第14話 天国か地獄か…… 開き直るしかないでしょう
この日から歓迎会が始まり、毎夜毎夜のどんちゃん騒ぎである。
おれはもともとこういう大騒ぎな夜が大好きだった男である。
手は出せないものの、美女に囲まれて飲んで歌って大騒ぎどんと来いである。
「ユウ先生! 飲もう飲もう!」
「ユウ先生、今度一緒にクラブ(学校のクラブ活動のクラブではない)に踊りに行かない?」
「ユウ先生、一緒に買い物に付き合ってよ、ねえいいでしょ?」
学園の職員も普段は気持ちを押さえているのか、酒の力を借りてのことか、ずいぶんあっけらかんとハメを外しているようだ。
おれの両隣に座る権利は、平等に時間で割り振ったようである。
宴会が二時間、約百二十分。参加職員三十人。となれば一人当たりの持ち時間は?
「四分で~す!!!」
お、割り算できる娘がいるぞ!
「へへ~、ユウ先生の講義にまじめに出席しているあたいには簡単なんですよ!」
もともとはこの世界の人たちは頭が優秀である。一度教えてしまえば、前世の小学生程度の算数なんて楽なもんだろ。
「お、じゃあ そのうち難問を宿題にしていじめてやるか~」
「いや~ん、先生ったら意地悪~」
もうなんでもありの無礼講である。おれたちを見てうらやましからんと思う人はいても、悪くいうやつはいない。見れば自分もいつかは仲間に入りたい、イケメンとお友達に……できればスキンシップを…… というのがこの世の常識なのだ。
「じゃあ、エッチなことしても怒らない?」
「ええ~ それはだめ~! うふふ……(後でみんなに内緒ならいいよ?)」
おれの耳元でこっそりささやきが聞こえる。
「あ~、抜け駆けはだ~めなんだ、だめなんだ!」
え そうなのか? 抜け駆けだめなのか?
どうやら職員の間でも協定が結ばれているようである。
極力スキンシップは控える。
第三者にわからないような抜け駆け的な誘惑禁止。
誘惑は正々堂々と第三者立ち合いのもとで当人たちが了解したなら、周りは邪魔はしないこと。
要は恋路を邪魔するやつは馬になんとかである。
前世でこんなに楽しく女性と楽しく飲めた記憶のないおれである。
ほどほどにお付き合いで来て、楽しいならこれほどの天国はないさ。
「ほら~、じゃんじゃん飲んで! ユウ先生」
両脇に座る美女がとっかえひっかえおれの膝に手を伸ばす。
もれなく全員……
ここまでは女性職員全員の協定の範囲内であったらしい。それ以上は禁止。
おおあああ…… 息子君がああ~ おれの~ どうしてくれるんだ……
おれの理性が吹っ飛べばここにいる女性三十人すべてと関係を持つことになるだろう。
それが毎日……合計三百人になったら…… 死ねるな、たぶん…… 腹上死確定の未来しか見えぬ、見えぬぞ……
「ねえねえ、ユウ先生ってどんな子が好みなの?」
その問が一人の女性から発せられるや否やその場を静寂が支配したよ……
「え、えっと…… そうですね…… やっぱり性格っていうか、相性ですかね……」
「そ、それってHの相性も含む?」
なかなか鋭い質問である。
ごくりと三十人ののどの鳴る音が……
「い、いえ ぼくはまだ経験が浅くて……そこまでは」
「きゃ~ 聞いちゃった聞いちゃった! ユウ先生経験有だって! 」
「その幸運な女はどこのどいつよ~! うらやま~」
世の中のこんなにも美女の多くが未経験、たぶんこの場の女性全員が処女であろう。というか異性と手を握るどころか、出会いさえなかった人たちなのだ。
Hな話にも想像力たくましくなるのは当然である。
経験談をなにかの雑誌にでも乗せてもらえたら大ヒット間違いなしかもしれんな……
「性格っていうとどんな性格の人が好き?」
「そうですね、やっぱり控えめで、男の人を立ててくれる人ですかね」
「なるほろ~、淑女ってやつれすね~」
この酔っ払い女……おめえは減点だ……
ああこれが後九日も続くのか…… やったろうじゃねえか! この程度で音をあげてたらこの世界で男として、いや唯一の『最強の男性教師』としてやっていけるはずがない!
って言ってるまにおれは酔いつぶれたらしい。気がついたら宿舎のベッドの上だった。
え? 間違い?ありませんでしたよ? あるわけないじゃないですか…… 三十人の監視の目の中で抜け駆けできるはずなんかありませんよ。
でも後で聞いたらおれの部屋に三十人全員がおれを担いで、当然交代でね、くれたんだけど、全員おれのベッドで一度はくんかくんかやってたらしい。どうりでよだれらしきシミがついてたわけだわ……
さあ明日の宴会もがんばるか…… ああ、その前に授業……生徒相談も……クラブもだった…… やっぱり高い栄養ドリンクにしておけばよかったかな……
天国と地獄の日々はまだまだ続きますです……はい
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