第17話 いつまで続くんですかね……
「すまんかったの、おぬしには申し訳ないとは思っておる」
週明けに校長室に呼ばれて、冒頭校長に頭を下げられた。
「いえ、わたしもいい思いができましたし……」
「…… だがおぬしの欲望すべてが満たされたわけではなかろう。報告では誰一人にも手を出さなかったと聞いておるぞ。それに毎晩宴会ではさすがに身体も心配じゃ」
「まあ、そりゃあそうですね……頑張ります……」
今のところ体力だけは大丈夫みたいだし……
「おぬしほど義理堅いというか律儀な男もおらんな、この国にはダメな男が有り余っとる……」
だって、手を出したら『死刑』とか言われたらしぼんでしまいますって……
「職員もな、ずいぶんと感謝しておったわ。今回宴会に参加した職員とまだ参加していない職員とでは、はた目にもはっきりと違うのじゃ」
へ~ そりゃまた……
「特にの、第三グループで参加した職員の様子があからさまにの……」
そらそうですな…… この世界には唯一ともいえる結婚適齢期のイケメンに、短時間とはいえ添い寝してもらって男成分を満喫できたんだ、そりゃあ喜ぶさ。
「このまま第十グループまでよろしく頼む」
はいはい、もう覚悟はできてますって、校長……
「それでな、最終日はわしも『添い寝』を所望……」
へ?
あ、いや、わかりました。どんどんいらはい!です。来るもの拒まずです。
「よかった…… 拒否されたらどうしようかと……」
立場上それでいいんかい?とは思うが、別に減るもんでもない。
「それでの、最終日の宴会が終わったら次の日にテレビ局のインタビューと追っかけ取材が入るでの……」
それもどんとこいです。一千万の分の仕事はしまっせ。
「で、よく日は、雑誌の取材で撮影会がある」
スケジュールちょっときつくないっすか?
「さらにその次は教育委員会のお偉方と会食の予定……」
あの…… せめてスケジュール管理の専属秘書なりつけていただきたい……
「そうさな、専属秘書はつけよう。 人選は任せてもらっていいかの?」
おねげえしますだ、校長先生……
さて休み明けの今日は夕方からまた宴会の予定なんだが、担当講義が休みの日にあたり、おれの希望で『魔術総論』の授業に参加させてもらうことにした。
魔術そのものに興味があったのだが、魔術を実際に実現しているのがどうも『数式』らしいというのを知って大いに刺激されたからである。
魔術総論というのは略称で正確には『初等魔術言語術式総論』というらしい。
教室はまだガラガラだったのだが、おれが教室の一番前に座るやいなや、教室を脱兎のごとく出ていく女子生徒が何人かいた。
ん?なんで…… っておれもいいかげん気づけよ!
ダッシュで出ていった女子生徒は、すぐに大量の聴講生を引き連れてやってきたのだ。
そうなのだ。おれがこの教室にいるという情報を大急ぎで外部に連絡し、その情報をキャッチできた生徒がわんさかやってきたというわけです。
「うっそ~! ユウ先生の両隣が空いてる!」
「早いもの勝ち!」「急げ!」「こんなチャンス見逃すはずもないです」
三人座れる机の真ん中の席に座ったおれの両隣を目指してJKが殺到する様子もなかなか鬼気迫るものがある……
結局どういう話になったのか、騒ぎになることはなくおれの両隣に座る権利を得たらしい女子生徒は、やっぱり美少女でした。
右隣は金髪碧眼のややタイトな感じのワンピースを着た、前世でこんな美少女に迫られたら間違いなく陥落してるな、おれって言うくらいの清楚な感じのおれ好みの女子生徒だ。
で、なんでその年齢でそんなに胸が発達してるのっていうくらい大きい胸が…… エロけしからんぞ…… それでいてウエストはしっかり引き締まっていて大きすぎることはない胸部と見事なプロポーションを奏でている。
このまま抱きしめたらきっと柔らかくて気持ちいいんだろうな、ていうくらいにはすでに男好きのするお色気たっぷりである。
お尻? それは隣で座っているのでいまいちよくわからん……
そんなおれの瞬時のチェックに気付いてか、やや上目使いでその女子生徒がおれに遠慮がちに声をかけてくる。
「ユウ先生、はじめまして、二年のロチェスといいます。わたしの恰好変ですか?」
「いや、かわいいなと思って……」
「え、かわいい? ほんとに? うれしい、先生…… 毎日いつ先生にお会いできてもいいようにおしゃれしてるんです。先生に褒めてもらえて、ああ、失神してしまいそうです」
この学園の制服は女子はセーラー服なのだが、必ずセーラー服でと決まっているわけではない。セーラー服以外でも華美になりすぎなければ自由におしゃれが楽しめる。
彼女の嬌声を聞いて、周りの女子生徒の落胆と怨嗟の声が……
さらにおれの右腕にしがみつく様子でさらにヒートアップしそうである。
あ、そこ…… 当たってるから…… もうちょっと離れようよ、ロチェスさんだっけ? 授業に集中できんじゃないか! いや、とっても気持ちいいですけどね…… いやダメだ、おれはまだ死刑にはなりたくない……
「ずるいです! わたしのおしゃれもみてほしいです」
今度は左隣である。
お! 猫耳! ふさふさでしっぽまである! セーラー服着た猫耳である。
昔、似たようなキャラで一世風靡したような気がするが…… 気にしたら負けだ。
そのセーラー服は、ちょっとだけ違う。というかだいぶ違う。
通常のセーラー服はおとなしい紺色に白線だが、彼女のセーラー服は白基調のピンクのライン。
夏向けなのでウエスト部分の丈が短くてお腹と背中が微妙にちらちらしているのだ。
これはやばい…… チラリズムの極意をよくわかっていらっしゃる。スカートも膝上なんだが、長すぎず短すぎない絶妙の生足加減である。おまけに黒のハイニーソ…… たまらんなこりゃ……
さらにやばいってなにがやばいかっていうと、いや日本語はしっかりとですね、上のセーラー服がやや透けて見える生地でできていて、うっすらと下着が見えるという男にとってはなんとも刺激的なファッションなのだ。
「どう?先生! 結構刺激的でしょ? このぎりぎりで見えそうで見えない『ちらり』の良さを先生はわかってくれますよね~」
「…… ああ、うん、それとっても刺激的だから…… 怪しい男には気をつけなさい」
「え! 心配してくれるの!先生! うれしい!とってもうれしいよ! 先生になら襲われてもいい! 大歓迎だよ?」
今にも泣きださんばかりである。
こんなにもおしゃれして刺激的なファッションをしても、この世界で襲われることはない。まず百パーセントないのだ、悲しいことに……
ふらちにも襲ってくる『男』がそもそもいないのだ。いるにはいるのだが、ふらふらと外出などしている男性などいない。
それに襲われたところでたいていの女性は、それを喜んで受け入れるだろうというなんとも言えない『異世界』なのだ。
襲われるのはむしろ男の方であるという社会環境……
結局左右の両腕はしっかりホールドされたまま授業を受けることになった。
まあ気持ちいいからそのままほっておいた。おれ死刑にならないよね?
悪いことはしてませんよ、校長先生。
手は出してません、ほんとに。
許容範囲でしょ?
魔術総論の講師ご入場である。
講師は宴会第一回目でろれつが回らなくなるほど飲んで、おれにしがみついてきたあの酔っ払い職員であった。
講師として再び顔をあわせた彼女は、眼鏡のよく似合うすらりとした美人さんでした。
おれの顔をみてやや引きつった表情で軽く会釈をしてくれる。
ニッコリ笑顔で手を振ると、ほっとした表情で「おお、神様……」と言わんばかりに両手を組んでしばし上を見上げるその姿がまたなんとも艶めかしい。
いや、早く授業始めてくれ、眼鏡美人さんや……
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