第33話 魔道列車の旅、最終日……ついに王都へ
なんだかんだでもうすぐ王都へ到着である。
魔道列車では、みんなと駅弁を食べたり、時々弟子四人に数学の講義を行ったり、空手部顧問として軽く練習相手になってやったり、実にのんびりと過ごせた旅だった。
停車駅に止まった際の騒ぎだけが、逆に現実に引き戻されるかのような三日間だったな。
もちろん旅はまだ半分も終わってないんだけど、護衛含めて女性陣すべての方から盛大にお礼を言われた。
「こんな濃密な経験は、女十人分の長さを生きてさえあり得ません。それをもうすでにユウ先生からいただきました。この先ユウ先生とは縁が切れたとしても、今回ここに参加させてもらったみんなが一生思い出を胸に生きていけます。ありがとうございました」
いや、まだまだ旅は続くし、帰れば帰ったで学園で一緒に仕事するわけだし、こちらこそよろしく頼むよって、頭を下げたら泣きぼろめいて感激されてしまった後がまた大変だったけどね……
「なんという女泣かせのセリフ…… ユウ先生は天性の『女たらし』ですか……」
いやあ、素直に感謝の言葉を述べてるだけです。女たらしと言われてもねえ……
「わたしたちは、もうユウ先生なしでは生きていけないような気がします。もしも、もしも…… ユウ先生がいなくなった世界にって、想像しただけで胸が張り裂けそうになります!」
そんな大げさな……
「決して大げさではありません! 護衛の方たちを見てください! あの顔はすでに、いつでもユウ先生のためなら命も捧げますって覚悟の顔ですよ」
ど、どうしよう……
「ユウ先生は何も気になさらず、いつまでも今のままのユウ先生でいてくれるだけでいいんです」
は、はい…… わかりました……
おれたちご一行様はようやく王都中央駅に到着した。
~ランボ視点~
ユウ先生…… いやもうこの際『師匠』と呼ばせてもらいましょう。ぼくはもう先生の『弟子』なのですから……
師匠が顧問となっている『空手部』というのは、正直驚きました。ぼくに格闘技ができるだろうかという不安が一点。
そしてこの国の格闘技というのは、剣術、槍術、弓術が中心です。武器を使わない格闘技はほぼ存在しません。あってもそれは『噂』の域を出ないのです。
身体のあらゆる部分を使って敵を倒すという発想そのものが、この国にはなかったのです。
それだけでも驚きですが、師匠に習っている『算数』もすごいです。師匠に言わせれば、その上にはさらに『数学』が存在し、それは魔道具に書き込まれている『魔術言語』に至る道だというのです。
すごすぎます!
魔道具の魔術言語を解明できた人は、この国の歴史上では現在のところ一人もいないのです。
先生は黙っているようですが、魔術言語は何であるかはわかってるみたいです。さすがです、師匠……
同じ空手部部員となったミニオンさんは、女性ですが、男であるぼくに踏み込んでくることはありません。一定の距離を保って副部長兼マネージャーとして接してくれるので今のところ安心して、クラブの運営についての相談ができています。
これを機会に『女性嫌い』が解消で来たらいいなと思います。
こういう機会を色々と用意してくれている師匠には感謝してもしきれません。
とどめは、王都への魔道列車内での師匠の女性たちへの立ち振る舞いです。
ぼくには到底まねできそうもありませんが、いつか師匠のように女性に優しく接し、尚且つ感謝と感動をを与えることができるような『男』になれるのでしょうか?
それと驚いたのは、あれだけ女性にアピールされているにも関わらず、決して一線を越えない師匠の『鉄の意思』です。
普通の男なら、ここにいるすべての女性だけでなく、近づく女性すべてに手を出していたことでしょう。
尊敬すらしてしまいます。いえもう師匠は『聖人君子』様です。
これからも一生、たとえ将来別々のところで生活しようとも、ぼくは師匠に付いていきます。
~ミニオン視点~
師匠、いえ、ユウ先生に添い寝していただけました。
わたしがすでに疲れ切っていたためせっかくの時間を堪能できませんでしたが、それでも男性のそばで安心して寝れるということがどんなに癒されることなのかを、生まれて初めて知りました。
おそらく師匠は、わたしのことは『妹』か『娘』のように見ている気がします。
でも今はそれでも十分です。兄さえ持たないわたしにとって『兄』というものがどういうものなのかを教えてもらえたのですから……
それに在学中は変なことはできません。
でも卒業までの四年間で、わたしの『女』をもっともっと磨いて、卒業するころには『妹』からせめて『恋人候補』くらいには見てもらえるように頑張ります。
王都での旅はまだまだ何があるかわかりませんが、師匠のもとで精いっぱい勉強させてもらいますね。
おやすみなさい、師匠、いえ、ユウ兄さん……
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