第30話 王都へ出発!

 


 一週間で帰ってくるさ…… なんて甘い、甘かったよ……おれ……


 学園の職員総勢と全校生徒に涙涙で見送られ、おれたちは出発した。王都に向かって。


 出発してから早速、優秀なる我が秘書二人、ドーラさんとシータさんにスケジュールを聞いてみた。

 ざくっとね、あくまでざくっとですよ。でも一瞬気が遠くなってしまったのは気のせいでしょうか……



「すでにお聞きのことと思いますが、この魔道列車に乗って王都までは約三日に旅となります。王都につくと、半日休息の後、王宮にて国王陛下への謁見並びに王族の方たちとの晩さん会が予定されています。さらには王都の主だった貴族の方々との交流会が…… 人数が多いため数日続くことを覚悟しておいてください」


 いや、もうそれだけでお腹いっぱいになりそうです、ドーラさん……


「さらに王立陸軍、空軍、海軍への視察、王立魔術部隊との視察交流会があります。あ、武器関連のところからも来てます」




 おれのライフPはもうすぐゼロよ……シータさん……


「それだけではありません。学術関係者との情報交換会と歓迎会、教育委員会の歓迎会、我が学園の姉妹校の視察、歓迎会……」


「ま、まだあるの?……」


「休んでる時間は今しかありません、ユウ先生……」


「婦人連盟からの招待状も来ています。極め付きは国営放送からの撮影許可の申請とインタビューを含めた取材の申し込みと番組作成のための出演交渉、そしてファッション雑誌等いくつかの出版社からも取材と撮影の申請が上がっています」


 何日かかったら終わるんでしょうか…… 


「まだまだあります。孤児院での慰安訪問の依頼、それから民間企業からはコマーシャル出演依頼と専属契約の申込が数十件舞い込んでます」


「…… いつ終わるの? それ……」


「最低でも向こう一か月、すべて消化するには三か月から半年はみないといけません」


「半年って…… ああ、やめやめ! 今回は王宮からの招待で来たわけだし、そこはカットできないけど、他はみんなぼくが学園にもどってから再度応じるというスタンスですべて断ってください」


「軍事関連はどうしますか?」


「軍関係と姉妹校の招待には今回応じましょう。それと国営放送には全部とはいかないまでもなんとか取材を受けます」


「わかりました。その線で各所に連絡してみます。再度スケジュール調整させていただきます」


 ふ~…… 全部言われるままに対応してたら学園で教壇に立つ時間がないだろうが……

 秘書二人が優秀そうで助かったよ……



 おれはあの学園で女子生徒たちと仲良く過ごして、学園の教職員とも楽しい職場を作り上げていくことが目下最優先なんだぜ。

 それ以外は今のところはお断りだ。おれはなんといっても『ただの高校教師』なんだからさ……

 たぶんね……




 その後は王都に着くまでは、王都関連の情報収集と同行したドーラさん、シータさん、それとランボ、ミニオンとのゆったりした時間を過ごした。

 そうそう、今回おれの歓迎会七回目のときに王都へのご招待を射止めたのは、学園の事務職員のエクレールさんだ。


 その三十人の中でもっともミニスカが似合っていた、ニーハイを履いていたおれ好みの大ヒット美人さんである。

 よかた…… 彼女が当てたらいいな、と実は密かに思ってたんだよね……


 魔道列車に乗ったばかりの数時間はそわそわと落ち着きがなかったけれど、皆と優雅にお茶を飲んだり、宴会の時の話で盛り上がった話などで徐々に打ち解けてくれたみたいだ。


 あの時のことは改めて礼を言われた。


 あの時、エクレールさんは、散歩して最後に抱擁……のコースに入っていたそうだ。目まぐるしく相手が変わっていたためあまり印象には残っていなかったけれど、彼女の『美脚』ははっきり覚えていたというわけだ。



 どんだけ『脚フェチ』? って話だが、おれの趣味だほっといてくれ。



 魔道列車の最高級の客室内のソファに一緒に腰かけて、清楚な脚を再び見せていただけてありがたやありがたやでございます……


「ユウ先生って、女性の脚、ほんとに好きみたいですねえ」


 え? やっぱりわかるの? 脚フェチって


「そりゃあわかります。視線がどこに向いてるかっていうのは女性は結構敏感に感じ取るものなんです」


 やっぱり胸ばかり見ていたらスケベなやつ……とかって思われるんだろうな……


「わたしは経験ありませんが、たいていの男性は女性の胸に興味がいくようですね。当然と言えば当然なんでしょうけど、この国の女性は男性に興味を持ってもらうことが最優先ですから、どんなにあからさまに見られようと気にしたりはしませんわ……」


 う~ん……おれって結構遠慮深い類なんだろうか……


「ユウ先生の好みの女性と言う意味の『趣味』については、すべての女性が最優先で情報収集している最重要項目ですよ」


 秘書のシータさんからもそう言われた。


「そんなに? おれの嗜好が大事な話なの?」


「もちろんです。ユウさんの嗜好にいかに自分を合わせて、恋人なり愛人なり、場合によってはセフレでもいいからと狙ってる女性は、星の数ほどいることを自覚してくださいませ」


 なるほど…… そうだよな…… どうもおれは前世基準で考えることから今一つ抜け出せていないようだ……


「それに…… ここにいる秘書のお二方と護衛で来られた十名の方々、ミニオンさんは生徒さんですからさすがに無理がありますが、皆さんユウ先生に迫られて拒否する人はいないと思いますよ。いえ、喜んでお相手させていただくはずです」


 え、や、そうなの?ミニオンも?


 恥ずかしそうにうなずくミニオン…… 

 それミニオン相手にやったら、死刑確実…… 最低でもけっこーんですわ……


「もちろんわたしも含めてです……わかってらっしゃるとは思いますが…… もう!先生の意地悪!」


 いや、そう思っていただけて光栄でございます。ぜひこちらからお相手お願いしたいその『美脚』……


「まあ、その辺はもっと時間を置きたいんですよ……」


「そ、その気になったらいつでも……」


 ご、ゴクリ…… いやいやだめだ…… きっと決壊したら際限がなくなる……



「と、ところでランボ君はどこへ?」


「(ごまかされた……)ええ、三日も鍛錬さぼるわけにはいかないって、別の車両で護衛の方と訓練一緒にやってるみたいです」


 お! 少しは女性恐怖症克服しつつあるのかな? そうだといいな、ランボ君……








 王都への列車の旅は続く……


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