第32話 魔道列車の旅、二日目
魔道列車の最高速度はおよそ四十キロほどらしい。
今回おれたちが乗っている列車は、完全貸し切り列車である。王宮からの特別招待ということでの緊急配車だ。
特急並に出来る限り停車駅をすっ飛ばしての運行ではあるが、全くの無停車というわけにはいかない。
列車の点検と補給等が必要だからである。
今回の列車の旅は、知る人ぞ知るで、途中通過する予定の全ての街から、是非滞在してほしいと要望があったらしいが、いちいち対応していたらいつになったら王都へたどり着けるかわかったものではない。
停車駅数は最低限で運行中である。
だが停車予定の駅ではその代わり大騒ぎとなった。
「ユウ様に会える! せめて一目でもお会いしたい! 出来ればお近づきに……」
そんな女性が停車予定の時間には、停車駅周辺に押し寄せたのだ。
当然周囲は交通渋滞を引き起こし、駅周辺の駐車場は満杯、道路も違法駐車で警察組織も対応できない状態であった。
そんなこととは露知らぬおれは、一つ目の停車駅での騒ぎがなんで?何かあったの?と優秀な秘書官二人に聞いてみた。
「みなさん、一目ユウ先生を見るために集まってきた女性たちですよ」
「えええっ! これ、ここに集まってる人全部ですか!」
「もちろんです。王都に近づけば近づくほど騒ぎはもっと大きくなるでしょうね。街の規模がどんどん大きくなっていきますから……」
小さな駅周辺は、ざっと概算で見積もっても数千人はいる。
数千人の美人集団である。美人ぞろいとわかっていてもちょっと怖い。
基本おれは芸能人ではないのだ。こんな光景に慣れているわけではない。
慣れることができて、この観衆の熱気を受け止めれれるようになったらおれはその時はスーパースターにさえなれるかもしれない。
「ちょっと顔を見せてあげますか? 外へでて……」
う~ん…… とても勇気がいる話だ……
「ここは今後のことを考えるとこの規模の対応は練習になるやもしれません。今後はこういうケースが増えていくでしょう。尻込みしたらそれまでです」
ドーラさん…… おれと代われるものなら代わってくれないかな…… ダメ?絶対?
「代われるわけがありません。ユウ先生はユウ先生おひとりだけなのですよ」
そうだよね、うんうん…… 覚悟してたさ。
駅のホームに降りると、あらかじめ設置された臨時の柵からこちらには侵入できない大勢の女性たちの大歓声があがった。
こりゃあどこのロックスターが来たんだよ?って言うほどの熱狂ぶりである。
危険を排除するため、ホームへ降りたのは護衛の十人を引き連れての登場である。
「きゃあ!!! ユウ様~! お願い!こっちを向いて~!」
「握手を~!」
「抱いて抱いて~」
おれは一介のの教師でしかないわけだが…… いまさらだよね……
駅舎が今にも壊れんばかりである。余計な心配か……
この街のパトカーと警官、それと救急車が総動員だったらしい。
休息が終わって駅を出発したおれたちを見送る彼女たちの何十人もが失神し、救急車で医療機関へと搬送される羽目になったからである。
「このまま王都に向かっていいのかね……おれ」
「何をおっしゃいますか、ユウ先生がもしこのまま王都に行かなくなったとなれば、この国はそれこそ大パニック、いえ大暴動が起きます!」
「そ、そうか…… それも困る」
「でも…… ユウ先生が学園に戻れれない場合も……」
「学園でも暴動だよね……」
わかってるよ、そんなことは……
次の途中駅までは、まだ数時間ある。
気を取り直しておれは、のんきに魔道列車内の展望風呂でゆっくり過ごすことにした。
ああ、もちろん交代で混浴許可しましたとも…… 今更ですよ
すっかりのぼせ上がってしまいましたが、お湯のせいだけではありません。
バスタオル越しとはいえ いいものを見せていただきましたからね……
鼻血が出なかったのは前世での実年齢のおかげだったかもしれません。
夜はのんびりと秘書二人とミニオン、ランボ、エクレールさんの六人で夕食いただきました。
もちろん添い寝は今晩も実施です。
護衛の方たちの、涙の笑顔に癒されながら寝ましたとも……
息子は爆発寸前です…… 誰かお助けを……
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