第18話 魔術総論って……




「…… というわけで太古からアーティファクトは利用されていたとはいえ、その原動力となっているらしい『魔術言語』については全く解明されていません」


 というわけでこの世界で根本的にはなにも理解解明されていない『魔術言語』の比較的簡素なものが書かれた紙が、講師の後ろの黒板に貼り付けられた。


 眼鏡美人講師の目がおれに向けられる。


 あれってやっぱり『偏微分方程式』だよねえ…… さんざん前世の高校大学でやらされた数式だよ。


「偏微分方程式ですね、それ」


「え? 偏微分方程式って? なんでしょうか?」


「いや、だからそこに書かれているのは偏微分方程式なんですってば……」


「ユウ先生はこの言語を理解できるんですか!」


「ええ、まあ、多分…… そこに書いてあるのはそれほど難解なものじゃありませんよ」


 講師とおれの会話を何となく聞いていたすべての聴講生から一斉に驚きの声が上がる。


「なんと…… 誰も解明したことのない『魔術言語』をユウ先生は理解できるって言うんですか!?」


「ええ、なんなら証明してみましょうか? その方程式なんに使われているんでしょうか?」


「この魔術言語は、探索系の魔道具に使われているものです。これがその魔道具です」


 なるほど…… この魔道具は一種のレーダーみたいなものだ。


 であるなら、ここをこうして書き換えてやれば……


 おれは教壇の黒板の上に貼られた数式の一部の書き換えを指示して、魔道具を再起動してもらった。


「そんな…… そんなに簡単にいじって大丈夫なんですか?」


「ええ、大丈夫ですよ。おそらく今の書き換えを組み込んでくれれば、その魔道具の探査範囲は距離にして二倍、探査面積は四倍になるはずです」


「二倍……四倍……」


 ああ、掛け算すら知らない文明程度では二倍とか四倍とかも通じないのだろう。


「す、すぐに検証させます!」


 眼鏡美人講師は、授業を放置してあっという間に教室を出ていった。


 授業時間はまだあったので、残り時間はおれと周りの女子生徒とのおしゃべりタイムとなった。

 決してエロエロタイムじゃありませんよ、ほんとに。


「ユウ先生、すご~い!」


 教室にいた女子生徒全員の尊敬の眼…… 



 この今日の一件が後日おれが王宮に呼び出される原因になるんだけれど、それはおれにとっては想定内の話。


 いくらおれだって、この世界のほぼすべてを賄っている『魔道具』の中枢部分の解析ができるって知ったらほっときませんて……そいつを


 おれがこの世界でやってみたかったことは、高校の数学の先生になって、女子高生にかこまれてイチャイチャラブリーな生活、いやでも手は出しませんよ。


 それとせっかく数学の才能とこの世界で未知の知識を使って、『数学者』になってみたかったというのもある。


 いずれ、このままいくと王宮で『宮廷魔術師』かなんかに任命されたりして、この国に囲われてしまう可能性は大なのだ。


 なるようになれ、としかおれは思っていない。


 臨機応変と言う名の考えなしなんだが、それも面白いと思ってるだけだ。


 でもなあ…… もっと一線を越えたお付き合いもしてみたいんだよねえ。せっかく美少女、美女ばっかり、それもおそらくほとんどが男を知らない……


 おれが調教すれば、やりたい放題な訳で…… 


 一旦歯止が効かなくなると、その後が恐ろしいので今はおとなしくしているだけだ。


 

 終業間際に美人講師が戻ってきて、後で校長室へ行ってください、とお願いされた。


 さてどうなることやら……

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