第27話 宴会七回目は…… 名付けて、ミニスカDEプロポーズ大作戦! その三
さてメインの飲み会である。
この飲み会の前振りだった第七グループの花『恋人ごっこ』(最初はショッピングとか言ってたが……)、数日後の全国ニュースで全国民に流れてしまったのだ。
六グループそれぞれと戯れ、遊び、一時の恋人ごっこを楽しむ、おれと三十人のあの時間は 実はこっそりとテレビ局に隠し撮りされていたのである。
これは「黙ってて悪かった」と校長に後で頭を下げられるのだが、学園側とテレビ局の了解のもとで企画されていた近年まれに見るイベントであったらしい。
放送を二回に分けたため、第一回の放映では視聴率はやや低調だったものの、放送後爆発的な反響を呼び、二回目の放映ではなんと『視聴率九十パーセント』を叩きだしたらしい。
この数百年では断トツの視聴率だったとのことだ。
後で学園とおれ個人、そして三十人の美人職員には少なくない謝礼が支払われたと聞いた。
ちなみにおれは一千万円。学園には億を超える金が入り、真偽は不明だが出演した職員各々に百万円出たとかでなかったりとか……
第一回目の放送では、貴金属店でのショッピング、屋台村での出来事、ボートに乗る恋人もどきの風景
そして第二回目の放映で、散歩で手をつないで歩く風景と抱き合う姿が映ると一気に視聴率が上がり、局の回線はパンク状態。
観覧車で一旦落ち着いた状況は、最後の『お姫様抱っこ』で瞬間視聴率九十八パーセントを達成。局はじまって以来の快挙となった。
放映が終了しても電話が鳴りやむことはなく、徹夜で電話対応したそうな…… ご苦労様でした。
そんな世間を揺るがす大騒動になるとは露知らず、おれたちは昼間の恋人ごっこでお互いスムーズな会話ができるようになり、宴会も大盛り上がりだったさ。
そんな宴会も最終局面です。
「幹事です。宴たけなわではございますが、楽しかった第七回『ユウ先生歓迎会』も、もうすぐお開きの時間となります」
この世界でも挨拶はかわらんのな……
喧騒が収まり、あちこちですすり泣く音も聞こえる気がするが、宴の終わりはいつでもそういうもんさ。祭りの後の寂しさはね……
「最後ですが、ユウ先生との縁が切れるわけではありません。明日からまたユウ先生と共に職員一同しっかり仕事に励みましょう」
そうお別れ会じゃないんだよ、みんな……
泣きそうな顔をしていた女子職員も顔を上げ、やや笑顔を取り戻す。
「さて、ユウ先生には本当にここにいる皆が楽しませていただきました。感謝します、ユウ先生」
うんうんと頭を揺らすだけのおれ……
「そこで感謝の気持ちを込めて、ここにいる職員全員一人ずつ、ユウ先生にプレゼントを渡したいと思います。ユウ先生、よろしいでしょうか?」
「え、えっと……」
「もちろんプレゼントを受け取ったからと言って何も強制するつもりはありません。恋人にしてくれとか愛人にしてくれとか、結婚してくれとか…… いやしてくれてもいいんですけどね」
三十人の小さな笑い声……
おれは三十人それぞれからプレゼントをもらった。
「いつまでも友達でいてください」
「また恋人ごっこお願いします」
「抱きしめられてあの後、失神してしまったんですよ?」
「お姫様抱っこ…… 最高でした」
「二人で一緒に食べたソフトクリームの味、一生忘れません」
「もうちょっとでキスできたのにな(ポッ○ーの彼女)」
「観覧車で手を出していただけていたら満点でした、残念」
「ボートが揺れて大変でしたけど、池に落ちそうになったわたしをユウさんに支えてもらって…… わたしも一生の思い出です」
みんな目に涙を浮かべている。
おれも泣きそうだよ、みんな……
「みんなありがとう。プレゼントまでいただいて…… 今日はぼくもほんとに楽しかったです。この国に来て日の浅いぼくのためにここまでしていただいて感謝してるのはぼくのほうです」
「「「そんな、せ、ユウ先生……」」」
「この国での生活が浅いぼくが、今すぐ皆さんの『恋人』とか『婚約者』『愛人』になんてもったいないですよ。それにもっともっとこの国のことを知りたいです。ですからそんな意味も込めてぼくから皆さんへの『プレゼント』です」
「え? ユウ先生がわたしたちにプレゼントしてくれるの? なんだろいったい?」
「三十人という人数のため、皆さんすべてに同じ条件でのプレゼントというのは無理でした。でも気持ちは皆さん全てに同じものをあげたいんです。ごめんなさい」
おれは頭を下げた。
「先生…… そんな、頭さげないで……私たちこそ感謝してもしきれないんだよ……」
一人一人にラッピングされた小さな箱を渡す。
「男性から贈り物…… 初めての贈り物ゲット……」
「ラッピングは同じでも中身がちょっとだけ違います。中身の内容はランダムです。当たった方はおめでとう!はずれた方はごめんなさいです」
「先生、中身なんなのか教えてくれる?」
「中身は三種類あります」
「そうなの?」
「はい…… 一番多いのが『お食事招待券』です。ぜひぼくと二人で『お友達』として食事に付き合ってください」
「なんという…… ユウ先生とお食事……お食事……」
「もちろん食事代はぼく持ちです。もしご希望の店があればおっしゃってください」
「ふ、二つ目は?……」
「一日ぼくとデートしてください。もっともっとお互いが知り合うきっかけにしたいんです」
「で、デート! デートって『恋人』がいくデートか?」
「それ以外のデートは知りませんが、とりあえずは『お友達』からということでお願いします」
「三つめは、三つめはなに?」
「これは三十個のプレゼントの中で一枚しか用意していません。内容については校長先生の了解を得ています」
おおっというどよめきが、皆の緊張した気分を一気に高みに上げる。
「ぼくといっしょに『王都』へ同行お願いします」
「なんですって?!!! ユウ先生と王都へ行けるの? 一緒に! 何日もかかるんでしょ? それに同行できるの?」
「さすがに二人きりというわけではありません。ぼくの秘書として任命されたお二方とぼくの弟子である二人の生徒、それに護衛が十人ついてきます」
「それでも、それでも! こんなチャンスは一生ない! いえ、何度生まれ変わってもない、ない!」
「幸運と言えるかどうかわかりませんが、それぞれがお互いには内緒で何を引き当てたか、ぼくに教えてください。余計なやっかみとかを防ぎたいのでよろしくお願いします」
その後の宴会も大騒ぎである。
「最低でも食事ご招待…… でも当たれば一緒に王都…… このラッピングを開けるのが怖い……」
三十人が三十人とも、この場でラッピングのリボンを解く人は一人もおらず、引きつった笑顔の三十人と一人の第七回歓迎会は幕を閉じたとさ・・
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