第34話 国王謁見 IN 王宮




 王都中央駅では、どんな大騒ぎが待っているかと、喧々諤々だったが意外と静かなもんで拍子抜けだった。

 

 後で聞いたら、おれたちの王都訪問は厳重な警備な元、到着当日も中央駅への出入りは制限されたようである。


 駅のホームに降りたとたん目に入ったひときわ大きな『ユウ先生!王都へようこそ!』の電光掲示板もどきには、皆苦笑してた。


「もはや王都でも有名人ですね、師匠」


 ランボ君、君だってがんばれば同じように行けるよ?



「いえ、ぼくは今のままで十分です。師匠の後をこっそりついていきますよ」


 弟子を守ることも師匠の義務だわな……



 ひっそりしてい過ぎじゃね?っていうくらい静かな中央駅構内では、王宮からの出迎えの方々と対面。


 侍従長だという美人さん(三十代後半らしいが見た目は二十代後半)と護衛の三人の四人だけが、おれたちの出迎えの総勢である。


「拍子ぬけされましたか? ユウ先生」


「あ、いや、カルム学園、算術教師のユウです。出迎えありがとうございます」


「噂にたがわぬ、礼儀正しい吾人なのですね。失礼しました。ミラージュ王国、王宮侍従長のエトランジェと申します。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


 護衛の三人も一緒に頭を下げる。


「早速ですが、宿舎へとご案内いたします。本日のところはそちらでお休みいただき明朝お迎えに上がりますので、何かご不便があれば、こちらの護衛の者たちにご用命ください」




 というわけで、早速おれたちは宿へと案内された。


 護衛の三方も、もちろん女性である。こちらの護衛十人とは違いいかにも『騎士』ですよ~の雰囲気ぷんぷんだ。


「わたしたちもこんな無粋な恰好じゃなくて、ミニスカの方がよかったんじゃ……」

「失敗です……完全に…… 情報部の責任を後で糾弾します」

「いや~ こんなんじゃ! とても女を武器にできません!」



 ああ、聞こえてるから……君たち……



 その護衛騎士団三人と、護衛としての最低条件を備えつつもお色気むんむんの十人とは、全く勝負にならんな…… 素ではどうかわからんけどね。


 いや待て、この三日間で十人ともそうだが、他の秘書二人とエクレールさんのお色気度が、すんごくアップしているような気がするのはおれだけ?


「いえ、ぼくの目から見ても全く違います。いい女に変化していくってのはこういうことなんだと勉強になりました」


 ランボ君でもそう感じるってことは、相当なもんだな……


 ミニオンがちょっと悔しそうなのは…… まあいいか、放っておこう



 さてさて宿はというと…… 超豪華でした…… どのくらい豪華だったかというと、前世での最高級ホテルの三倍くらい豪華だったと言ったら伝わるかな?……


 言葉では表現できないくらい豪華だったさ。


 超巨大ベッドに、おれと秘書二人、エクレールさん、ミニオンの五人で一緒に寝ましたわ。


 ランボ君は個室の小さなベッドで寝たようですね…… 詳しく知らん、好きなようにしてくれて結構だ。


 次の機会には「わたしたちも」と護衛の美人さんたちに懇願されたのは言うまでもない。


 明日の謁見に備えて早めに寝よう! 今夜も添い寝、添い寝! うひょ~ きんもちええですよ! もち、えっちはありません……




 


~学園職員全体会議~


「職員の皆さん、宴会ご苦労様でした。皆さんのおかげで、なんとかユウ先生の懐に職員一名、護衛職員十名、生徒からも一名を輩出することができました。今後ともユウ先生に手を出していただけるよう皆さんの努力に期待します」


 ユウ先生歓迎会のお疲れ会である。

 学園の職員がほとんど顔を見せている。

 校長も当然出席だ。


「ユウ先生に、これからもあちこちからちょっかいを出してくる奴は、後を絶たないだろう。だが我々は同じ職場で働いているというアドバンテージを握っている。これを生かしてなんとしても彼の『右隣の地位』をここにいる誰でもよい、握って欲しい」



 校長の言葉にも力が入る。


(わしだけでもいいんじゃがのお…… まあ若いからそういうわけにもいかんじゃろう。ふふふ)



 今回いろいろあぶれたと感じている職員は戦略戦術の練り直し、デート券等をゲットしてすでに次の機会を約束されている職員は、今度こそはと虎視眈々とこちらもおしゃれやユウ先生の好みの分析に余念がない。


 君たち、仕事はほったらかしていないよね? って突っ込みたくなる状況である。







~生徒会役員会議~



「抽選会の日程も決まり、告示内容も公開しました。ユウ先生が戻られるまでにはしっかりメンバーを決定して、選抜された三十人と綿密な打ち合わせを行いたいと思います」


「わかりました。スケジュールに沿ってお願いします。これは、わたしたちの将来にも関わる問題です。いい目をみるのを職員だけにさせておくのは許せません! 生徒とは言え、卒業すればなんの制約もなくなります。これは学園職員とわたしたちの『戦争』ともいえるし、『共同戦線』とも言えます。なんとしてもユウ先生を確保できるよう皆さんの努力に期待します!」

  

 生徒会長および生徒会役員のある日の会議の一幕であった。





*****


 王宮ではついに謁見!となりました。


「よい、面(おもて)を上げよ。そちが巷で有名な『ユウ先生』かな?」


 国王陛下……推定年齢三十の女帝でした。


 その名は『ブルジュオン』


 実年齢は後で聞いたら、五十代一歩手前。なんという『美魔女』ですか……


 これでも王女を十人以上出産しているという驚きである。


 旦那? ああ、王配ね…… あまりの過酷な『籠の鳥人生』に嫌気がさして出奔したらしい。現在捜索中らしいが、行方不明である。



「はい、ユウと申します」


 女帝様とおれとの化かしあいの始まりである。


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