェトゥはパドゥーに頬ずりをした。


「ほれみろ。ない、とは言い切らぬではないか」

「ホホホホ」


 再び誤魔化すように撫でられて、パドゥーはあからさまに機嫌を悪くした。


「我が君。人を殺さず、静かに暮らしましょう。山奥にでも籠り、誰にも知られずに暮らしましょう。そうすればわたしは貴方様を永遠に喪わずに済む」


 目を細めるシェトゥにパドゥーは牙を向いて笑ってやる。


「山奥に引き籠って暮らせと言うのか? 誰にも知られず、何もせず? それは死と同義ではないのか」


 声を荒げたりはせず、けれど首だけでもなおパドゥーは赫怒の炎を瞳の中に燃やしていた。今にも自分の喉元に食らいつかんばかりのパドゥーに、シェトゥは困ったふうに微笑を返す。


「我が君は隠遁生活が気に食わぬと見える。なれば、如何いたします?」

「知れた事! 人間共に我の存在を知らしめ、再び恐怖のどん底に叩き落としてくれる!」

「人殺しはいけませんよ」


 にこにこと笑うシェトゥが指先に力を込めれば、パドゥーの頭に圧力が掛かった。シェトゥが自分を滅ぼすはずはないが、頭しかない今、頭を破裂させられるはご免だったので、パドゥーは慌てて口を噤み、それから妥協案を考えた。


「……では人間共を恐怖に陥れるために魔物を育成して放ッ」


 みしり。


「………ッ。人間共に我が復活したことを知らあッ」


 みし、みしり。


「我が名を人間共に知らしめるのも駄目なのか……」

「貴方様の名前は有名ですから」


 シェトゥの言葉に少しだけ気を良くしながら、パドゥーは瞳を伏せた。


「殺しは駄目、名を名乗るのも駄目、どうせよと言うのだ……」

「パドゥーの名は有名すぎますので、別の名を名乗りましょう。ノニエ、など如何でしょうか?」

「…………パドゥーより知られておらなんだが、仕方ないか。これからはノニエと名乗ることにする」

「お気に召したのならよろしゅうございました。

 人に威力を示したいのであれば、人間を殺さずとも強大な魔物獣を屠ればよろしいのです。今でも地形を変えてしまうような魔物獣はそこらにおります故、それらを打ち倒せば人は貴方様を畏怖しましょう」

「ほほう。そうか」


 それは悪くないな、とほくそ笑むノニエは、はたと気づいて口をへの字に曲げた。


「お前の考えに乗ってやらんでもないが、我のこの有様ではちと恰好がつかんぞ」


 今のノニエは生首だ。首ひとつでも魔術を使えばどんな魔物獣が相手でも遅れは取らないが、人間を恐怖させるのならば、やはり見た目も重要なのだ。生首がいくら凄んでも恐怖の対象にはなるまい。おまけにシェトゥに抱えられているノニエなど、かわいらしいだけだ。


「そうかもしれませんね。でしたら各地に封印された貴方様のお身体を探しに参りましょう。全ての身体を取り戻せば全盛期の貴方様の力がお戻りになるでしょう」

「フハハハハ! そうだな! して、残りの藁の身体はどこだ?」

「存じ上げません」

「……は?」

「存じ上げません」


 ノニエは間の抜けた顔でシェトゥを見上げる。シェトゥはひたすらににこにことしていた。


わたしの気が変わって貴方様を復活させられては困る、とのことで、頭部しか封印場所を任せていただけませんでした」

「…………ぐぬう。それも道理よな」


 両手があれば頭を掻きむしっていただろう。ノニエは唸り声を上げた。


「どうするのだ、シェトゥ。それらしい場所を探して回るのか? そんなまだるっこしいのはご免だ!」

「大丈夫です、旦那様。この子は考古学、わたしたちの生きた時代の研究を生業にしているそうですから、この子に聞けば疾く貴方様のお身体も集まりましょう」

「おお、そうか! なればそこな人間を早く目覚めさせろ! 一刻も早く我の身体を探ねば!」

「我が君は無茶を仰る。今しがた胴と首の離れた人間がすぐさま目を覚ますとお思いか。今しばしお待ちになって下さいませ。ゆるりとシェトゥと語り合って待ちましょう。それとも貴方様はシェトゥと話すのはお嫌ですか?」

「……フン。まあ下等生物に我らと同じようにしろ、というも無理な話か。好きにしろ。お前のお喋りも暇を潰すくらいはできる」


 不遜に言い放つノニエに微笑んで、シェトゥはノニエを待っていた千年を超える時の話を語り始めた。

 リボルは目覚めた後に苦難と珍道中が待っているとも知らずに、こんこんと眠り続けていた。

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考古学者とアラクネと悪魔 結城暁 @Satoru_Yuki

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