第一章 衝撃的な出会い 第二話
前世で「お前は
「その野生児みたいにすぐ怒って行動する
これは前世のお母さんの言葉だ。なかなか
前世の悪癖は今世でも引き
──ロータス殿下にお
「………」
「………」
殿下も私も無言で顔を合わせる。
私は顔から血の気が引いていくのがわかった。
なぜ彼に横抱きされているのか。答えは単純。落下した私を
おかげで私には怪我ひとつないが、飛び蹴りした相手に助けられた
やだ、私、とんでもなくかっこ悪い。めちゃくちゃ
ああ、さようなら私の首。今世でも
私が使用人達への
「うむ、
殿下の言葉にハッと正気に
ロータス殿下は私に怪我がないかだけ
「しかし、
ハハハ、と殿下は
無礼な行動を
いま引き下がれば不敬な飛び蹴りを許してくれそうな
……だけど。
息を切らしてこちらに走ってきているリリアを見て、私は腹を
「……助けていただきありがとうございます、ロータス殿下。しかし、
私は地面に
殿下の楽しそうな声が頭上から聞こえた。
「許す。
私は顔を上げて、殿下と目を合わせる。
「
「恨み言だと?」
予想外だったのか、殿下がきょとんと呆けた顔をする。私の言葉の意味がわからないのだろう。
そんな殿下にやっぱり腹が立って、私は
「はい。殿下が招待なさったご令嬢の一人が、殿下の
「………」
殿下は何も言わない。ただ燃えるような赤い
続けろということだろう。私は殿下の
「此度の
言葉を一度区切る。周りからの視線が痛い。殿下からの圧力が
それでも。だからこそ。
私は、進言を続けた。
「殿下は
遠くから父の
「私達は臣下でございます。王が死ねと命じられたのであれば喜んでこの命を差し出しましょう。しかし、その関係が成り立つのは、王が臣下に誠実である場合のみです。ロータス殿下。私達も人でございます。どれだけ王に
最後まで言えなかったのは、父が私の頭を押さえつけてきたからだ。額が地面にくっつくような姿勢を
「申し訳ありません! ロータス殿下! 至らぬ
父の
それはそれとして、これで終わるつもりなんてさらさらないけど。
私が口を開こうとすると、父はそれを察してか頭を押さえつける力を強くする。こういうときの
すると、私の頭上からロータス殿下が言った。
「サベージ
「し、しかし」
「余はいま、其方の娘と話をしているのだ。貴公は少し
口調こそ
父は
「それで、其方は余に何を望んでいるのだ」
殿下の微笑は天使のような微笑みだ。同い年だというのに思わず
「私達に、殿下の誠実さを示してください」
殿下は少し困ったように
「しかし、余には其方が申す誠実さというものがわからぬ。それが何か、教えてはくれないか?」
「それは──」
自分で考えてください、と言いかけたとき、気がついた。
殿下の目が、面白がっていることに。楽しそうに笑っていることに。
まるで
私の訴えが何も届いていない。この人は、私が言いたいことをまったく理解していないんだ。
これだけ訴えても、周りを見てくれないんだ。
「お、おい」
私が立ち上がると、父が
「うむ? なん──」
バシン!
上がる悲鳴。背後で父が倒れる音。
赤くなった頬を押さえた殿下が、
私はもうほとんど本能のまま、殿下へと怒鳴っていた。
「そういう態度が、誠実じゃないって言ってんのよ!」
殿下がパチパチと
私は彼の
「ご覧になって。ここにいる人達はあなたに命令されて集まったのよ。
木にぶら下がっていたときの
「
ロータス殿下は私の言葉に顔を真っ赤にして、
「な、なんだと!? 余は至って
「他人に不都合押し付けて、自分の都合はわかってもらえると思ってんの!?」
すかさず反論する。殿下は
「そもそも、殿下は私に反論する前に言うべきことがあるでしょう!? ふざけていないというのなら、彼女らにしかるべき態度を取ってください」
バッと後ろで遠巻きに見ているご
その光景に殿下は、うっと言葉を
「余、余は悪いことしてないもん……」
「あ?」
思わず聞き返す。なに? この
私の心の声が聞こえたのか、殿下はびくりと震えたあと、うつむきながら何かを
「……なさい」
「聞こえません」
腹から声出せ。
ロータス殿下は顔を上げて、赤い
「──ごめんなさい!」
そして殿下がわっと泣き始めると、中庭の風景が
「……えっ?」
ジャングルはどこいった?
私がきょろきょろと辺りを
「ほ、本当は……ぜ、全部、まやかし……
「ま、まやかし……?」
殿下の言葉で頭に上っていた血が元に
よく周りを見れば、ボロボロだったご令嬢達が元の姿に戻っている。リリアも同様だ。泥だらけだった彼女のドレスは、シミひとつない新品へと変わっていた。
リリアの変化で、私は気がついた。
あれ? もしかして私、とんでもないことやらかしてない?
「い、
私は
「で、でも、ここまで、怒られるとは、思ってなかっ……ごめんなさい、ごめんなさ──」
殿下は
ロータス殿下の
頭の中に、ポツンポツンと単語が浮かんでくる。
早とちり。
不敬すぎて
ギロチン再び。
バイバイ私の首。
来世も人間が良いな。
今世に別れを告げている
そうだ。何の取り
私はそのことに気がつくのと同時に、
「──ロータス殿下あああ! ご無事ですかあああ!?」
「──申し訳、ありませんでしたァ!!」
□■□
前世は
そんな現実
「ちゃんと聞いておられますか? アザレア
「ええ。わかっております。
「何ひとつ伝わっていませんね。よろしい、もう一度最初から説明します。今度はしっかり聞いていてください」
中庭でロータス殿下を泣かせたあと、
うん。なんで?
いろいろとやらかした後だから父や
中庭に騎士団長のクリーク様が
だって、ロータス
私が「世話になった使用人達にせめて
「クリーク……そこの
エルメット様も
クリーク様が用は済んだと執務室から出て行くと、エルメット様は私を
そして、何故かロータス殿下の生い立ちを聞かされるはめになったのだ。
「殿下は三つで大陸言語を全て覚え、五つで古代言語を
殿下の
あれかな? お前はそれだけ
「良いですか? はっきり申しますと、王太子殿下は
話半分に聞いていたところ、突然エルメット様が話の
「
エルメット様のメガネが
「……そして、嵐に
背後から飛んできた声に、私は
初老の女性だ。その高貴な人物には見覚えがあった。
「ガブリア陛下!?」
私は椅子から跳ねるように立ち上がった。エルメット様も立ち上がり、
「そんなに
一国の王妃を前に楽にしろという方が無理です。
私が突然のことに
「余もおるぞー」
国王であるラインハルト陛下はのんびりとした態度で執務室に入室してくる。
そして、私の向かい側のソファにお座りになった。続いて、王妃陛下も
え? 何が起こるんです?
王族自ら
私が混乱していると、王妃陛下が
「アザレア嬢、おかけになって。
ガブリア王妃が暗い顔をすると、
「中庭の件は、この遠見の術で全て
あっ。やっぱり手討ちですか。
私が両陛下へ土下座をしようと腰を
「──逃がしませんわよ! 念願の娘を!」
「はい?」
続いてラインハルト陛下も私の肩を掴んだ。
「うむ。これだけ
「はい?」
いま、なんて仰りましたか。
王妃? 誰が?
『アザレア嬢』
お二人が同時に私の名を呼んだ。私の肩を掴む手が強くなる。
「あなたほどロータスに
「うむ。ゆえに、ラインハルト・クル・カボスとガブリア・クル・カボスが命じる」
両陛下はまたもや口を
『ロータスの婚約者となりなさい』
……はい?
元・傾国の美女とフラグクラッシャー王太子 転生しても処刑エンドが回避できません!? 瑠美るみ子/角川ビーンズ文庫 @beans
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