第4話:売名人心掌握・王太子視点
極悪非道な偽聖女アリスがその本性を現しだした。
本当の聖女だと愚かな民に売名するために、施しを始めたのだ。
これはとても危険な兆候で、直ぐにアリスを殺さねばならんのだが、キャスバルの馬鹿が、そんな事をすれば民が一揆を起こすと頑強に反対しやがる。
一揆を起こした民など皆殺しにすればいいと言ってやったら、そんな事をすれば多くの貴族士族が王家を見放し、叛乱が起こると言いやがった。
どいつもこいつも忠誠心のない愚か者共だ!
本当の聖女を頂いた我らが正義だということが分かっていない。
正義が勝って悪が滅ぶのがこの世界の理ではないか!
「では王太子殿下、遊興費のために年貢をあげた王太子殿下や方々と、年貢が払えなくて奴隷に売られそうになった民を助けたアリス、どちらを民や貴族士族が正しいとみるでしょう?」
「それ、それは、それはそう、本当の聖女オリビアのためだ。
聖女オリビアに、聖女に相応しい身嗜みを整えていただくのは、聖女の加護で護られている王国民の責務である。
責務を果たさない民が悪であって、私達は貴族として当然の事をしたのだ。
それに、偉そうに言うお前だって、聖女オリビアに宝石を贈ったではないか」
「私が贈った宝石は、私が魔境で稼いだ金で買ったのです。
年貢を上げて民を苦しめて集めた物ではありません。
王太子殿下や他の方々と同列に扱わないでください。
それは貴族として恥ずべきことですから」
「おのれ、おのれ、おのれ、おのれ、言いたい放題言いやがった!」
「当然ですよ、王太子殿下。
私は聖女オリビアに惚れて、聖女に相応しい求婚をしているのです。
民から食料を奪い、娘や妻を奴隷に売らねばならないように追い込んだ腐れ外道を、聖女様が結婚相手に選ぶわけがないでしょう。
私は殿下や方々に何度も申し上げたはずですよ。
民を苦しめた金で買ったプレゼントを喜ぶ聖女様はいないと。
それを聞かず、競い合ってプレゼントを届け、年貢を上げたのは殿下たちです。
ねえ、聖女オリビア」
「はい、その通りですは、キャスバル様。
私は何度も必要ありませんと申し上げました。
民を苦しめて買った物は受け取れないと申し上げました。
ですが止めてはくださらず、プレゼントを届け続けてくださいました。
本当は受け取りたくなかったのですが、民を苦しめてまで買ってくださったプレゼントを、捨てる訳にもいかず、仕方なく受け取らせていただいていたのです」
ああ、本当に奥ゆかしい人だ、聖女オリビアは。
それに比べて悪女アリスのなんと狡猾な事か。
だが、俺たちの所為でオリビアの名声に傷をつけるわけにはいかない。
だが今更年貢を低くしても、恩知らずの民はオリビアを悪く言うかもしれない。
そんな事を言わさないようにするには、殺して口を封じるしかないな。
うん、そうしよう、疫病が流行った事にして、民を皆殺しにしよう。
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