第3話:内輪もめ・忍者頭キャスバル視点
聖女様はとても楽しそうに過ごされておられる。
愚かで身勝手な貴族達のいる王都から離れられたことを、心底喜んでおられる。
愚かな王太子達は、聖女様が追放された事に怒り復讐するだろうと考えているようだが、それこそが、普段から貴族としての義務を果たさず享楽に耽っている証拠。
貴族の義務を果たしていれば、その苦しみは並大抵のものではない。
この場でそのような、貴族の責任を果たしていない者たちと同席し、多くの人から同類と思われるのは、恥ずかしいし苦痛でしかない。
「オリバー、疲れた、代わってくれ」
「……はい」
愚かな王太子も、強欲なフィンドデール公爵家のオリバーも、直ぐに疲れたと言って監視の役を他人に押し付ける。
いや、俺以外の全員が、偽聖女オリビアのいない時には、手を抜き楽をしようとするのだから、その浅ましさに嘲笑を浮かべそうになってしまう。
本当に貴族に相応しくない屑ばかりだ。
こんな王国など、とっとと滅ぼせばいいと思うのだが、スミス公爵も辛抱される。
「今日は体調が悪い、代わってくれ、キャスバル」
「ああ、いいぞ、魔力が少ないのはどうしようもないからな」
身分しか自慢するところのないオリバーが、俺の言葉に眼を三角にして怒っているが、自分がろくに監視をせずに見張り役を押し付けた手前、何も言えない。
ここで変な事を言えば、俺がその事を偽聖女に伝えて、恋愛競争を有利にしようとすると疑っているのだろう。
誰があんな腐れ毒婦に惚れるものか、全てはお前らを騙すための演技だよ。
聖女様を監視するためにこいつらが用意した使い魔は特別製で、個人が普段伝言だけに使っているモノではない。
いざとなれば戦闘や暗殺にも使える特別仕様だけに、消費する魔力がとても大きいので、日頃鍛錬をしていないこいつらではろくに扱えないのだ。
しかも遠距離を使役するから、集中力も桁違いに必要になる。
まあ、そのお陰で聖女様が殺される不安がないのも確かだが。
「おい、キャスバル、腐れ女のアリスはどうしている。
何か悪巧みをしているのではないだろうな?!」
思わずオリバー殴りつけそうになるくらい腹が立ったが、ぐっとその怒りを飲み込んで、逆にその怒りを叩きつける話をしてやった。
「はぁあ、何を言っているんだ、オリバー。
そんな危険な兆候があるのに、自分が監視をせずに俺に押し付けたのか?
そんな危機感も真心もない行動をしていて、よくオリビアを愛していると言えたものだな、この事は間違えることなくオリビアに伝えないといけないな」
「お、こら、止めろ、馬鹿!
俺は公爵家の跡取りで、お前は侯爵家の跡取りでしかないんだぞ!」
ふん、愚か者が、お前が公爵家を継ぐことなどないのだよ。
まあ、いい、好きに言わせておいてやる、もう殺されることが確定しているのだ。
それよりも問題は、俺がいないところでオリビアがこいつらを煽る事だ。
性欲を刺激されたこいつらが、オリビアに煽られて暴発したら、聖女様が危険だからな、問題はどうやって四六時中こいつらを監視するかだが……
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